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昼食を食べ終えてまた部屋でダラダラと過ごしたあと、小腹が空いてリーゼロッテは食堂へと足を運んだ。
子供になったからとクレメンスの持ってきた食事の量が少なくて、微妙に足りなかったのだ。
次からはもう少し量を増やしてもらおうと決意する。
昼間に一方的にもらったお菓子があったけれど口にする気になれず、食堂の人間に差し入れと渡した。
自分はホットケーキを焼いてもらい、ピークを過ぎていて助かったと人のまばらな食堂を見回す。
一応、目立たないようにと隅のテーブルに向かう。
すると、窓際に遅い昼食を食べているユリーアの姿があった。
輝く金髪はとてもよく目立つ。
近づかない方がいいだろうかと思っていると、ふとひらめいた。
(これ、敵情視察できるんじゃない?)
王子についてどう思っているか。
どんなアピールをするつもりなのか。
今の姿なら聞き出せるのではないかと思い、ふむと一瞬考えてリーゼロッテはユリーアのテーブルに近づいた。
「お姉ちゃん、座っていい?」
盛大に猫を被って話しかけると、子供がいることに驚いてユリーアの瞳がぱちりと大きく瞬いた。
しかし表情はやはり無表情だ。
兄のクレメンスも大概、ぼんやりと無表情の時があるが、やはり二人は似ていないなと思う。
「あなたは?」
「リージアっていうの。今週だけクレメンスお兄ちゃんのお世話になってるのよ」
「お兄様が……?」
とても驚いたのか、目を見張り小さく口を開ける。
初めて見る表情が浮かんだ顔だった。
「うん。凄くよくしてくれてるよ」
さりげなく正面の席に腰を下ろし、リーゼロッテは無邪気に笑って見せる。
「意外だわ、あの人以外の興味を持てるものがあったなんて」
ユリーアの言葉にリーゼロッテは内心黒いものが渦巻いた。
(興味のあるもの、ジュリアのことかな……)
しかしクレメンスはただの幼馴染のリーゼロッテに結構干渉してくるタイプなので、興味の持てるものがないなんて、真逆だと思った。
「クレメンスお兄ちゃんは結構口うるさいと思うけど」
ホットケーキをフォークで口に放り込みながら言えば、ユリーアはますます不思議そうに眉を上げた。
「家じゃ無表情だし、何を考えているのかわからないもの」
「へえー」
それこそ意外だ。
まあ結構冷えた家庭環境っぽいとは思っていたが、兄妹の間も予想通り冷えているようだ。
ベタベタな口うるさいシスコンになりそうなのにと、クレメンスの顔を思い浮かべる。
そこではた、と本来の目的を思い出した。
「そ、そういえば、クレメンスお兄ちゃんから王子様の婚約者候補だって聞いたの。やっぱりお妃様になるのが夢よね?」
ユリーアの考えを暴こうと、少し強引かとは思ったけれどもわざとらしく話を切り出した。
すっかり無表情に戻ったユリーアが小さく息をついた。
「私はあまり興味はないわ」
「ええ!」
衝撃の告白だ。
思わずガチャンと持っていたフォークを皿の上に落とした。
「なんで?お妃様なんてお金持ちで将来を約束されてるのに!」
思わず身を乗り出すリーゼロッテに、ユリーアは小さく眉を寄せた。
「貴族に生まれたからには政略結婚でもなんでもするけれど、基本的に一人が好きなの。だから、誰が相手だろうと構わないわ」
再び衝撃だ。
(いやたしかに私も金持ちなら誰でもいいんだけども!)
