【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~

ねるねわかば

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リゼ3

4.女官を見る

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 ルースライン領の未来は明るい。
 往路の悲壮感は霧消し、リゼは希望を胸に灯し王都に戻った。


 ケイブ邸には夫妻が在宅しており、リゼが顔を出すと二人そろって駆け寄ってくる。
 そして正面からはローラが、横からはロランツが、リゼを抱き締めた。

「リゼさん、無事に帰ってきてくれて嬉しいわ。
 領から出してくれた手紙で御兄様のことは知らせてもらったけれど、こうしてあなたの顔を見るまでは心配でたまらなかったもの」

「そうだよ、リゼ。君は無謀すぎる。女性が一人で遠乗りだなんて。
 僕は止めようとしたのに君はあっという間に行ってしまった。あの時はどうなることかと思ったよ」

「貸し馬屋の人が一緒に行って下さって……おじ様たちには言っていませんでしたね。
 心配をかけてごめんなさい」

「リゼはもっと自分自身を大切にしなければいけないよ。君のことを思う人は君が考えるよりもずっと多い。
 ギルベルトなんて君のあとを追いかけようとしたくらいだ」

「そうなのですか……」

 不意に聞いたギルベルトの名に、まだリゼの胸は痛む。けれど今はそれで良いのだと笑みを作った。



 王女宮に出仕したリゼは、侍女長に復帰の報告をする。
 侍女長からは労りと共に、王宮勤めを続けられることに喜びの言葉をかけてもらった。

 帰省前に聞いた女官への登用については、今すぐではなく王女殿下の輿入れ後の話だそうだ。

「使者様が戻られたらかの方のお部屋で引き続き励んでください。
 お輿入れまでの間は、その後の身の振り方を考える時間だと思いながら過ごしてもらえるかしら」



 思いを新たに仕事に励む。
 侍女の仕事は前と変わらず様々な業務があって楽しいと思える。
 使者一行が不在の分、以前よりも少しだけ余裕があった。リゼは手隙の時には女官の姿を目で追うようになった。

 女官の数は侍女ほど多くはない。けれどリゼがいる控えの間は、王宮の勤め人が多く行き交う場所にあり、気にして見ていると日に数回はその姿を目にする。
 見かけた女官がどんな用件でどこに行くのか、そういったことを向かう方向や持ち物から想像するのも一興だった。


 この時もリゼは、女官の証である金のバッジをつけた女性を、控えの間から眺めていた。

 彼女はリゼと同じか、それよりも少し年若の女性を連れている。
 二人はさほど親しくはないようで、特に会話などをしている様子はない。
 若い女性はいささか尊大な様子で、出仕希望者という風にも見えなかった。

 やがて二人連れは控えの間まで来て、リゼはいるかと訊ねる。女官は案内のためだけに同行したらしく、若い女性を残して仕事に戻っていった。


「リゼ・ルースラインは私です。どのようなご用件でしょうか」

「初めまして。グレイス・ハイモンドと申します。
 突然お邪魔して申し訳ありませんが、ヴィンロード様のことで少しお時間をいただけませんか?」
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