暖炉が好きなシンデレラ

１５ シンデレラの宿命

（あ、十二時になる。）

　シンデレラは今夜の時間切れを悟りました。

　魔女がシンデレラに掛けた魔法の効き目は夜中の十二時まで。その前に城を出るのが、魔女との約束なのです。

（あー。まだまだ抱っこしたりないよー。）

　シンデレラは、未練たらたらでした。

　自分も帰りたくないですし、王子さまを置いて帰るのも胸が痛みます。

　シンデレラの見たところ、ずっと一緒にいたいのは、きっとお互いさまでしょう。それなら離れたら苦しいじゃないですか。

（うーん、だけど。約束、したしなー。）

　シンデレラはしぶしぶ、本当にしぶしぶ、王子さまから体を離しました。

「今日も帰るの？」

「はい。もう時間なので。」

「わかった。送るよ。」

　………実は王子さまの方は、シンデレラが帰ることにさしたる問題は感じていなかったのです。

　彼はシンデレラを送って、きっちり家を確認するつもりでおりましたので。

☆　☆　☆

「ちょっ……速い！！」

　夜の森の中。シンデレラを載せたカボチャはあっさり街道を離れ、道なき道をツルで滑ります。

　それは茂みを越え、ときに樹冠へ舞い上がり、影のように音もなく闇の中をすっ飛んで行きました。

「なにあれ。既に馬車じゃないし。」

　ええ、馬は付いていません。それに馬じゃ追えないでしょうね。

　ちょっと相手が悪かったのですよ。カボチャは王子さまのことはあっさりスルーして、シンデレラだけを掴んで去ってしまいました。

　王子さまは暫くの間、カボチャが去った方角を眺めていました。

　そしてお城へ引き返し、舞踏会の会場ではなく、暗い書庫へと入って行ったのでした。