まさかここまで無関心だなんてと、リーゼロッテは驚きっぱなしだ。
けれどリーゼロッテの知る限りならばウォルウィッシュ夫人は、ティモシーにユリーアを売り込んでいた。
やる気なのは母親だけで温度差があるのだろうか。
「おうちの人に何も言われないの?」
おそるおそる聞くと。
「母からは頻繁に進展を期待する手紙が来ているわ」
やっぱりかと小さく頷く。
つい先日は学園にまで来ていたもんなと、思わず同情的に思ってしまう。
けれどユリーアはそれさえ興味が無さそうだ。
口元をナプキンで拭うと、トレーを持って立ち上がった。
「それじゃあこれで。お兄様によろしく伝えて」
「はあ」
気の抜けた返事を返すと、ユリーアは行ってしまった。
「えーどういうこと?ユリーア嬢はライバルにならないってことなのかな」
今の会話を思い出しながら、がじりとフォークを齧る。
ここにクレメンスがいたら行儀が悪いと叱られることだろう。
「ユリーアさんは努力する気はないけど辞退する気もないってことよね。てゆうか興味ないって……」
真っ向から正反対の話を聞かされてしまった。
しかし、とりあえず本人にやる気がなくてもあの美貌は強敵だ。
「一応、警戒ってところかな」
結論づけると、残りのパンケーキを手早く胃に収めてリーゼロッテは食堂を後にした。
次はレイナにさぐりを入れるべく、とりあえず寮だろうかと歩き出す。
「部屋にいるんだったら、どう尋ねたら違和感ないかな」
うーんと顎に手を当てて考えながら歩いていると、中庭に差し掛かったところで特徴的なピンクの頭を見つけた。
中庭のベンチに、目的のレイナが座っている。
(私ってばラッキー)
自分の運を自画自賛しながら、再び笑みを顔に張り付けるとリーゼロッテはベンチへと近づいた。
「こんにちは!」
話しかけたら、レイナは刺繍をしていた手を止めて顔を上げた。
きょとんと物珍し気な顔でリーゼロッテを見返している。
「どうして学園に子供が」
「クレメンスお兄ちゃんに今週だけお世話になってるの。リージアっていいます」
無邪気に笑って、座っていい?と聞くとレイナは快く横にずれてくれた。
空いたスペースによいしょと座る。
「クレメンス様ってことは、ユリーア嬢のお兄様ね」
「うん!ユリーアお姉ちゃんともお話ししてきたの」
「そうなのね」
にこりと笑みを浮かべるレイナはやりかけの刺繍を膝に置いた。
それを何気なく見下ろすと。
「えっう、うまい!」
思わず驚愕した。
とても細かくミモザとつる草の模様が刺繍されていて、ほつれもなく柔らかく表現されている。
はっきり言ってリーゼロッテとは天と地の差だ。
いや比べるのもおこがましい。
「もしかして……王子様へのプレゼント?」
おそるおそる問いかければ。
「あら、よくわかったわね」
あっけらかんと答えられて、内心リーゼロッテは頭を抱えた。
自分のプレゼント作戦は失敗したというのに、これでは圧倒的に不利になってしまう。
「婚約者候補だって聞いたから」
「ああ、そうなのね。そうよ、せっかくの縁だからと思ってね」
その縁を断ち切りたい衝動に駆られながら、リーゼロッテは小さく深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
そしてユリーアと同じ質問を口にした。
「やっぱりお妃様になりたいわよね、お金持ちになれるし」
「あら、ふふっお金持ちになんてならないわよ」
「へ?」
意外な言葉を返され、リーゼロッテは目を丸くした。
レイナは、あのねと諭すようにリーゼロッテの顔を覗き込む。
「王族になるってことは、国民の税金で生かされているってことだから、質素倹約に生活するべきなのよ」
なんといういい子ちゃん発言なのだろう。
「で、でもお妃様にはなりたいでしょう?」
「そうね」
肯定したレイナにやはりかと、口を引き結んだが。
「王とは重い重責を背負う。その重責を分け与えていただくのはとても誉なことだわ」
「……そんな理由?」
「信頼して、信頼されて、そして初めて王にとっての一番の臣下として妃を選ぶのよ」
噛んで言い含めるレイナに、リーゼロッテはそれ以上何も言えずにきゅっと拳を握って、立ち上がった。
「お話ありがとう、それじゃあ」
「ええ、またね」
にこやかに微笑むレイナに背を向けて、そそくさとその場を後にする。
リーゼロッテはそのままずんずんと下を向いて唇を真一文字に引き結んだまま、人気のない校舎の裏手へと行き、そこにひっそりとあるベンチへ座った。
膝の上に乗せた両手は白くなるほど握りしめられている。
「なによ……二人とも綺麗事ばっかり」
ポツリと呟いて、目を閉じる。
貴族としての結婚観を持っているユリーア。
王族になるということをしっかり考えているレイーネ。
自分のあさはかな考えとは全然違っている。
自分よりはるかに年下の彼女たちが、目先の欲にかられている自分とはまったく違っていてもやもやとした気持ちが胸の中にざわめいている。
そのまま赤い夕陽を体に浴びて、空に一番星がまたたきだしてもリーゼロッテはベンチから立ち上がる気になれなかった。
「リジー!」
聞きなれた声に、のろのろと顔を上げるとローブをなびかせながらクレメンスが駆け寄ってきた。
「探したよ、部屋にいないと駄目じゃないか。花が咲いたら体が若返るんだから。それに体調も崩したばかりなのに」
心配そうにたしなめるクレメンスに、しかしリーゼロッテは俯いたままだ。
「リジー?」
「なによ、別にいいわよ来なくて」
突き放すように言い放ったが、クレメンスはリーゼロッテの横に腰を下ろすと、そっと顔を覗き込んできた。
「何かあった?」
「別に」
取り付く暇もないリーゼロッテの態度に、どうしたらいいかとクレメンスが逡巡していると。
「あんたはいいわよね。王子様付きがもう決定してるようなものだし」
自分でも思いがけない言葉がリーゼロッテの口から洩れた。
確かにあと二人の候補者に比べてクレメンスの実力は飛び抜けている。
ティモシーからの信頼も厚く、どう見ても選ばれるのはクレメンスだろう。
「リジーはどうしてそんなに王妃になりたいの?」
長めの髪をさらりと揺らしてクレメンスが問いかけると、一拍置いてリーゼロッテは重く口を開いた。
「伯爵家なんていつ没落するかわかんないわ、侯爵家だって……王族だったらよっぽどのことがない限りお金に困らない」
「リジーはお金が欲しいの?」
静かに問いかけられて、リーゼロッテはだってと唇を震わせた。
「お金がないだけでみじめなのよ」
散々つらい思いをした。
恥ずかしい思いだって、悔しい思いだって。
握っていた拳をますます、ギリリと力を入れると爪が刺さってピリッと小さな痛みが走る。
「友人も恋も何もいらない。あたしは二度とあんな生活はしたくない」
キッパリと言い切る。
クレメンスにとっては突飛な発言だったろう。
今生ではリーゼロッテは裕福な伯爵家に生まれて、貧乏なんかとは無縁だ。
顔を俯けたままのリーゼロッテの拳を骨ばった優美な手が包み込むと、その手を優しく開かせた。
のろのろと顔を上げると、クレメンスがそっと小さくなっているリーゼロッテの体を抱きしめる。
布がたっぷりのローブを着ているから、すっぽりとリーゼロッテは夜風から守られた。
「あたしのこと妄想癖って思うでしょ」
「思ってないよ、すごく変わってるとは思うけど」
その言葉にリーゼロッテの肩がぴくりと動いた。
「あんたみたいに全部持ってる奴になんてわかんない」
侯爵家で、魔法が使えて、王子殿下付き。
リーゼロッテだって、出来るなら自分で自分の地位を安泰に導きたい。
手に職を持って、未来に不安なんて持ちたくない。
けれど貴族の女にとって働くことは不可能だし、未来は結婚相手に委ねるしかない。
それがリーゼロッテには怖くて不安でどうしようもなかった。
目に涙がたまりそうなのを必死で我慢していると、そっと頭をゆるく撫でられた。
「僕は確かに侯爵家の嫡男で魔法宮の王子付き候補だ。でも、僕は何でも持ってるわけじゃないよ」
「うそつき、美人な婚約者候補までいるくせに」
「……そうだね」
「ッ」
「でも、本当に何でも持ってるわけじゃない」
キッパリと言い切ったクレメンスに、リーゼロッテはそっと顔を上げた。
そこには少し困ったように苦笑するクレメンスの顔がある。
「父にとって僕は疎ましいだけの存在だからね。いや、ウォルウィッシュ家全員にとってかな」
小さく肩をすくめるクレメンスに、リーゼロッテはそっとその頬へ小さくなった手を伸ばした。
その手の上に、クレメンスの手がゆっくりと重ねられる。
「どういうこと?そりゃ、薄情なところはあったけど、怖がってるからでしょ。王子付きになれば家の誇りになるのに……」
「父は王族付きには指名されなかったから、自分より魔力があってほとんど王子付きが約束されてる僕を憎んでる」
少し伏せたアメジストの瞳を、長めの前髪がさらりと隠した。
それが嫌で左手でクレメンスの前髪をかき上げようとすると、その手も右手同様にそっと大きな手に包まれた。
「母は結婚前に恋人がいたけれど政略結婚した。もう繋がってないみたいだけどね。ユリーアは種違いの義妹だ」
「じゃあお母さんとは」
「母は政略結婚した父も、その息子で魔力の強い僕の事も嫌悪して憎んでるよ。ユリーアとは接触しないように言われていたから、話したこともほとんどない」
クレメンスの言葉にリーゼロッテは絶句するしかなかった。
のほほんとした、ちょっと家庭に問題がある幼馴染。
そう思っていた彼は、家庭ではとても寂しい生活をしていたのだ。
「ごめん、無神経な事言った」
自分の癇癪が恥ずかしくて、リーゼロッテは眉間に皺を作って謝罪を口にした。
家族がいなかった前世は、本当を言えば寂しかった。
今生はリーゼロッテは家族にとても恵まれている。
少なくとも、家族の愛情には飢えていない。
しょんぼりと俯いてしまったリーゼロッテの顔を、頬に添えて上げさせると、クレメンスはしんなりと瞳を細めた。
「いいんだ、寂しいなんてとっくの昔に消え去った。リジーのおかげだよ」
くすりと笑ったクレメンスに。
「何それ」
思わずへにょりと力が抜けた。
それをクレメンスが楽しそうに見やる。
「ほんと、何よそれ。バカみたい」
自分の存在が少しだけでも幼馴染の慰めになったのなら、よかったのかもしれない。
そう思いながら、リーゼロッテは小さく胸に灯った嬉しさを誤魔化すように、バカみたいと何度も繰り返した。
そのまま二人が連れ立って夕食のために食堂に行くと、ティモシーが声をかけてきた。
食事は後回しにして、壁際の人気のないテーブルへとつく。
「ユリーア嬢とレイナ嬢にプレゼントは届いてなかった」
ティモシーの言葉に二人は目を丸くした。
「私だけ?何で?」
「わからないが」
チラリと胸のネックレスにティモシーの視線がピタリと定められる。
「これだけのものを手に入れるには、それ相応の地位と金が必要な筈だ」
ティモシーの言葉に、クレメンスは顎に拳を当てた。
伏目がちにした目元に長い睫毛が影を作る。
「どうしたの?」
「もしかしたら……」
「何よ」
じらさないでよとリーゼロッテは先を促すけれど。
「いや、確証がないから」
何でもないよ肩をすくめられてしまった。
結局、大した情報の交換はなく三人は食事を終わらせ寮への道を歩いていた。
今日はよく晴れていて、月がてっぺんに輝いている。
来月のティモシーの誕生日パーティーに婚約者を発表するのだけれど、あと二週間で戻れるだろうかとリーゼロッテは不安を胸によぎらせたときだ。
ドクンッ
「ぅ、あ」
心臓が大きく跳ねて、リーゼロッテは苦し気に息を吐いた。
「リジー!」
膝をついた小さな体のリーゼロッテに慌ててクレメンスが肩に手を添える。
「う、くぅ」
ドクンドクンと心臓が何度か大きく脈打ったあとに、それは収まった。
額に滲んだ脂汗をクレメンスがハンカチでそっと拭ってくれる。
「なんだったの」
はあ、と息をついたリーゼロッテは服がなんだか大きくなったような気がして手の平を見た。
すると袖口がブカブカになっている。
そこから除く白い腕にギクリと身をこわばらせた。
クレメンスの方を見ると、彼もリーゼロッテの腕を見て顔をこわばらせている。
「花が咲いてる……」
リーゼロッテの白く細い腕。
そこに浮かんでいた蕾のひとつが咲いていたのだ。
「これは……赤ん坊にまで戻るならまだしも、胎児にまでなってしまったら」
クレメンスが呆然と呟くと、ティモシーが言いにくそうに口を開いた。
「命にかかわるな」
サーッとリーゼロッテの顔から血の気が引いた。
今の今まで困ったなとは思っていたけれど、こんな切羽詰まった事態という実感がなかったのだ。
唇から震える声が零れ落ちた。
「私、しぬの?」
「そんなことない!」
ぐいと気が付けば目の前が暗くなり、黒いローブを着ているクレメンスに抱きしめられているのだと気づいた。
「絶対にネックレスを解明してみせる!絶対に死なせない!」
初めて聞いたクレメンスの悲鳴のような声に、リーゼロッテは思わず呆気にとられていた。
ここまで必死になってくれるとは思ってもみなかったからだ。
かすかに震えているクレメンスの顔は俯いているせいで、表情が見えない。
こんな様子を見てしまっては、なんだか逆に冷静になれた。
「期待してるわ」
震えるクレメンスの頭を、リーゼロッテの小さな手がよしよしと撫でていった。
子供になったからとクレメンスの持ってきた食事の量が少なくて、微妙に足りなかったのだ。
次からはもう少し量を増やしてもらおうと決意する。
昼間に一方的にもらったお菓子があったけれど口にする気になれず、食堂の人間に差し入れと渡した。
自分はホットケーキを焼いてもらい、ピークを過ぎていて助かったと人のまばらな食堂を見回す。
一応、目立たないようにと隅のテーブルに向かう。
すると、窓際に遅い昼食を食べているユリーアの姿があった。
輝く金髪はとてもよく目立つ。
近づかない方がいいだろうかと思っていると、ふとひらめいた。
(これ、敵情視察できるんじゃない?)
