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第6章 お茶会の誤算
6-5
お茶会が終わりに近づくころ、
庭には夕陽が傾き、花の影が長く伸びていた。
テーブルの上には、飲みかけの紅茶と半分残った焼き菓子。
談笑の声も穏やかで、どこか名残惜しい雰囲気が漂っている。
(よし、今日の目的は達成したはず。
ヒロイン好感度は上昇、殿下の印象も悪くない。
これで“破滅ルート”は――少し遠のいたな。)
俺は胸の内で静かにガッツポーズを決めた。
リリィも微笑んでいる。
フローラ嬢も穏やかに紅茶を口にしていた。
完璧だ。
やっと平和な流れが作れた。
(よし、ここで最後の印象づけ。
フローラ嬢に丁寧にお礼を言って締めよう。)
俺は姿勢を正し、彼女の方を見た。
――その瞬間。
視線の先に、別の“誰か”がいた。
夕陽の光を背に立つ、黒に近い青髪。
金の瞳が、まっすぐこちらを見ていた。
(……え?)
ほんの一瞬の錯覚だと思った。
でも、違う。
その瞳は確かに――俺を見ていた。
まるで、言葉よりも強く「見ている」と告げるように。
呼吸が止まる。
胸の奥で何かが静かに跳ねた。
「……殿下?」
声が出たのは、反射だった。
シリウス殿下は、ゆっくりと一歩こちらへ近づく。
「どうかされましたか?」
「い、いえ……あの、その、フローラ嬢に――」
「フローラ嬢に?」
金の瞳が揺れない。
焦点は、どこまでも俺の中を見透かしてくる。
(いやいやいや、待って。俺、今、ヒロイン見てただけ!
ヒロインを見てたら、なぜ殿下がフレームインするの!?)
焦りで頭の中がショートする。
でも、目が離せない。
殿下の瞳に映る“俺”が、あまりにもまっすぐすぎて。
(……おかしいな。なんで俺、こんなに息が苦しいんだ。)
沈黙。
その隙間を縫うように、風が花びらを揺らした。
フローラが小さく首を傾げる。
リリィは、完璧な笑顔のまま、
そっとティーカップを持ち上げた。
(妹よ、なぜそんな微笑みをしている……!?)
「……そろそろ時間だ。」
殿下が静かに言う。
そして、ほんの一瞬だけ――微笑んだ。
その笑みは、王族としての礼節に見えた。
けれど、それ以上の何かが確かに混ざっていた。
「君の視線の向かう先が、どこであっても――私は構わない。」
「……え?」
「ただ、君が笑っていれば、それでいい。」
穏やかな声。
けれど、その言葉の裏に、何か深い意味があるようで――
俺は何も言い返せなかった。
リリィの指が、カップの縁をなぞる。
フローラが、何かを言いかけてやめた。
夕陽が沈む。
最後に見たのは、金の瞳が光を宿す瞬間。
(……どうしてだろう。
まっすぐ見られるだけで、こんなに心臓が痛い。)
──その視線が“罠”だと気づくのは、もう少し先のことだった。
庭には夕陽が傾き、花の影が長く伸びていた。
テーブルの上には、飲みかけの紅茶と半分残った焼き菓子。
談笑の声も穏やかで、どこか名残惜しい雰囲気が漂っている。
(よし、今日の目的は達成したはず。
ヒロイン好感度は上昇、殿下の印象も悪くない。
これで“破滅ルート”は――少し遠のいたな。)
俺は胸の内で静かにガッツポーズを決めた。
リリィも微笑んでいる。
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完璧だ。
やっと平和な流れが作れた。
(よし、ここで最後の印象づけ。
フローラ嬢に丁寧にお礼を言って締めよう。)
俺は姿勢を正し、彼女の方を見た。
――その瞬間。
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(……え?)
ほんの一瞬の錯覚だと思った。
でも、違う。
その瞳は確かに――俺を見ていた。
まるで、言葉よりも強く「見ている」と告げるように。
呼吸が止まる。
胸の奥で何かが静かに跳ねた。
「……殿下?」
声が出たのは、反射だった。
シリウス殿下は、ゆっくりと一歩こちらへ近づく。
「どうかされましたか?」
「い、いえ……あの、その、フローラ嬢に――」
「フローラ嬢に?」
金の瞳が揺れない。
焦点は、どこまでも俺の中を見透かしてくる。
(いやいやいや、待って。俺、今、ヒロイン見てただけ!
ヒロインを見てたら、なぜ殿下がフレームインするの!?)
焦りで頭の中がショートする。
でも、目が離せない。
殿下の瞳に映る“俺”が、あまりにもまっすぐすぎて。
(……おかしいな。なんで俺、こんなに息が苦しいんだ。)
沈黙。
その隙間を縫うように、風が花びらを揺らした。
フローラが小さく首を傾げる。
リリィは、完璧な笑顔のまま、
そっとティーカップを持ち上げた。
(妹よ、なぜそんな微笑みをしている……!?)
「……そろそろ時間だ。」
殿下が静かに言う。
そして、ほんの一瞬だけ――微笑んだ。
その笑みは、王族としての礼節に見えた。
けれど、それ以上の何かが確かに混ざっていた。
「君の視線の向かう先が、どこであっても――私は構わない。」
「……え?」
「ただ、君が笑っていれば、それでいい。」
穏やかな声。
けれど、その言葉の裏に、何か深い意味があるようで――
俺は何も言い返せなかった。
リリィの指が、カップの縁をなぞる。
フローラが、何かを言いかけてやめた。
夕陽が沈む。
最後に見たのは、金の瞳が光を宿す瞬間。
(……どうしてだろう。
まっすぐ見られるだけで、こんなに心臓が痛い。)
──その視線が“罠”だと気づくのは、もう少し先のことだった。
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