野心家令嬢の幼馴染はオカン属性の過保護でした

やらぎはら響

文字の大きさ
29 / 31

29

しおりを挟む
 夕方、混む前にと思いリーゼロッテは食堂に向かっていた。
 クレメンスとは朝以来、顔を合わせていない。
 夜までに一度戻るということは、それ以外は籠るということだろう。
 夕食を持っていこうか考えたが、またジュリアと一緒にいるのを見るのは嫌だと思い首を振った。
 さっさと食べて、一人で寝よう。
 クレメンスとはどうしてか顔を合わせにくい。
自分らしくないと考えながら歩き、中庭の回廊に差し掛かると正面からユリーアが歩いてきた。

「あら、あなたは」
「こんにちは」

 リーゼロッテに気付いたユリーアにペコリと頭を下げる。
 子供には優しいのか、口元に小さくユリーアが笑みを浮かべた。

「前に会ったときより小さいのね」
「色々あって魔法で……」

 詳細は言えないのでしどろもどろに答えると「そう」とすぐにお人形の無表情に戻ってしまった。

「……あの」

 じっとユリーアを見つめてリーゼロッテは言いにくそうに口を開いた。

「クレメンスお兄ちゃんの、婚約者候補がいるっていつから?」

 そこでハッと我に返る。
 そんなことを聞いてどうするのだ。
 ユリーアは不思議そうに小首を傾げた。
 ぱちりと兄とはまったく違う、青い瞳を瞬かせる。
 長い金色のまつ毛が蝶々のようにひらめいた。

「あ、いや」
「八歳だったかしら」
「そんなに、前なんだ」

 自分と会った頃に婚約候補として名前が挙がっていたのかと思うと、何だか気持ちが萎れていくようだった。
 けれどユリーアの続いた言葉は。

「釣り書きは来てたけど、お兄様は興味を示さなかったし、婚約に関してはお父様に対してもかたくなに拒否をしていたようだと訊いたわ」

 意外な言葉だった。
 クレメンスが拒否していたなんて。
けれど確かにクレメンスは結構頻繁にリーゼロッテの家に来たり、一緒に出掛けたりしていた。
 釣り書きに興味を示したりしていれば、ただの幼馴染よりも婚約者候補に沢山会っていたはずだ。

「お兄様には幼馴染がいるそうで、その子と会うからと婚約は全部断っていたそうよ。お父様もお兄様の婚約には消極的だったようだし」
「それ、本当?」

 思わずリーゼロッテの声が震えた。

「メイドに聞いた話だから本当だと思うわ」

 だって幼馴染なんて、リーゼロッテしかいない筈だ。
 もしかしたらティモシーも幼馴染なのかもしれないが、クレメンスはティモシーと会った時はリーゼロッテがせがむから必ず話してくれた。
 つまり、そんなに小さい時からクレメンスはリーゼロッテを優先してくれていたことになる。
 その考えにいきつくと、何故か頬にカーッと血がのぼり出した。
 胸の鼓動がドクドクといって、心臓を口からこぼれ落としそうだ。

(なな、なに、どうしちゃったの私)

 自分の状態が常になく異常をきたしていることに、リーゼロッテはぐるぐると混乱し始めた。

「大丈夫?顔が赤いけれど」
「だ、だいじょうぶ」

 全然大丈夫じゃない。
 林檎のように頬を真っ赤にしたリーゼロッテをユリーアが心配そうに一歩近づく。
それに慌てて答えた瞬間。

「やだ、あの人また」
「え?」

 ユリーアが珍しく眉を顰めて回廊から出られる中庭の方へ目をやった。
 不思議そうに目線を追って見ると、木の陰からズールがその太い体をはみ出させながら、こちらを赤い顔で見ていた。

「あいつ」

 思わず唸ると、ユリーアもわずかに眉根を寄せている。

「知り合い?」
「ずっと小さい頃から手紙を送ってくるけれど、内容が少し気味が悪くて受け取らずに送り返してたのよ。最近は来ないから諦めたのかと思っていたけれど、いつも私を見ているの」

 嫌悪を露わにしたユリーアに、そういえばと思う。

「あのひと、あなたの絵を買ってたわ」
「ッ」

 リーゼロッテの言葉に、ユリーアが息を飲んだ。
 その表情には先ほどの嫌悪だけでなく恐怖も滲んでいる。
 それもそうだろう。
 深窓の令嬢がストーカーされているのだ。
 怖いに決まっている。
 リーゼロッテはふんと鼻を鳴らすと、大股でズールの方へと足を踏み出した。

「あ、ちょっと」

 ユリーアが慌てて追いかけてくる。
 リーゼロッテが近づいていくと、ズールはじりじりと後退し始めた。

「ちょっと!盗み見なんて最低よ!」
「何でこ、ここに!もう学園にいないと、おもっ、思ったのに」

 思わぬズールの言葉にリーゼロッテは片眉をひそめた。

「なにそれ」

 それではリーゼロッテに何かあったのを知っていると言っているようなものだ。

「まさかあんたがネックレスの犯人?」
「ネックレス?」

 思わず口をついた言葉にユリーアが不思議そうにしたけれど。

「う……うぅ」

ズールはあからさまに動揺して冷や汗を流し始めた。
視線を忙しなくまわしている。
なんてわかりやすい。

「そうなのね」

 子供相手にも関わらず、ズールはびくりと肩を跳ねさせる。

「ネックレスってどういうこと?」

 ユリーアが不審気に二人を交互に見やったので、リーゼロッテはネックレスを指差した。

「あたしはリーゼロッテよ!これのせいで小さくなっちゃったの。これのせいで死にそうなのよ!」

 リーゼロッテの大声に、ユリーアがまあっと両手を口に当てて驚く。
 そしてズールの方へと一歩踏み出した。
 その顔はいつものお人形さんのようでいて、しかしいつもより表情がわかりやすい。
 嫌悪、侮蔑、そういった感情だ。

「どういうことなの?」

 険しい眼差しをユリーアが向けると、ズールはあからさまに動揺しだした。

「僕じゃない!僕は言われたとおりにしただけだ!君のために!死ぬなんて聞いてない」
「はあっ?」

 ズールのまくし立てた言葉にリーゼロッテがキリキリと眉を寄せて。

「それどういうことよ」

 凄い剣幕で一歩詰め寄ると、ズールの足がジャリと後ずさった。

「僕は関係ない!それがユリーアさんのためになるって!」

動揺のままにズールが身を翻して中庭の奥へと走り出した。
 思わずリーゼロッテも走り出す。
 ぼてぼてと走るズールは鈍足だが、リーゼロッテも歩幅が小さいので追いつかない。
 思わず舌打ちが出たときだ。
 ぐいと横から右腕を引っ張られた。
 ユリーアかと思ったが、そこにいたのはジュリアだった。
 憤怒の形相は周囲のことなど考えていないようで。

「あんたさえいなければ!」

 リーゼロッテの腕を掴んでいない左手を掲げた。
 その手の先にゴウッと赤い炎が渦巻き現れる。
 怪我をさせるとかそんなレベルではなかった。

(呪いより先に死んじゃう!)

 ガッチリと掴まれた腕を振りほどこうとするが、爪がギリギリと逆に食い込んでくる。
 痛みに顔を顰めたとき。

「やめなさい!」

 がばりと何かに抱きしめられた。
 その人物はユリーアだ。
 ぐいっと力任せにジュリアから離され、炎からかばおうとさらにリーゼロッテの小さい体を抱きしめる。
 けれどジュリアはそれさえお構いなしに、炎をリーゼロッテへと襲わせた。
 赤い炎が飲み込むように向かってくるのに、ユリーアを巻き込むわけにはいかないと腕を振りほどこうとする。

「やめろおぉ!ユリーアさんになにする!」

 ズールの声が響いたかと思うと、大量の水が鋭利な刃物のように炎に襲い掛かった。
 リーゼロッテ達の頭上で、大量の水蒸気が炎と水の相殺によって溢れかえる。

「邪魔しないで!」

 再び炎を繰り出すジュリアに、リーゼロッテ達を挟んでズールが水で応戦する。
 そのどれかひとつでも当たれば致命傷になると、頭上で相殺し合う魔法にリーゼロッテはユリーアと姿勢を低くして蹲った。

