処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません

藤原遊

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番外編 もう一人のヒロイン

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「……それで?」

兄さん――ユリウスが、低い声で問いかけてくる。
珍しく、感情を押し殺しているような声音だった。

「アメリアに“呪い”か」

彼は顎に手をやり、静かに目を伏せる。
抑え込んでいるのは怒りか、それとも焦りか。
その横顔を見て、俺は肩を竦めて答えた。

「まあ……俺も小さい頃、アメリアにガンガン癒しと浄化をかけてたんだけどな。それで弱くなってるだけども消えてない。つまり、心が弱くなったときに表層に出る類なんだろう」

「……心、か」

ユリウスは短く呟き、強く握り込んだ拳を隠すように外套の下へ押し込む。
重たい空気が落ちかけたそのとき、ふっと俺へ視線を向けてきた。

「そういえば――最近、セラフィーナ嬢と仲が良いみたいだな」

「……っ」

不意打ちに、喉の奥が詰まる。
あのへんてこ令嬢の顔が脳裏に浮かんで、俺はわざと視線を逸らした。

「どうだ?」

「……ダメだよ」

思わず、本音が零れる。
ほんの少し目を伏せて、声が気弱に落ちていた。

「セラフィーナは……戦えない」

辺境伯領は魔物が多い。
剣を握れないご令嬢を連れ帰るなんて、命懸けどころの話じゃない。

癒しも浄化も、あの子は確かにすごい。未来視だって……本当なら、とんでもない。
だけど――サポート専門の彼女を、俺たちの領に連れて帰るなんて。

「……好きだけど、好きって言っちゃいけない」

口に出す代わりに、心の中でそう呟いて、紅茶をひと口。
少し渋い味がした。

兄さんはそんな俺の横顔をちらりと見て、わずかに目を細めた。
けれど何も言わず、ただ黙って視線を逸らすだけだった。
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