王子についてどう思っているか。
どんなアピールをするつもりなのか。
今の姿なら聞き出せるのではないかと思い、ふむと一瞬考えてリーゼロッテはユリーアのテーブルに近づいた。
「お姉ちゃん、座っていい?」
盛大に猫を被って話しかけると、子供がいることに驚いてユリーアの瞳がぱちりと大きく瞬いた。
しかし表情はやはり無表情だ。
兄のクレメンスも大概、ぼんやりと無表情の時があるが、やはり二人は似ていないなと思う。
「あなたは?」
「リージアっていうの。今週だけクレメンスお兄ちゃんのお世話になってるのよ」
「お兄様が……?」
とても驚いたのか、目を見張り小さく口を開ける。
初めて見る表情が浮かんだ顔だった。
「うん。凄くよくしてくれてるよ」
さりげなく正面の席に腰を下ろし、リーゼロッテは無邪気に笑って見せる。
「意外だわ、あの人以外の興味を持てるものがあったなんて」
ユリーアの言葉にリーゼロッテは内心黒いものが渦巻いた。
(興味のあるもの、ジュリアのことかな……)
しかしクレメンスはただの幼馴染のリーゼロッテに結構干渉してくるタイプなので、興味の持てるものがないなんて、真逆だと思った。
「クレメンスお兄ちゃんは結構口うるさいと思うけど」
ホットケーキをフォークで口に放り込みながら言えば、ユリーアはますます不思議そうに眉を上げた。
「家じゃ無表情だし、何を考えているのかわからないもの」
「へえー」
それこそ意外だ。
まあ結構冷えた家庭環境っぽいとは思っていたが、兄妹の間も予想通り冷えているようだ。
ベタベタな口うるさいシスコンになりそうなのにと、クレメンスの顔を思い浮かべる。
そこではた、と本来の目的を思い出した。
「そ、そういえば、クレメンスお兄ちゃんから王子様の婚約者候補だって聞いたの。やっぱりお妃様になるのが夢よね?」
ユリーアの考えを暴こうと、少し強引かとは思ったけれどもわざとらしく話を切り出した。
すっかり無表情に戻ったユリーアが小さく息をついた。
「私はあまり興味はないわ」
「ええ!」
衝撃の告白だ。
思わずガチャンと持っていたフォークを皿の上に落とした。
「なんで?お妃様なんてお金持ちで将来を約束されてるのに!」
思わず身を乗り出すリーゼロッテに、ユリーアは小さく眉を寄せた。
「貴族に生まれたからには政略結婚でもなんでもするけれど、基本的に一人が好きなの。だから、誰が相手だろうと構わないわ」
再び衝撃だ。
(いやたしかに私も金持ちなら誰でもいいんだけども!)
