24 / 26
12
しおりを挟む
とりあえずじっくり考えようと部屋に向かって歩いていると、前方から人が歩いてきた。
二人組の片方はリスタースだ。
隣は使用人らしい。
あ!とヘルヴィルは顔を明るくさせて、少しだけ足を速めた。
真っ直ぐな姿勢で歩くリスタースも、ヘルヴィルに気づいたらしい。
こちらは歩くスピードを緩めてしまった。
気にせずててて、と歩み寄る。
後ろでエイプリルがはわわと声を漏らしていたけれど、気にしない。
リスタースに呼びかけようとして、はたとヘルヴィルは立ち止まった。
何と呼べばいいのだろう。
ルードレットはリスタースのことをお兄様と呼んでいた記憶がある。
じゃあそう呼べばいいだろうか。
お兄ちゃんや兄貴ではない気がする。
というか、お兄ちゃんはともかく兄貴という顔ではない。
うむと結論が出たので、ヘルヴィルはリスタースの前まで歩いていき目の前に立った。
リスタースがヘルヴィルを見下ろして、ピクリと指先がかすかに動く。
向かい合って立ち止まり、じーっと見上げているとリスタースの眉間に皺が寄った。
グレンとお揃いである。
「……何だ」
「りふたーしゅにーたま」
にぱっと笑って呼びかければ、リスタースの眉がピクリと動いた。
けれどそれ以外は動かず、じっとヘルヴィルを見下ろしてくる。
「……」
「……」
見つめ合う事しばし。
(なんか、とーたまといっちょ)
反応がまったく同じだ。
改めて見ると、顔も父親にそっくりだ。
将来は美青年になるだろうと一目瞭然である。
期待満載だ。
眉間に皺を寄せるリスタースに、中身もそっくりなのかなと不思議に思いながら、ヘルヴィルはもう一度口を開いた。
「りふたーしゅにーたま?」
やはり反応がない。
あれ?と首を捻る。
リスタースが父上と呼ぶように、兄の事は兄上なのだろうか。
でもグレンはお父様でいいと言われた。
親と兄弟は違うのだろうかと、ヘルヴィルはじっとリスタースを見上げるばかりだ。
どっちか教えてほしい。
お互い見つめ合っていると、リスタースの背後に控えていた使用人らしき男がそっと進み出た。
十歳ほどの少年だ。
リスタースよりも背が高い。
オレンジの巻き毛に、そばかすの散った顔は素朴だ。
優しそうというのがヘルヴィルの印象だった。
「リスタース様、お言葉を」
少年が声をかけると、リスタースの眉間にさらに皺が寄った。
そしてゆっくりと口が開かれる。
「……もう少しまともに呼べないのか」
言われた言葉にヘルヴィルはええーと眉を上げた。
それは自分でもそう思うけれど、活舌が悪いから妥協していただきたい。
(うまく、はなしぇないんらもん)
多分ヘルヴィルは新生ヘルヴィルになるまで、まともに喋ってなかったのではないかと思う。
記憶にある限り、ほぼ喋ってないので確実だろう。
そのせいか舌がもつれるし疲れる。
疲れたらさらに舌がもつれて、舌足らずになるの悪循環だ。
これは慣れるまで待ってもらいたいというのが本音だった。
二人組の片方はリスタースだ。
隣は使用人らしい。
あ!とヘルヴィルは顔を明るくさせて、少しだけ足を速めた。
真っ直ぐな姿勢で歩くリスタースも、ヘルヴィルに気づいたらしい。
こちらは歩くスピードを緩めてしまった。
気にせずててて、と歩み寄る。
後ろでエイプリルがはわわと声を漏らしていたけれど、気にしない。
リスタースに呼びかけようとして、はたとヘルヴィルは立ち止まった。
何と呼べばいいのだろう。
ルードレットはリスタースのことをお兄様と呼んでいた記憶がある。
じゃあそう呼べばいいだろうか。
お兄ちゃんや兄貴ではない気がする。
というか、お兄ちゃんはともかく兄貴という顔ではない。
うむと結論が出たので、ヘルヴィルはリスタースの前まで歩いていき目の前に立った。
リスタースがヘルヴィルを見下ろして、ピクリと指先がかすかに動く。
向かい合って立ち止まり、じーっと見上げているとリスタースの眉間に皺が寄った。
グレンとお揃いである。
「……何だ」
「りふたーしゅにーたま」
にぱっと笑って呼びかければ、リスタースの眉がピクリと動いた。
けれどそれ以外は動かず、じっとヘルヴィルを見下ろしてくる。
「……」
「……」
見つめ合う事しばし。
(なんか、とーたまといっちょ)
反応がまったく同じだ。
改めて見ると、顔も父親にそっくりだ。
将来は美青年になるだろうと一目瞭然である。
期待満載だ。
眉間に皺を寄せるリスタースに、中身もそっくりなのかなと不思議に思いながら、ヘルヴィルはもう一度口を開いた。
「りふたーしゅにーたま?」
やはり反応がない。
あれ?と首を捻る。
リスタースが父上と呼ぶように、兄の事は兄上なのだろうか。
でもグレンはお父様でいいと言われた。
親と兄弟は違うのだろうかと、ヘルヴィルはじっとリスタースを見上げるばかりだ。
どっちか教えてほしい。
お互い見つめ合っていると、リスタースの背後に控えていた使用人らしき男がそっと進み出た。
十歳ほどの少年だ。
リスタースよりも背が高い。
オレンジの巻き毛に、そばかすの散った顔は素朴だ。
優しそうというのがヘルヴィルの印象だった。
「リスタース様、お言葉を」
少年が声をかけると、リスタースの眉間にさらに皺が寄った。
そしてゆっくりと口が開かれる。
「……もう少しまともに呼べないのか」
言われた言葉にヘルヴィルはええーと眉を上げた。
それは自分でもそう思うけれど、活舌が悪いから妥協していただきたい。
(うまく、はなしぇないんらもん)
多分ヘルヴィルは新生ヘルヴィルになるまで、まともに喋ってなかったのではないかと思う。
記憶にある限り、ほぼ喋ってないので確実だろう。
そのせいか舌がもつれるし疲れる。
疲れたらさらに舌がもつれて、舌足らずになるの悪循環だ。
これは慣れるまで待ってもらいたいというのが本音だった。
165
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる