暖炉が好きなシンデレラ

８ 舞踏会の会場へ

　お城への移動手段として、魔女は台所にあったカボチャをくれました。

　もちろん魔法をかけてから。

　魔法のカボチャはシンデレラをてっぺんに乗せると、ツルを長く伸ばして走ります。

　それは泳ぐタコのような滑らかさで森を突っ切り丘を越え。

　しまいにはお城の高い壁をスルスルよじのぼり、あっけなく不法侵入を果たしてしまったのでした。

（あっちゃー……。）

☆　☆　☆

　ついに、舞踏会の会場にたどり着いてしまったシンデレラ。

　彼女はバルコニーのカーテンの影から、そっと会場の様子を伺いました。

　さて、会場に入って良いものでしょうか。

　シンデレラはあらためて自分の格好を見下ろします。

　まず白一色のウェディングドレスは存在感がありすぎです。そして夜会に子供がいるのも普通ではありません。

　さらに彼女は肌色が青白く、さめた金髪をしています。それがギョロ目の上に、ドレスの裾から足は見えない（ガラスの厚底なので）となりますと。

　まさに古城の悪鬼、ひとりハロウィーン状態なのでした。

（う～む、これは出て行くタイミングが必要かも。）

　誰か花火を打ち上げるとか、騒ぎをおこしてもらえませんかね？

　気分はすっかり会場に忍びこむ小鬼です。

　打つ手なし、チャンス待ちのシンデレラ。ここで、運はシンデレラに味方しました。

　チーン、ドーンの響きと共に、会場に現れたのはお城の道化たち。

　彼らは花や紙ふぶきを高くまき散らし、お客の視線を奪ってくれたのです！

（今だっっっ！！）

　シンデレラはバッと派手にカーテンの裏から飛びだして、両手を天にあげニマーッと笑いました。

　そして会場からの盛大な悲鳴を受けながら、ふんぞりかえって堂々と、ぐっちゃぐちゃな道化の行列の一番後ろに付いたのでした。