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第12章 動揺と距離
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夜、書斎に灯したランプの光が、机の上の紙束を照らしていた。
アラン・リステアは、その中に顔を埋めるようにして深く息を吐く。
「……ふう。考えるな、落ち着け、俺。」
胸の奥がざわついている。
原因は明白だ。
殿下の言葉が、まだ耳の奥で反響していた。
――『私は、君に惹かれている。』
思い出した瞬間、心臓がばくんと跳ねた。
「ちがう。そういう意味じゃない。絶対に。」
両手で頬を叩く。
一度では足りず、もう一度。
乾いた音が部屋に響く。
「殿下が言いたかったのは……きっと、妹への信頼とか、臣下としての評価とか……そう、そういうことだ。」
無理やり理屈を並べる。
言葉の数だけ、自分を守るための壁が高くなる。
だが、心の奥ではもう分かっていた。
あの瞳の熱は、信頼でも尊敬でもない。
もっと――違う色をしていた。
「……いや、考えるな。リリィのためだ。俺は妹を守るために生きてる。」
鏡の前に立ち、自分を見つめる。
そこにはいつも通りの“悪役令息”がいた。
冷静で、誇り高く、どんな感情にも振り回されないはずの男。
「そうだ、俺は“悪役令息”だ。恋なんて――してる場合じゃない。」
口にしても、声が少し震えた。
胸が痛いほど静かだ。
ランプの炎が小さく揺れ、影が壁に揺れる。
その揺れの中で、彼は小さく目を閉じた。
(……これでいい。これが、正しい)
そう思い込むことでしか、心を保てなかった。
その夜、アランは何度も同じ言葉を繰り返した。
妹を守る。
恋なんて、しない。
これは運命ではない。
――だが、その理屈のどれひとつも、胸の鼓動を止めることはできなかった。
アラン・リステアは、その中に顔を埋めるようにして深く息を吐く。
「……ふう。考えるな、落ち着け、俺。」
胸の奥がざわついている。
原因は明白だ。
殿下の言葉が、まだ耳の奥で反響していた。
――『私は、君に惹かれている。』
思い出した瞬間、心臓がばくんと跳ねた。
「ちがう。そういう意味じゃない。絶対に。」
両手で頬を叩く。
一度では足りず、もう一度。
乾いた音が部屋に響く。
「殿下が言いたかったのは……きっと、妹への信頼とか、臣下としての評価とか……そう、そういうことだ。」
無理やり理屈を並べる。
言葉の数だけ、自分を守るための壁が高くなる。
だが、心の奥ではもう分かっていた。
あの瞳の熱は、信頼でも尊敬でもない。
もっと――違う色をしていた。
「……いや、考えるな。リリィのためだ。俺は妹を守るために生きてる。」
鏡の前に立ち、自分を見つめる。
そこにはいつも通りの“悪役令息”がいた。
冷静で、誇り高く、どんな感情にも振り回されないはずの男。
「そうだ、俺は“悪役令息”だ。恋なんて――してる場合じゃない。」
口にしても、声が少し震えた。
胸が痛いほど静かだ。
ランプの炎が小さく揺れ、影が壁に揺れる。
その揺れの中で、彼は小さく目を閉じた。
(……これでいい。これが、正しい)
そう思い込むことでしか、心を保てなかった。
その夜、アランは何度も同じ言葉を繰り返した。
妹を守る。
恋なんて、しない。
これは運命ではない。
――だが、その理屈のどれひとつも、胸の鼓動を止めることはできなかった。
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