まさかここまで無関心だなんてと、リーゼロッテは驚きっぱなしだ。
けれどリーゼロッテの知る限りならばウォルウィッシュ夫人は、ティモシーにユリーアを売り込んでいた。
やる気なのは母親だけで温度差があるのだろうか。
「おうちの人に何も言われないの?」
おそるおそる聞くと。
「母からは頻繁に進展を期待する手紙が来ているわ」
やっぱりかと小さく頷く。
つい先日は学園にまで来ていたもんなと、思わず同情的に思ってしまう。
けれどユリーアはそれさえ興味が無さそうだ。
口元をナプキンで拭うと、トレーを持って立ち上がった。
「それじゃあこれで。お兄様によろしく伝えて」
「はあ」
気の抜けた返事を返すと、ユリーアは行ってしまった。
「えーどういうこと?ユリーア嬢はライバルにならないってことなのかな」
今の会話を思い出しながら、がじりとフォークを齧る。
ここにクレメンスがいたら行儀が悪いと叱られることだろう。
「ユリーアさんは努力する気はないけど辞退する気もないってことよね。てゆうか興味ないって……」
真っ向から正反対の話を聞かされてしまった。
しかし、とりあえず本人にやる気がなくてもあの美貌は強敵だ。
「一応、警戒ってところかな」
結論づけると、残りのパンケーキを手早く胃に収めてリーゼロッテは食堂を後にした。
次はレイナにさぐりを入れるべく、とりあえず寮だろうかと歩き出す。
「部屋にいるんだったら、どう尋ねたら違和感ないかな」
うーんと顎に手を当てて考えながら歩いていると、中庭に差し掛かったところで特徴的なピンクの頭を見つけた。
中庭のベンチに、目的のレイナが座っている。
(私ってばラッキー)
自分の運を自画自賛しながら、再び笑みを顔に張り付けるとリーゼロッテはベンチへと近づいた。
「こんにちは!」
話しかけたら、レイナは刺繍をしていた手を止めて顔を上げた。
きょとんと物珍し気な顔でリーゼロッテを見返している。
「どうして学園に子供が」
「クレメンスお兄ちゃんに今週だけお世話になってるの。リージアっていいます」
無邪気に笑って、座っていい?と聞くとレイナは快く横にずれてくれた。
空いたスペースによいしょと座る。
「クレメンス様ってことは、ユリーア嬢のお兄様ね」
「うん!ユリーアお姉ちゃんともお話ししてきたの」
「そうなのね」
にこりと笑みを浮かべるレイナはやりかけの刺繍を膝に置いた。
それを何気なく見下ろすと。
「えっう、うまい!」
思わず驚愕した。
とても細かくミモザとつる草の模様が刺繍されていて、ほつれもなく柔らかく表現されている。
はっきり言ってリーゼロッテとは天と地の差だ。
いや比べるのもおこがましい。
「もしかして……王子様へのプレゼント?」
おそるおそる問いかければ。
「あら、よくわかったわね」
あっけらかんと答えられて、内心リーゼロッテは頭を抱えた。
自分のプレゼント作戦は失敗したというのに、これでは圧倒的に不利になってしまう。
「婚約者候補だって聞いたから」
「ああ、そうなのね。そうよ、せっかくの縁だからと思ってね」
その縁を断ち切りたい衝動に駆られながら、リーゼロッテは小さく深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
そしてユリーアと同じ質問を口にした。
「やっぱりお妃様になりたいわよね、お金持ちになれるし」
「あら、ふふっお金持ちになんてならないわよ」
「へ?」
意外な言葉を返され、リーゼロッテは目を丸くした。
レイナは、あのねと諭すようにリーゼロッテの顔を覗き込む。
「王族になるってことは、国民の税金で生かされているってことだから、質素倹約に生活するべきなのよ」
なんといういい子ちゃん発言なのだろう。
「で、でもお妃様にはなりたいでしょう?」
「そうね」
肯定したレイナにやはりかと、口を引き結んだが。
「王とは重い重責を背負う。その重責を分け与えていただくのはとても誉なことだわ」
「……そんな理由?」
「信頼して、信頼されて、そして初めて王にとっての一番の臣下として妃を選ぶのよ」
噛んで言い含めるレイナに、リーゼロッテはそれ以上何も言えずにきゅっと拳を握って、立ち上がった。
「お話ありがとう、それじゃあ」
「ええ、またね」
にこやかに微笑むレイナに背を向けて、そそくさとその場を後にする。
リーゼロッテはそのままずんずんと下を向いて唇を真一文字に引き結んだまま、人気のない校舎の裏手へと行き、そこにひっそりとあるベンチへ座った。
