妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊

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第15章 断罪式の予兆

15-4

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空気が、ひと息で凍った。
祭の喧騒も、花の香りも、全てが遠ざかる。

壇上に立つ王太子と、隣に並ぶ悪役令息。
その構図だけで、群衆の視線が釘付けになった。

「殿下……?」
「どうして……?」
「まさか、リステア令息を――」

誰かの囁きが、火の粉のように広がる。

だが、シリウスは一歩も退かない。
背筋を伸ばし、冷ややかに群衆を見渡した。
その金の瞳に、迷いはなかった。

「この件について、誤解があるようだ。」
彼の声は静かだが、広場全体に響く。
「確かに魔法陣の不備は起きた。だが、意図的なものではない。
 私が見た。リステア令息は、常に他者のために動いていた。」

観衆が息を呑む。

「彼は、責任を一身に負おうとした。
 誰かを守るために。……それを、私は誇りに思う。」

ざわめきが止まる。
アランは驚きに言葉を失っていた。
殿下の横顔は、どこまでも穏やかで、
しかしその言葉のひとつひとつが、剣のように鋭い。

「誤解を解くために、私が宣言しよう。」
沈黙が、風のように場を撫でる。

「私は――彼を信じる。」

静寂。
まるで世界が呼吸を忘れたようだった。

誰かが小さく呟いた。
「……殿下が、令息を……?」

その一言で、群衆がざわつく。
貴族たちの顔色が変わり、教師たちが慌てて指示を出す。
けれど、誰も二人の間には割って入れない。

アランは、ただ立ち尽くしていた。
頭が真っ白だ。
(いやいやいや……今の宣言、どう聞いても“愛の告白”に聞こえるんですが!?)

シリウスはそんな彼を見て、わずかに笑んだ。

「君が真実を語れば、それでいい。
 私が見てきた“君の誠実”は、誰より確かだ。」

その瞬間、フローラが小さく手を口に当てた。
リリィは――完璧な笑顔のまま、目を閉じていた。

静寂の中、鐘の音が遠くで鳴る。
それは、断罪ではなく、
運命が書き換わった音だった。
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