婚約破棄されたので、もうあなたを想うのはやめます

藤原遊

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第5話:対等であるということ

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辺境伯領での仕事は忙しい。
だが、不思議と疲れは残らなかった。

王弟殿下――辺境伯は、判断を急がせない。
私の意見を最後まで聞き、必要があれば修正点を示す。

「この案で進めても問題ありません」

私がそう言うと、彼は小さく息を吐いた。

「君と話していると、余計な説明がいらない」

それは評価というより、実感に近い声音だった。

「対等に話せる相手は、そう多くない」

彼は書類から視線を外し、私を見る。

「だから、楽しい」

一瞬、言葉に詰まる。

甘い言い回しではない。
だが、その一言が胸に静かに落ちた。

「……光栄です」

私がそう返すと、彼はわずかに口元を緩めた。

「仕事として始めた関係だ。
だが、君がここにいることは、もう前提になっている」

それは、命令でも条件でもない。
事実としての言葉だった。

私は帳簿を閉じ、静かに息を整える。

想われることをやめた先で、
こんな形の信頼に出会えるとは思っていなかった。

無理をしなくてもいい。
下に見られることもない。

ここでは、私は――
対等な一人として、必要とされている。
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