【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました

藤原遊

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カティア回想録

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──静かな夜風が頬を撫でていく。

舞踏会の喧騒を離れ、私は一人バルコニーで夜空を見上げていた。

煌めく星々が美しい。

(……少しだけ、休憩ですわ)

ユーリの隣に立つたび、私は今も夢を見ているような気持ちになる。

だけど今日は、不思議と心が静かだった。

「──やはり、ここにいたか」

振り返ると、王太子殿下が立っていた。
優しく微笑みながら、私の隣にそっと並ぶ。

「お疲れではないか? ああいった場も、長く続くと息が詰まるだろう」

「いえ、大丈夫ですわ。ご心配、ありがとうございます」

私は微笑んで答える。

王太子殿下は、ゆっくりと夜空を見上げた。

「……十四歳の頃から、ずっとアイツの隣にいたんだな。無理はしていないか?」

その言葉に、胸がきゅっと温かく締め付けられる。

「はい。私は、とても幸せですわ」

自然と笑みが溢れ出た。

「ユーリは……とても優しくて、私のことを大切にしてくださいます。どんな時も、私の手を離さずにいてくださるのです」

(……たとえ、十四歳のあの日からも──)

本当は、私たちが正式な夫婦になったのはまだ数日前。
けれど王宮中がずっと昔から情熱的な夫婦だと信じて疑わなかった。

王太子殿下も、記録官の報告を当然のように受け取っていた一人だ。

けれど、今は何も訂正する必要などない。

それだけユーリが、私を守り続けてくれていたのだから。

「ふっ……なるほどな」

王太子殿下は、私の表情を一目見るだけで察してくださったようだった。

「幸せそうで何よりだ。アイツは不器用だからな。……だが、お前の幸せだけは、何よりも大事にしているはずだ」

「……ええ。本当に、そうですわ」

王太子殿下は穏やかな声で続けた。

「なら、安心した。カティア。これからも──アイツを、頼むぞ」

「はい、喜んで」

優しく頭を撫でてくれるその手に、兄妹のような温かさを感じた。

そして王太子殿下は軽く私の肩を叩くと、再び舞踏会の会場へと戻っていった。

──残された私は、そっと夜空を仰ぐ。

煌く星の下、私の胸は優しい温もりで満たされていた。

(……私の、最愛の人──ユーリ)

風が静かに流れ、幸せな夜は続いていくのだった。
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