【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました

藤原遊

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カティア回想録

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あの日のことは、今でも鮮明に思い出せます。

突然、私のもとに届けられたお達し。
「第六王子ユーリ殿下が、妃候補として引き取られる」

言葉を聞いた瞬間――私は、息が止まりそうになりました。

(……ユーリ殿下が? 私を?)

理解が追いつきませんでした。
身分の低い鉱石宮部屋付きの私に、そんなお声がかかるなんて――

確かに私は、殿下に憧れていました。
遠くからそっとお姿を眺め、いつか目に留まっていただけたら、と夢見ていたのは事実です。

でも、それはあくまでも密やかな片想い。
妃候補など、あまりにも身分違いすぎて、考えたことすらありませんでした。

(何かの間違いなのでは……?)

胸の奥が熱くなる一方で、同じくらい冷たい不安も膨らんでいきました。

(妃候補と言っても、正式に娶るおつもりなどないのかもしれない。外交に使われ、他国に嫁がされる道具として見られているだけかもしれない)

他の姉姫たちのことは見てきました。
優秀な姫君たちは、教養を磨かれ、やがて政略結婚で各国へ嫁いでいった。

ならば私も――

(期待しては駄目。心を許しては駄目。)

そう何度も自分に言い聞かせました。
期待すれば、裏切られた時の痛みは計り知れない。
憧れの殿下だからこそ、傷つくのが怖かったのです。

◇ ◇ ◇

けれど――

ルナ離宮に引き取られてからの日々は、私の想像を大きく超えていきました。

殿下は、初めから驚くほど優しくしてくださった。
他の妹姫たちと分け隔てなく、むしろ誰よりも丁寧に私を扱ってくださる。

立派な部屋、豪奢な衣装、美味しい食事――
どれも私には場違いに思えたけれど、殿下は当然のように微笑んでくださる。

「君に似合うと思って用意したんだ」

その言葉を聞くたびに、胸が苦しくなるほど嬉しくて――

(……でも駄目。勘違いしては駄目)

自分に必死で言い聞かせる日々だった。

(私はきっと、いずれどこかへ嫁がされるのだ。姉姫たちのように)

そう思い込み、必死で警戒心を手放せずにいた。

けれど、殿下はそんな私の戸惑いや不安すらも、すべて包み込んでくださった。
優しい笑顔、温かな手、決して無理をさせない距離感。

(……どうして、こんなにも……)

そうして私は、知らず知らずのうちに、殿下に心を奪われていったのです。

(本当は……ずっと、憧れていたのに)

けれどその想いを口にするには、まだあまりにも怖くて――

私はただ、静かに自分の心を抱きしめ続けるしかありませんでした。

(殿下の隣に居続けられる時間が、少しでも長く続きますように――)

それだけを祈りながら――
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