没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊

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第9章 王女のお茶会と恋愛相談地獄

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講堂に漂う旋律の調律音が、今日はひどく重く響いた。
全学年合同の音楽の授業――王族や上位領地の令嬢たちと並ぶことになり、自然と胃の奥がきりきりしてくる。

(……演奏の時間、また来ちゃった)

旋律は作れる。けれど、弾けば必ず「心が乗っていない」と言われる。
父様からの“恋愛曲”の課題を引きずったまま、ここまで来てしまった。

「エレオノーラ様」

澄んだ声に呼ばれ、はっと顔を上げる。
銀糸のような髪を揺らす王女セレスティーナ殿下が、柔らかく微笑んでこちらを覗き込んでいた。

「どうかなさいましたか? どこかお疲れのように見えます」

「……いえ、その……」

言葉に迷いながらも、少しだけ打ち明ける。

「曲は作れるのです。でも、演奏すると……どうしても、心が空っぽのように思えて」

情けなさに頬が熱くなる。けれど殿下は首を横に振り、静かに答えた。

「歌詞と同じ気持ちを想像しなくてもよいのですわ」

「……え?」

「大切なのは、歌に心を寄せること。恋でも友情でも、ご家族のことでも。大切に思う気持ちを浮かべれば、音楽は必ず応えてくれます」

その言葉に、胸の奥がぐっと掴まれた。
(……大切な人……)

前の世界で、不器用な私を支えてくれた家族や友人。
忙しさにかまけて、十分に応えられなかったあの優しさ。
今も元気でいてくれているだろうか――そう考えると、懐かしさと切なさが混ざり合い、胸が締めつけられる。

そっと、楽器に指を置いた。

(……やってみよう。恋じゃなくても、大切な人を思えばいいんだ)

深呼吸をひとつ。心の奥から湧き上がる想いを、旋律に託そうと決めた。
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