膝の上に乗せた両手は白くなるほど握りしめられている。
「なによ……二人とも綺麗事ばっかり」
ポツリと呟いて、目を閉じる。
貴族としての結婚観を持っているユリーア。
王族になるということをしっかり考えているレイーネ。
自分のあさはかな考えとは全然違っている。
自分よりはるかに年下の彼女たちが、目先の欲にかられている自分とはまったく違っていてもやもやとした気持ちが胸の中にざわめいている。
そのまま赤い夕陽を体に浴びて、空に一番星がまたたきだしてもリーゼロッテはベンチから立ち上がる気になれなかった。
「リジー!」
聞きなれた声に、のろのろと顔を上げるとローブをなびかせながらクレメンスが駆け寄ってきた。
「探したよ、部屋にいないと駄目じゃないか。花が咲いたら体が若返るんだから。それに体調も崩したばかりなのに」
心配そうにたしなめるクレメンスに、しかしリーゼロッテは俯いたままだ。
「リジー?」
「なによ、別にいいわよ来なくて」
突き放すように言い放ったが、クレメンスはリーゼロッテの横に腰を下ろすと、そっと顔を覗き込んできた。
「何かあった?」
「別に」
取り付く暇もないリーゼロッテの態度に、どうしたらいいかとクレメンスが逡巡していると。
「あんたはいいわよね。王子様付きがもう決定してるようなものだし」
自分でも思いがけない言葉がリーゼロッテの口から洩れた。
確かにあと二人の候補者に比べてクレメンスの実力は飛び抜けている。
ティモシーからの信頼も厚く、どう見ても選ばれるのはクレメンスだろう。
「リジーはどうしてそんなに王妃になりたいの?」
長めの髪をさらりと揺らしてクレメンスが問いかけると、一拍置いてリーゼロッテは重く口を開いた。
「伯爵家なんていつ没落するかわかんないわ、侯爵家だって……王族だったらよっぽどのことがない限りお金に困らない」
「リジーはお金が欲しいの?」
静かに問いかけられて、リーゼロッテはだってと唇を震わせた。
「お金がないだけでみじめなのよ」
散々つらい思いをした。
恥ずかしい思いだって、悔しい思いだって。
握っていた拳をますます、ギリリと力を入れると爪が刺さってピリッと小さな痛みが走る。
「友人も恋も何もいらない。あたしは二度とあんな生活はしたくない」
キッパリと言い切る。
クレメンスにとっては突飛な発言だったろう。
今生ではリーゼロッテは裕福な伯爵家に生まれて、貧乏なんかとは無縁だ。
顔を俯けたままのリーゼロッテの拳を骨ばった優美な手が包み込むと、その手を優しく開かせた。
のろのろと顔を上げると、クレメンスがそっと小さくなっているリーゼロッテの体を抱きしめる。
布がたっぷりのローブを着ているから、すっぽりとリーゼロッテは夜風から守られた。
「あたしのこと妄想癖って思うでしょ」
「思ってないよ、すごく変わってるとは思うけど」
その言葉にリーゼロッテの肩がぴくりと動いた。
「あんたみたいに全部持ってる奴になんてわかんない」
侯爵家で、魔法が使えて、王子殿下付き。
リーゼロッテだって、出来るなら自分で自分の地位を安泰に導きたい。
手に職を持って、未来に不安なんて持ちたくない。
けれど貴族の女にとって働くことは不可能だし、未来は結婚相手に委ねるしかない。
それがリーゼロッテには怖くて不安でどうしようもなかった。
目に涙がたまりそうなのを必死で我慢していると、そっと頭をゆるく撫でられた。
「僕は確かに侯爵家の嫡男で魔法宮の王子付き候補だ。でも、僕は何でも持ってるわけじゃないよ」
「うそつき、美人な婚約者候補までいるくせに」
「……そうだね」
「ッ」
「でも、本当に何でも持ってるわけじゃない」
キッパリと言い切ったクレメンスに、リーゼロッテはそっと顔を上げた。
そこには少し困ったように苦笑するクレメンスの顔がある。
「父にとって僕は疎ましいだけの存在だからね。いや、ウォルウィッシュ家全員にとってかな」
小さく肩をすくめるクレメンスに、リーゼロッテはそっとその頬へ小さくなった手を伸ばした。
その手の上に、クレメンスの手がゆっくりと重ねられる。
「どういうこと?そりゃ、薄情なところはあったけど、怖がってるからでしょ。王子付きになれば家の誇りになるのに……」
「父は王族付きには指名されなかったから、自分より魔力があってほとんど王子付きが約束されてる僕を憎んでる」
少し伏せたアメジストの瞳を、長めの前髪がさらりと隠した。
それが嫌で左手でクレメンスの前髪をかき上げようとすると、その手も右手同様にそっと大きな手に包まれた。