「ま、待てよ!狙いはリーゼロッテだろ!こ、こいつなら、もうすぐ死ぬ!ユリーアさんが王妃になるために!」
「なんですって?」

 その言葉に、訝しげにジュリアは止まった。

「そいつはあと少しで、し、死ぬって聞いたんだ、ユリーアさんを巻き込むな!」
「勝手に殺すな!」

 ズールの言葉にリーゼロッテはがばりとユリーアの腕の中で顔を上げた。

「うるさい、うるさい、うるさい!」

 ヒステリックな声が中庭に響いた。
 それはズールではなく、ジュリアだった。

「そんなの関係ない!」

 拳を握りしめて叫んだジュリアの目は真っ赤に充血している。
 あれはもう、リーゼロッテに何かするまで止まらないと思い、ユリーアの腕の中で彼女の体を突っぱねる。

「離しなさい!あんたまで巻き込まれる!」
「駄目よ、子供をみすみす怪我させられない」
「あたしはあんたと同い年よ、子供じゃないから!」

 ユリーアを巻き込まないように離れようとリーゼロッテがさらに身じろいだところで。

「きゃあっ」

 ふいにユリーアの体が離れた。
 見れば、ズールがユリーアの体をリーゼロッテから乱暴に引き離したのだ。

「き、君は王妃というふさわしい地位に就くんだ!こんな奴に慈悲なんてかけなくていい」
「やめて離して」

 喉を引きつらせるユリーアを乱暴に抱き寄せるズールに、リーゼロッテがその腕を離させようと飛びついた。

「乱暴するな!変態!」
「うるさい!」

 バシンと頬を殴られてリーゼロッテの軽い体は、簡単に地面へと叩きつけられた。

「うくっ」

 殴られた右頬がジンジンする。
 口の中に血の味が広がっていくので、切れたのだろう。
(何やってるの私、にっくきライバルを助けて殴られるなんて)
 顔を顰めながらも口元を拭って立ち上がろうとしたとき、ぐいと前髪を細い指がわし掴んだ。

「うあっ」

 顔を無理矢理上げさせられた先には、ジュリアが口元を歪めている。
「あと少しなんて待ってられない!今すぐにこの手で消してやる。クレメンス様をずっとずっと好きだった!何にも心を動かさない物静かな彼が!孤高の存在であるクレメンス様が!婚約者にしてほしいって抱きしめたら拒絶されたわ。あんたの一大事に邪魔するなって!やっとこっちを向いてくれた、バラをくれたとおもったのに、勘違いざせてしまったなんて謝られたわ。どうして私を見てくれないの!あの人にふさわしい外見も魔力も持ってるのに!」

 まくしたてるジュリアに、誰の事だそれはと思った。
 リーゼロッテの知っているクレメンスは全然違う。
 おかしくなってリーゼロッテは口元に笑みを浮かべた。

「なによその顔」
「心を動かさない?孤高?目が節穴なんじゃない。あいつはすぐに母親みたいに注意してくるし、思いっきり過保護の過干渉よ。孤高の存在なんかじゃない」

 リーゼロッテの知っているクレメンスは、いつだってぼんやりしていたり、笑っていたり、たしなめてきたりと表情がよく変わった。

「そんなのクレメンス様じゃない!」

 その言葉にカチンときた。
 クレメンスは人間だ。
 色んな感情を持っている人間なのだと、リーゼロッテは皮肉気にニヤリと口元を歪めた。

「上っ面しかみてないのに、勝手に幻想いだくな」

 言った瞬間、前髪を掴まれた力が強くなった。
 けれど気にならなかった。
 自分の言葉で、リーゼロッテは頭の霧が晴れたように気づいた。
 自分もそうだと。
 ティモシーのことを王子という表面だけしかみていない。
 彼を、血の通った人間として見ていない。

(一緒じゃない、こんなやつらと)

 自分が幸せになるためだと他人を意のままにしようとして、自分以外の人間のことなんて考えたこともなかった。
 それが、こんなに醜くて最低な行為だったなんて。

(何よ何よ何よ、馬鹿みたい。いまさら、気づくなんて)

 呆然とジュリアを見上げるリーゼロッテに、ジュリアは彼女が諦めたのだと確信して優越を感じる笑みを浮かべた。

「あんたなんか消えればいい!」

 前髪を掴んでいない方の手で炎を呼び出し、ジュリアの手が振りかぶる。

(もう、また人に殺されるなんて、自業自得かもしれないけど、やな終わり方ね)

 ああ、でもそういえばクレメンスはずっと守ってくれたなと思う。
 素のリーゼロッテを見ても、大事にしてくれて。
(なんだ、母親なんかじゃ、ないじゃない)
 ユリーアの悲鳴が耳を打つ。

(今になって、あんたのこと好きと思うなんてね)

 ゆっくりとスローモーションに映るジュリアの動きに目を閉じれば、クレメンスの顔が浮かんだ。

(冗談じゃないわ)

 最期の最期で未練が出来るなんて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。 彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。 直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。 だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。 責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。 「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」 これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」  行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。  相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。  でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!  それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。  え、「何もしなくていい」?!  じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!    こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?  どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。  二人が歩み寄る日は、来るのか。  得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?  意外とお似合いなのかもしれません。笑

処理中です...