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リゼ1
3.活気づく
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調査官がとりつく島もなく立ち去ってから三ヶ月ほどが過ぎた。ルースライン領は今、活気に満ちている。
ルース川に護岸が建設されるのだ。
これは隣国の技術による新式の治水工事で、従来よりも少ない労力での施工で高い治水効果が見込めるものだという。
国から派遣された技師団が現場を主導している。
村の食堂は工事のために集められた人足で連日満員御礼だ。弁当売りの姿も多く見られる。
元々一軒しかなかった宿屋の他に、簡単な小屋をいくつも建てて簡易宿泊所として間に合わせていた。
今日も食堂は多くの人で賑わっている。
「いやぁルースラインなんておっそろしく遠いとこだと思ってたけどよぉ。来てみると意外と近いもんだな。食いもんは旨いし、酒も旨い。いいとこじゃねぇか」
「それに雪も日照りもないんだとよ。娯楽はないが住みやすそうだ。工事が済んでも居着いちまってもいいかもな」
「おいおい、お前さん家族はどうすんだよ。もうすぐ赤ん坊も生まれるんだろぉ?」
「こんだけ良いとこだ、きっと嫁さんも気に入るさ」
「違いねぇ。俺も帰ったらカミさんに聞いてみっかなぁ」
これまでルースライン領はその道のりの悪さから、行商人すら滅多に来ない陸の孤島と言える地であった。
王都からの街道が完成目前となっても、地方の領は注目されることもなく、人の往来も少ないままだった。
それが今や工事景気に沸き立ち、街道の利用者も日に日に増えている。
リゼは感無量で賑わいを眺めた。
「このように賑わうルースライン領は初めてです。本当にギルベルト様には何とお礼を申し上げれば良いのか」
「いえ、礼など言われる立場ではありません。それに我々がやるのは治水工事のみ。そのあと人が定着するかどうかはあなた方次第です」
ギルベルトが工事の統括責任者としてこの地に来てから、すでに一月が経とうとしている。
その間リゼは領主の家族として、また領民の代表として、兄の傍らで何度も技師団と意見を交わしてきた。
それでもギルベルトとの距離は縮まることはなく、初めて会った時と何ら変わることはない。
リゼにとってギルベルトは堅物の仕事人間そのものだ。
冷酷にも思える冷静さと、感情を排し物事を見通す眼差しは、一見すると近寄りがたい。
しかし癖の強い技師たちをまとめ上げる人望も、彼には確かにあるのだ。
リゼはギルベルトの無表情の下にある感情を、隠された熱意を、いつか知ってみたいと思った。
ルース川に護岸が建設されるのだ。
これは隣国の技術による新式の治水工事で、従来よりも少ない労力での施工で高い治水効果が見込めるものだという。
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元々一軒しかなかった宿屋の他に、簡単な小屋をいくつも建てて簡易宿泊所として間に合わせていた。
今日も食堂は多くの人で賑わっている。
「いやぁルースラインなんておっそろしく遠いとこだと思ってたけどよぉ。来てみると意外と近いもんだな。食いもんは旨いし、酒も旨い。いいとこじゃねぇか」
「それに雪も日照りもないんだとよ。娯楽はないが住みやすそうだ。工事が済んでも居着いちまってもいいかもな」
「おいおい、お前さん家族はどうすんだよ。もうすぐ赤ん坊も生まれるんだろぉ?」
「こんだけ良いとこだ、きっと嫁さんも気に入るさ」
「違いねぇ。俺も帰ったらカミさんに聞いてみっかなぁ」
これまでルースライン領はその道のりの悪さから、行商人すら滅多に来ない陸の孤島と言える地であった。
王都からの街道が完成目前となっても、地方の領は注目されることもなく、人の往来も少ないままだった。
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リゼは感無量で賑わいを眺めた。
「このように賑わうルースライン領は初めてです。本当にギルベルト様には何とお礼を申し上げれば良いのか」
「いえ、礼など言われる立場ではありません。それに我々がやるのは治水工事のみ。そのあと人が定着するかどうかはあなた方次第です」
ギルベルトが工事の統括責任者としてこの地に来てから、すでに一月が経とうとしている。
その間リゼは領主の家族として、また領民の代表として、兄の傍らで何度も技師団と意見を交わしてきた。
それでもギルベルトとの距離は縮まることはなく、初めて会った時と何ら変わることはない。
リゼにとってギルベルトは堅物の仕事人間そのものだ。
冷酷にも思える冷静さと、感情を排し物事を見通す眼差しは、一見すると近寄りがたい。
しかし癖の強い技師たちをまとめ上げる人望も、彼には確かにあるのだ。
リゼはギルベルトの無表情の下にある感情を、隠された熱意を、いつか知ってみたいと思った。
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