「母は結婚前に恋人がいたけれど政略結婚した。もう繋がってないみたいだけどね。ユリーアは種違いの義妹だ」
「じゃあお母さんとは」
「母は政略結婚した父も、その息子で魔力の強い僕の事も嫌悪して憎んでるよ。ユリーアとは接触しないように言われていたから、話したこともほとんどない」
クレメンスの言葉にリーゼロッテは絶句するしかなかった。
のほほんとした、ちょっと家庭に問題がある幼馴染。
そう思っていた彼は、家庭ではとても寂しい生活をしていたのだ。
「ごめん、無神経な事言った」
自分の癇癪が恥ずかしくて、リーゼロッテは眉間に皺を作って謝罪を口にした。
家族がいなかった前世は、本当を言えば寂しかった。
今生はリーゼロッテは家族にとても恵まれている。
少なくとも、家族の愛情には飢えていない。
しょんぼりと俯いてしまったリーゼロッテの顔を、頬に添えて上げさせると、クレメンスはしんなりと瞳を細めた。
「いいんだ、寂しいなんてとっくの昔に消え去った。リジーのおかげだよ」
くすりと笑ったクレメンスに。
「何それ」
思わずへにょりと力が抜けた。
それをクレメンスが楽しそうに見やる。
「ほんと、何よそれ。バカみたい」
自分の存在が少しだけでも幼馴染の慰めになったのなら、よかったのかもしれない。
そう思いながら、リーゼロッテは小さく胸に灯った嬉しさを誤魔化すように、バカみたいと何度も繰り返した。
そのまま二人が連れ立って夕食のために食堂に行くと、ティモシーが声をかけてきた。
食事は後回しにして、壁際の人気のないテーブルへとつく。
「ユリーア嬢とレイナ嬢にプレゼントは届いてなかった」
ティモシーの言葉に二人は目を丸くした。
「私だけ?何で?」
「わからないが」
チラリと胸のネックレスにティモシーの視線がピタリと定められる。
「これだけのものを手に入れるには、それ相応の地位と金が必要な筈だ」
ティモシーの言葉に、クレメンスは顎に拳を当てた。
伏目がちにした目元に長い睫毛が影を作る。
「どうしたの?」
「もしかしたら……」
「何よ」
じらさないでよとリーゼロッテは先を促すけれど。
「いや、確証がないから」
何でもないよ肩をすくめられてしまった。
結局、大した情報の交換はなく三人は食事を終わらせ寮への道を歩いていた。
今日はよく晴れていて、月がてっぺんに輝いている。
来月のティモシーの誕生日パーティーに婚約者を発表するのだけれど、あと二週間で戻れるだろうかとリーゼロッテは不安を胸によぎらせたときだ。
ドクンッ
「ぅ、あ」
心臓が大きく跳ねて、リーゼロッテは苦し気に息を吐いた。
「リジー!」
膝をついた小さな体のリーゼロッテに慌ててクレメンスが肩に手を添える。
「う、くぅ」
ドクンドクンと心臓が何度か大きく脈打ったあとに、それは収まった。
額に滲んだ脂汗をクレメンスがハンカチでそっと拭ってくれる。
「なんだったの」
はあ、と息をついたリーゼロッテは服がなんだか大きくなったような気がして手の平を見た。
すると袖口がブカブカになっている。
そこから除く白い腕にギクリと身をこわばらせた。
クレメンスの方を見ると、彼もリーゼロッテの腕を見て顔をこわばらせている。
「花が咲いてる……」
リーゼロッテの白く細い腕。
そこに浮かんでいた蕾のひとつが咲いていたのだ。
「これは……赤ん坊にまで戻るならまだしも、胎児にまでなってしまったら」
クレメンスが呆然と呟くと、ティモシーが言いにくそうに口を開いた。
「命にかかわるな」
サーッとリーゼロッテの顔から血の気が引いた。
今の今まで困ったなとは思っていたけれど、こんな切羽詰まった事態という実感がなかったのだ。
唇から震える声が零れ落ちた。
「私、しぬの?」
「そんなことない!」
ぐいと気が付けば目の前が暗くなり、黒いローブを着ているクレメンスに抱きしめられているのだと気づいた。
「絶対にネックレスを解明してみせる!絶対に死なせない!」
初めて聞いたクレメンスの悲鳴のような声に、リーゼロッテは思わず呆気にとられていた。
ここまで必死になってくれるとは思ってもみなかったからだ。
かすかに震えているクレメンスの顔は俯いているせいで、表情が見えない。
こんな様子を見てしまっては、なんだか逆に冷静になれた。
「期待してるわ」
震えるクレメンスの頭を、リーゼロッテの小さな手がよしよしと撫でていった。
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