乙女ゲームの悪役令嬢は前世の推しであるパパを幸せにしたい

藤原遊

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新たな日常、そして不穏な知らせ

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リドレック伯爵家に関する調査が進み、一連の事件の全貌が徐々に明らかになりつつあった。
盗賊を使って物流を妨害し、商会を介して市場を混乱させる――。その目的は、王太子レオナードが進めている貴族派閥の再編を妨害するためだった。

別荘の応接室で行われた会議の後、アイリスは一息つくために庭園へと向かっていた。
月明かりが花々を照らし、夜風が心地よい。だが、彼女の心には重いものがあった。

「一つ問題を解決しても、次々と新たな困難が待ち受けている……」

静かに呟いたその時、後ろから聞き慣れた声が響いた。

「思いつめた顔をしているな」

振り向くと、そこにはお父様エルネストが立っていた。
相変わらず整った顔立ちと堂々とした佇まいに、アイリスは少しだけ微笑んだ。

「お父様……」

「夜風に当たるのも良いが、体を冷やしすぎるな」

そう言ってエルネストはアイリスの隣に腰を下ろした。

「何かあったのか?」

「ええ……リドレック伯爵家の件で、これからどう動くべきか悩んでいます」

アイリスの言葉に、エルネストはしばらく考え込むように目を細めた。

「お前はよくやっている。だが、全てを自分一人で抱え込むな。どんな時でも、お前には私がいる」

その言葉に、アイリスは胸が熱くなるのを感じた。

「……ありがとうございます、お父様」

「お前が全力を尽くすことは素晴らしい。だが、時には王太子や他の者にも頼ることを覚えろ。信頼は、相手との絆を深める鍵でもある」

「絆……」

エルネストの言葉に、アイリスは静かに頷いた。

「わかりました。私、次の試練も乗り越えてみせます」

「よし。それでこそ、私の娘だ」

エルネストの力強い声が、アイリスに新たな決意を与えた。

翌日、アイリスは新たな計画を練るために資料室にこもっていた。
これまでの証拠を整理し、リドレック伯爵家を直接追及する方法を考えていると、突然扉がノックされた。

「アイリス様、殿下が呼んでおられます」

使用人の言葉に促され、アイリスは応接室へと向かった。
そこには王太子レオナードが立っており、その顔はどこか険しさを帯びていた。

「貴女に新たな協力を求めたい」

「新たな協力、ですか?」

レオナードはアイリスの疑問に答えるように、書類を一枚差し出した。

「これが、リドレック伯爵家が新たに動き出そうとしている計画の一端だ。彼らはさらなる物流妨害を企てている」

アイリスがその書類に目を通すと、そこにはリドレック伯爵家が新たに雇った勢力についての情報が記されていた。

「この計画を止める必要がある。だが、彼らは警戒を強めており、動きにくい」

「それで、私に何を?」

「貴女には、表立たない形で商会を通じて情報を引き出してほしい」

その言葉に、アイリスはしばらく考え込んだ。

(危険な任務だけど……ここで動かなければ、状況はさらに悪化するかもしれない)

「わかりました、殿下。その役目、引き受けます」

アイリスの答えに、レオナードは短く頷いた。

「頼む。だが、決して無茶はするな」

「承知しました」

その夜、アイリスは商会の協力者と接触するため、密かに町へと向かった。
指定された場所で待っていると、現れたのは商会の若い使用人だった。

「アイリス様、ここへ来るのは危険です」

「わかっています。でも、今はそれよりも重要なことがあります」

アイリスは冷静に言い、彼から新たな情報を引き出した。

「……伯爵家が計画している物流妨害の次のターゲットは、王都への食料供給ルートです」

その言葉に、アイリスの表情が僅かに硬くなる。

(もしそのルートが妨害されれば、王都全体が混乱に陥る……絶対に阻止しなければ)

「その計画が実行される前に、何としても対策を講じる必要があります」

そう言い残し、アイリスは再び別荘へと戻った。

夜も遅くなり、別荘の執務室にて、アイリスは王太子レオナードに新たな情報を報告していた。

「次のターゲットは王都への食料供給ルートです。リドレック伯爵家が直接動く可能性もあります」

その言葉に、レオナードは険しい顔で頷いた。

「放っておけないな。すぐに対策を講じる」

「ただし、彼らがどのように動くか、慎重に見極める必要があります。早まった行動は、逆にこちらの隙を作るかもしれません」

アイリスの言葉に、レオナードは少し驚いた表情を浮かべた。

「……貴女の判断力には驚かされる。だが、それだけに危うさも感じる」

「危うさ、ですか?」

「貴女は全てを抱え込みすぎる。時には、他人に任せることも重要だ」

その言葉に、アイリスはふとお父様の言葉を思い出した。

「……ええ、その通りですね。ありがとうございます、殿下」

短い会話だったが、そこにはどこかこれまでと違う温かさが含まれていた。
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