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19 真夜中を前に
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ぎゅうぎゅう。ぎゅうぎゅう。
(あー、やっぱり好き。)
王子さまを抱き締めると、たいへんよく落ち着きます。
シンデレラは、いつも考えないようにしてきたことを、やっと考えるつもりになりました。
(うーん。でもなー。この人は私をお嫁さんにはしてくれない、よなー。)
王子さまが優しいシンデレラは、六歳のお子さまです。
十六歳の、自分の給料から貯めたお金しか持参金がない、しがない女中さんではありません。
王子さまにはお姫さま。それくらい、シンデレラにも分かっているのですよ。
(まあ、形に拘らなければ……私でも、好きなだけ王子さまの側にいられる。愛人AとかBとかね……。
それで、いつか彼に“お嫁さん”が来たら、その時はひっそり去って行けば良い訳で。)
グサッ。
自分の考えに多大なるダメージを受けたシンデレラは、この案の限界を悟りました。
(あーーー……他の人の所に行っちゃう王子さまとか、無理……っっ!!)
すると、どうなりますかね?
(ええと。お別れするのは無理。お付き合いするのも無理。だって好きなんだもん。あれれ……?)
だいぶ意味がわかりませんねえ。
シンデレラはあっさり詰んでしまいました。そして時間いっぱい、結論も出せないまま、ひたすら王子さまに引っ付いていたのです。
☆ ☆ ☆
夜の十一時を過ぎたころ。
泥まみれの靴を履いた少年が、小走りで王子さまの近くにやって来ました。
王子さまはシンデレラを引っ付けたまま、目線で報告を促します。
「ええと…………うまく、行きました………。」
声に“そんなバカな”みたいな調子があるのは気のせいではありません。
お側仕えの少年だって、まさか土をフリフリしてカボチャを畑に誘い出せるとは思っていませんでした。
思っていなかったのに………なんと、誘い出せてしまったのです!
シンデレラのカボチャはのそーっと少年について行き、されるがまにお城の畑へ納まりました。
今ごろ、土でも食んでいることでしょう。
「ありがとう、よくやった。詳しいことは、また後でな。」
「………はい。」
少年は、頭を傾げながら去って行きました。
王子さまは引っ付いたシンデレラの顔を撫でます。
(もうすぐ、やっと、この小さな引っ付き虫の住みかが分かる。)
このとき彼は、それを疑っておりませんでした。
(あー、やっぱり好き。)
王子さまを抱き締めると、たいへんよく落ち着きます。
シンデレラは、いつも考えないようにしてきたことを、やっと考えるつもりになりました。
(うーん。でもなー。この人は私をお嫁さんにはしてくれない、よなー。)
王子さまが優しいシンデレラは、六歳のお子さまです。
十六歳の、自分の給料から貯めたお金しか持参金がない、しがない女中さんではありません。
王子さまにはお姫さま。それくらい、シンデレラにも分かっているのですよ。
(まあ、形に拘らなければ……私でも、好きなだけ王子さまの側にいられる。愛人AとかBとかね……。
それで、いつか彼に“お嫁さん”が来たら、その時はひっそり去って行けば良い訳で。)
グサッ。
自分の考えに多大なるダメージを受けたシンデレラは、この案の限界を悟りました。
(あーーー……他の人の所に行っちゃう王子さまとか、無理……っっ!!)
すると、どうなりますかね?
(ええと。お別れするのは無理。お付き合いするのも無理。だって好きなんだもん。あれれ……?)
だいぶ意味がわかりませんねえ。
シンデレラはあっさり詰んでしまいました。そして時間いっぱい、結論も出せないまま、ひたすら王子さまに引っ付いていたのです。
☆ ☆ ☆
夜の十一時を過ぎたころ。
泥まみれの靴を履いた少年が、小走りで王子さまの近くにやって来ました。
王子さまはシンデレラを引っ付けたまま、目線で報告を促します。
「ええと…………うまく、行きました………。」
声に“そんなバカな”みたいな調子があるのは気のせいではありません。
お側仕えの少年だって、まさか土をフリフリしてカボチャを畑に誘い出せるとは思っていませんでした。
思っていなかったのに………なんと、誘い出せてしまったのです!
シンデレラのカボチャはのそーっと少年について行き、されるがまにお城の畑へ納まりました。
今ごろ、土でも食んでいることでしょう。
「ありがとう、よくやった。詳しいことは、また後でな。」
「………はい。」
少年は、頭を傾げながら去って行きました。
王子さまは引っ付いたシンデレラの顔を撫でます。
(もうすぐ、やっと、この小さな引っ付き虫の住みかが分かる。)
このとき彼は、それを疑っておりませんでした。
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