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第9章 王女のお茶会と恋愛相談地獄
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授業が終わると同時に、講堂はざわめきに包まれていた。
火と水の精霊を歌った私の演奏は、どうやら強烈な印象を残したらしい。
「芸術のアイリシアだ……」
「本物だったな」
そんな囁きがあちこちから聞こえてくる。
けれど、私の心臓はちっとも晴れやかではない。
――アレクシス様に向けた“告白”だと誤解されているに違いない、と気づいてしまったから。
(本当に違うのに……! ただ心を込めただけなのに……!)
その日の学院が終わり、王都のアイリシアの館に戻ると、イザベラ姉様が待っていた。
「エレオノーラ、お疲れさま。今日の演奏、すごい噂になっていたわよ」
「……姉様……! どうしましょう、あれ……完全に誤解されてます……!」
訴える私に、イザベラ姉様はふわりと微笑んだ。
けれど、次に返ってきたのは肩透かしのような言葉だった。
「まあ、お相手がお相手だし、勘違いされても害はないと思うわ」
「え……」
「そのうち“切ない恋物語”として誰かに小説にされるかもしれないけど、領地の損にはならないはずよ」
さらりと断言され、私は頭を抱え込んだ。
(いやいやいや、小説とか……本当にやめて……!)
胃を押さえて呻く私を見て、姉様は困ったように肩をすくめる。
その仕草が「またあなたは大げさね」とでも言っているようで、余計に返す言葉をなくしてしまった。
そんな中、館に王女殿下の紋章を冠した封筒が届けられる。
「エレオノーラ・アイリシア様。セレスティーナ王女殿下より、お茶会のご招待です」
文官が恭しく差し出した封筒を受け取った瞬間、空気が変わった。
王女殿下と二人だけのお茶会――それは常識外れの厚遇。
「……っ」
喉が詰まり、言葉が出ない。
けれど、姉様は封筒を覗き込み、柔らかく目を細めた。
「ふふ。やっぱり殿下は、あなたをとても気に入られたのね」
「……胃が痛いです」
机に突っ伏す私に、イザベラ姉様の笑い声が優しく響いた。
火と水の精霊を歌った私の演奏は、どうやら強烈な印象を残したらしい。
「芸術のアイリシアだ……」
「本物だったな」
そんな囁きがあちこちから聞こえてくる。
けれど、私の心臓はちっとも晴れやかではない。
――アレクシス様に向けた“告白”だと誤解されているに違いない、と気づいてしまったから。
(本当に違うのに……! ただ心を込めただけなのに……!)
その日の学院が終わり、王都のアイリシアの館に戻ると、イザベラ姉様が待っていた。
「エレオノーラ、お疲れさま。今日の演奏、すごい噂になっていたわよ」
「……姉様……! どうしましょう、あれ……完全に誤解されてます……!」
訴える私に、イザベラ姉様はふわりと微笑んだ。
けれど、次に返ってきたのは肩透かしのような言葉だった。
「まあ、お相手がお相手だし、勘違いされても害はないと思うわ」
「え……」
「そのうち“切ない恋物語”として誰かに小説にされるかもしれないけど、領地の損にはならないはずよ」
さらりと断言され、私は頭を抱え込んだ。
(いやいやいや、小説とか……本当にやめて……!)
胃を押さえて呻く私を見て、姉様は困ったように肩をすくめる。
その仕草が「またあなたは大げさね」とでも言っているようで、余計に返す言葉をなくしてしまった。
そんな中、館に王女殿下の紋章を冠した封筒が届けられる。
「エレオノーラ・アイリシア様。セレスティーナ王女殿下より、お茶会のご招待です」
文官が恭しく差し出した封筒を受け取った瞬間、空気が変わった。
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「……っ」
喉が詰まり、言葉が出ない。
けれど、姉様は封筒を覗き込み、柔らかく目を細めた。
「ふふ。やっぱり殿下は、あなたをとても気に入られたのね」
「……胃が痛いです」
机に突っ伏す私に、イザベラ姉様の笑い声が優しく響いた。
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