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私は、静かにひざをついた。
王都の大教会。千年の祈りが積もるこの聖堂で、私は“神託”を受ける。
貴族の子女として十五歳を迎えた証、スキル授与の儀式。
私はレティシア・アルベリーヌ。
北の辺境を治めるアルベリーヌ家の嫡長女。
剣も魔法も、日々鍛えてきた。
父は負傷し、弟はまだ幼く、家を継ぐのは──私だ。
神に祈りを捧げながら、私は自分の立場を再確認していた。
家を守る力が欲しい。ただ、それだけ。
くだらない野心や虚飾にまみれたスキルではなく、現場で使える本物を。
私は目を閉じ、胸に手を当て、心の奥から祈った。
そのとき──
光が、差し込んだ。
ステンドグラスを突き抜ける眩い陽光。
肌が焼けるような熱、空気が震え、耳鳴りが響く。
意識の奥に、何かが──弾けた。
──そうだ。私は……死んだんだった。
頭の中に、記憶が流れ込む。
ビル街、深夜のデスク、メール、締切、叱責、疲弊、転倒──
あの瞬間、世界がひっくり返るように暗転して──
そして、聞いた。
あの、ふざけた神の声を。
《よっ。初めまして!》
ふざけた軽口と共に現れた“神”を、私は一生忘れない。
いや、忘れていた。無理やり、忘れさせられていた。
「もう疲れた。働きたくない。お願いだから、ゆっくり休ませてくれ」
私は死に際、そう叫んだ。
何も望まなかった。何も求めなかった。
──なのに。
《しばらく忘れさせてあげるから、大丈夫~☆ じゃ、転生スタート♪》
(ふざけんな……!)
私は心の中で、無音の絶叫を上げた。
神の“気遣い”とやらで無理やり異世界に叩き込まれ、
思い出したくもない黒歴史を──
今、全世界に再放送されているところである。
《あ、思い出したね? 久しぶり~! いや~タイミング完璧!》
(やめろやめろやめろ)
《さてさて、スキル渡すからね! 《神威福音》って言います! なんでもできる超チートだよ!》
(聞きたくない)
《で、発動条件だけど、ちょ~っとだけ儀式っぽいアレが必要で。詩文形式で神を称えてね?》
(今、祈ってる最中なんですけど!?)
《うん、ばっちり聞こえてるよ。周囲に! 水鏡に詠唱ばっちり映ってるからね☆》
聖堂の空気が、騒然とする。
水鏡にスキル名が映し出され、神官たちが読み上げ始める。
「スキル名、《神威福音》──加護、継続治癒、身体能力上昇、魔法適性向上、魔力制御支援、遠距離指定攻撃……」
「前例がありません! これは……一個人に与えられる域を超えています!」
(あの詠唱、全部聞かれてる……!?)
(しかも記録されてる……!?)
動けない。言い訳もできない。
膝をついたまま、神々しく祈り続けるしかない。
……表面上は、ね。
でも心の中では、私は叫んでいた。
(もうヤダァァァァァァァァァ!!!!)
神にチートスキルを与えられ、
その代償として、一生モノの黒歴史詠唱を
全国ネットに公開された瞬間だった──。
王都の大教会。千年の祈りが積もるこの聖堂で、私は“神託”を受ける。
貴族の子女として十五歳を迎えた証、スキル授与の儀式。
私はレティシア・アルベリーヌ。
北の辺境を治めるアルベリーヌ家の嫡長女。
剣も魔法も、日々鍛えてきた。
父は負傷し、弟はまだ幼く、家を継ぐのは──私だ。
神に祈りを捧げながら、私は自分の立場を再確認していた。
家を守る力が欲しい。ただ、それだけ。
くだらない野心や虚飾にまみれたスキルではなく、現場で使える本物を。
私は目を閉じ、胸に手を当て、心の奥から祈った。
そのとき──
光が、差し込んだ。
ステンドグラスを突き抜ける眩い陽光。
肌が焼けるような熱、空気が震え、耳鳴りが響く。
意識の奥に、何かが──弾けた。
──そうだ。私は……死んだんだった。
頭の中に、記憶が流れ込む。
ビル街、深夜のデスク、メール、締切、叱責、疲弊、転倒──
あの瞬間、世界がひっくり返るように暗転して──
そして、聞いた。
あの、ふざけた神の声を。
《よっ。初めまして!》
ふざけた軽口と共に現れた“神”を、私は一生忘れない。
いや、忘れていた。無理やり、忘れさせられていた。
「もう疲れた。働きたくない。お願いだから、ゆっくり休ませてくれ」
私は死に際、そう叫んだ。
何も望まなかった。何も求めなかった。
──なのに。
《しばらく忘れさせてあげるから、大丈夫~☆ じゃ、転生スタート♪》
(ふざけんな……!)
私は心の中で、無音の絶叫を上げた。
神の“気遣い”とやらで無理やり異世界に叩き込まれ、
思い出したくもない黒歴史を──
今、全世界に再放送されているところである。
《あ、思い出したね? 久しぶり~! いや~タイミング完璧!》
(やめろやめろやめろ)
《さてさて、スキル渡すからね! 《神威福音》って言います! なんでもできる超チートだよ!》
(聞きたくない)
《で、発動条件だけど、ちょ~っとだけ儀式っぽいアレが必要で。詩文形式で神を称えてね?》
(今、祈ってる最中なんですけど!?)
《うん、ばっちり聞こえてるよ。周囲に! 水鏡に詠唱ばっちり映ってるからね☆》
聖堂の空気が、騒然とする。
水鏡にスキル名が映し出され、神官たちが読み上げ始める。
「スキル名、《神威福音》──加護、継続治癒、身体能力上昇、魔法適性向上、魔力制御支援、遠距離指定攻撃……」
「前例がありません! これは……一個人に与えられる域を超えています!」
(あの詠唱、全部聞かれてる……!?)
(しかも記録されてる……!?)
動けない。言い訳もできない。
膝をついたまま、神々しく祈り続けるしかない。
……表面上は、ね。
でも心の中では、私は叫んでいた。
(もうヤダァァァァァァァァァ!!!!)
神にチートスキルを与えられ、
その代償として、一生モノの黒歴史詠唱を
全国ネットに公開された瞬間だった──。
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