暖炉が好きなシンデレラ

ねね

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7 魔女はシンデレラを送り出す

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 魔女は、話の展開においてけぼりのシンデレラに構うことなく、再び杖を振り上げました。

 今度は光なしで、ボンッとシンデレラの服が変わります。

 服は真っ白なウェディングドレスになりました………。ベールなし、顔がまる出しの。

 ものすごく巨大な胸パットと、お尻を膨らませる下着が付いております。

(うげえええ!?)

 縁起は良いです、確かに。

 ただし。

(六歳のお子さまになんてもの着せるんじゃ~~!!!)

 あ然とするシンデレラに、魔女はさらなる追撃をかけました。

「おや、背が低いからすそを引き摺るねえ。仕方ない、靴のヒールを高くするか。」

(いやいやいや、ちょっと待ったー!!)

「あ、あのーっ、わわわ私、ハイヒールなんて履いたことないんですが!?」

「なんだい情けない。まあいい、私に任せておいで!」

 魔女がトンと杖を鳴らすと、シンデレラはぐいっと背が高くなり……いえそうではなくて、背が伸びてはいなくて……よく見ると、足の裏と床が、遠く離れておりました。

「ガラスの、台……?」

「ふんっ。よくごらん、台じゃなくて靴さ。ガラスの厚底ブーツだよ。」

 シンデレラはドレスを持ち上げて自分の足を見下ろしました。

 なんだか、タイツを履いた足が宙に浮いているようにしか見えませんけれども。足を動かせば固い感触があります。

 たしかに何か……長靴のような物を履いているようです。

「まだまだ小さいねえ。これじゃ人に埋もれてしまう。髪も高く結おうか。」

 突如、シンデレラの頭は、クリスマスツリーのように天井に向かってピーンと結い上げられました。

 なんという格好でしょうか。

「よし、完成!あんたはそれで、お城の舞踏会へ行っておいで。」

「舞踏会……そこで私は道化に転職ですか!?」

「バカ言うんじゃないよ。あんたはお嬢さまだろう。適当に良い人見つけておいで。連れがいれば、人生悪くないものさ。」

「はあ。」

 魔女の言っていることは、意外にも結構マトモでした。ただ、この魔女には、人間の服装のTPOという概念がないだけで……。

(なんかよくわからないけど、ご好意みたいだし。社会勉強と思って、舞踏会とやらを眺めてくるか。)

 もとよりシンデレラには、初対面の魔女に逆らう勇気などありません。

 それにどんな格好をしたところで、舞踏会には家族の外に知り合いもいないのです。きっとこの恥はかき捨てになるでしょう。

 シンデレラは早々に抵抗をあきらめ、流されることにしたのでした。

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