妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊

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第1章 転生令息の目覚め

1-2

リリィの断罪エンドを思い出して、俺は一晩中うなされた。
寝返りを打っても、脳内ではあのイベントBGMが流れ続ける。
やめろ、あのピアノイントロはトラウマなんだ。

「……よし、冷静に整理しよう。」

俺は机に紙を広げた。
こういうときはロジカル思考だ。社会人経験を舐めるな。
まず“破滅ルートの原因”を図解しようじゃないか。

――妹リリィ、断罪される。
原因:ヒロイン・フローラが王太子シリウスと恋仲になる。
結果:婚約者を奪われたリリィが嫉妬炎上。
さらに:悪役令嬢テンプレでヒロインをいじめる。
最終的に:広場で公開断罪。エンドロール。

「はい、出ました。因果関係、きれいに整いましたね。」

俺は満足げに頷いた。
まるで仕事のプレゼン資料のような破滅フローチャートが完成した。
だが、ここからが肝心だ。

「なら、そもそも“シリウスとフローラが恋仲にならなければ”いい。」

自分で言ってハッとする。
これ、もしかして大発見では?

リリィが悪役令嬢になるのは、婚約者を奪われるからだ。
奪われなければ、嫉妬もしない。
嫉妬しなければ、いじめない。
いじめなければ、断罪されない!

「……完璧な理屈だ。天才か、俺は。」

だが、問題はどうやって二人をくっつけないようにするか。
フローラと殿下、会えば惹かれ合う設定なんだよな。
放置したら即ルート確定。
運命の出会いイベントとか、マジでやめてほしい。

なら、いっそ――

「俺がフローラを先に口説けばいいんじゃないか?」

自分の口から出た瞬間、部屋の空気が止まった。
いや、落ち着け。別に恋愛したいわけじゃない。妹を守るための戦略的行動だ。
目的は“恋の誘導阻止”。
結果的にフローラが俺に興味を持てば、それで問題解決。

……理屈は通る。たぶん。

「よし、ヒロインを先に“俺が”攻略する!」

勢いよく立ち上がる。
使用人が「お坊ちゃま?」と扉の向こうで声を上げたが、聞こえないふりをした。
俺の脳内では、すでに作戦コード【花束大作戦】が展開していた。

次の目標:朝一で庭園へ。
ヒロインを口説く最初の一歩を踏み出すのだ。

──この時の俺はまだ知らなかった。
その作戦は、王太子殿下にひっくり返されてしまうことを。
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