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第二部 エリミア編

31 王と隊長

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「フィオル。俺は足手まといだ。先に向かえ」

「オッケー」

 フィオルは、瞬間移動を使えないのに一瞬でシュリオンの目の前から消えた。突風が吹き、シュリオンの髪がぐじゃぐじゃになった

「シュリオン!」 

 シュリオンが、望遠施設に向かって走っていると、リッゾルがやって来た

「リッゾル?何してんの?」

「君こそ何してんだ?」

「今、望遠施設の方に取り残された生徒がいるから助けに。来るか?」

「いや、それより・・・」

 爆発音がちょうど聞こえた。シュリオンは何を言ったか聞き取れなかった

「何て言った?」

「フェーナはどこに?」

「フェーナは広間だ」

「分かった」

 リッゾルは、広間に向かって駆けていった

「何で、フェーナが出てきた?」

 シュリオンは疑問に思ったが、そんなこと考えてる場合ではないので、急いで走り出した



 フェーナは大勢の生徒がいる広間で、うずくまりながら泣いていた

「やめて・・・もう、やめて!」

 爆発音が聞こえる度に、フェーナは同じことをずっと繰り返し言っている

「フェーナ!フェーナ!」

 リッゾルがフェーナを呼んでいる

「フェーナ。ここに居たのか!」

 リッゾルがフェーナを見つけ、声をかけた

「フェーナ。大丈夫か?」

 フェーナは無反応だ。放心状態になっているフェーナをリッゾルは立ち上がらせた

「フェーナ。ガルクが!」 

「ガルク?」

 やっとフェーナが反応した

「行くぞ!」

 フェーナを連れて、リッゾルは広間から出ていった



 アイリン・クルトナとガルーダは、湖畔近くで校舎に向かってきてる、複数人のテロリストを二人で相手していた

「おい、クルトナ!戦闘向きの能力じゃないだろ!」

「ガルーダ。お前こそ弱くなったんじゃないか」

「昔から、ごちゃごちゃとうるせぇな!」

「それは、お前だろ!」

 アイリン・クルトナとガルーダは、リンドルズ学校で同級生だった。クルトナ家は基本、学校には通わずに、独自の教育をしているが。アイリン・クルトナは、自らリンドルズ学校に志願した

「おい!唯一王とフェルムス隊長だ!殺せ!」

 大物二人と対峙してるテロリスト達は、やる気満々だった

「ガルーダ。体頼む!」

 アイリン・クルトナは言い残すと、テロリストの一人に憑依した。クルトナの体は人形のようにその場に崩れそうになったが、ガルーダが支えて。ガルーダはアイリン・クルトナを連れたまま、少し離れたところに瞬間移動した

「おい!あばよ!」

 クルトナに憑依されたテロリストは、周囲を巻き込みながら自爆した。自爆して、憑依体が死んだら、クルトナは自身の体に戻ってきた

「お疲れ!」

「憑依先の体が死ぬのは、痛くていつも嫌だ」

「残りは、もう数人だな」

「あとは、フェルムスがどうにかする。帰っていいぞ」

「まだガルクに会えていない。会ってから帰る。あいつはどこにいる?」

 ガルーダは、空に地図を出した

「猛獣エリアにいるのか」

「瞬間移動で行け」

「あぁ。お前は?」

「学校関係者の裏切り者を調べる」

「裏切り者がいるとは思えんが」

「俺もそれは、思いたくない」

「しかし、ここの空間移動妨害装置は、宮殿やフェルムス本部と同等だぞ」

「分かってるさ。だが、裏切り者ではなく。操られていたり。無自覚でやってる場合もある」

「そうだが。それは、犯人を見つけてからの検討事項だ」
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