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27 忘れ物
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「あー、片付いた。」
腰を伸ばして息をつくシンデレラ。
何が片付いたのかと言いますと、引っ越し先の部屋の掃除が済んだのです。
荷物はまだ箱の中。気付けば時刻はお昼を過ぎています。
(今日で全部荷をほどくのは、きついなー。
急がないやつは、もう明日かな。)
そう考えて箒を置いたところ。新居に最初のお客が訪れました。
コココココココココッコッコッッ。
………この、やたら気ぜわしいノック音は。偉い魔女のお出ましです。
☆ ☆ ☆
「あんたが元いた家から、餞別をもぎ取ってきてやったよ。」
そう言って、魔女は大きな袋を床に下ろしました。
一番に袋から転がり出たのはカボチャです。カボチャは蔓をにゅーっと伸ばすとシンデレラに葉を振ります。
「台所で新しいやつを貰って来たのさ。ここは庭がないから、腹が減ったら私のところに来させよう。普段は屋根に置いときな。」
「おおおっ!」
これはとっても嬉しいです。魔法のカボチャは素晴らしい足になるでしょう。
屋根の上の巨大カボチャはちと目立ちますが、まあそれも自然の景観……と、言えないこともない、ですしね。
「ありがとうございます!」
「礼には早いよ、贈り物はまだあるんだ。」
次に袋から頭を出したのは、ネズミが二匹。ネズミも袋を這い出すと、たちまち虎のサイズに変わりました。
「こっちは家の番になる。エサは自分で取るから放っといて良いよ。」
「おおおおっっ!」
よく分かりませんが、なんだか強そうです。ネズミも巨大になると違いますね。
最後に、魔女は袋を逆さに掴むと暖炉に向かって大きく振りました。
ええ、この部屋にはちゃんと暖炉があります。そして袋から出て暖炉に吸い込まれて行ったのは。
ほんの一掴みの、灰でした。
「これは………?」
「あんたのねぐらの灰だよ。枕が変わると寝づらい日もあるだろうと思ってね。」
「あ、地味に嬉しい。」
たいへん残念ながら、シンデレラは感動しました。
これは長年の愛着と申しますか。いや灰なんて毎日、新しくなっているモノなのですけどね。何と言うか、馴染んだものが側にあるとホッとするのです。
自分で持って来ても良かったのですが。引っ越しのバタバタの中で、灰を持って来ることまでは思い至りませんでした。
(あると、こんなに嬉しいのに。……魔女が気付いてくれて良かった……。)
危うく、忘れ物をするところでした。
腰を伸ばして息をつくシンデレラ。
何が片付いたのかと言いますと、引っ越し先の部屋の掃除が済んだのです。
荷物はまだ箱の中。気付けば時刻はお昼を過ぎています。
(今日で全部荷をほどくのは、きついなー。
急がないやつは、もう明日かな。)
そう考えて箒を置いたところ。新居に最初のお客が訪れました。
コココココココココッコッコッッ。
………この、やたら気ぜわしいノック音は。偉い魔女のお出ましです。
☆ ☆ ☆
「あんたが元いた家から、餞別をもぎ取ってきてやったよ。」
そう言って、魔女は大きな袋を床に下ろしました。
一番に袋から転がり出たのはカボチャです。カボチャは蔓をにゅーっと伸ばすとシンデレラに葉を振ります。
「台所で新しいやつを貰って来たのさ。ここは庭がないから、腹が減ったら私のところに来させよう。普段は屋根に置いときな。」
「おおおっ!」
これはとっても嬉しいです。魔法のカボチャは素晴らしい足になるでしょう。
屋根の上の巨大カボチャはちと目立ちますが、まあそれも自然の景観……と、言えないこともない、ですしね。
「ありがとうございます!」
「礼には早いよ、贈り物はまだあるんだ。」
次に袋から頭を出したのは、ネズミが二匹。ネズミも袋を這い出すと、たちまち虎のサイズに変わりました。
「こっちは家の番になる。エサは自分で取るから放っといて良いよ。」
「おおおおっっ!」
よく分かりませんが、なんだか強そうです。ネズミも巨大になると違いますね。
最後に、魔女は袋を逆さに掴むと暖炉に向かって大きく振りました。
ええ、この部屋にはちゃんと暖炉があります。そして袋から出て暖炉に吸い込まれて行ったのは。
ほんの一掴みの、灰でした。
「これは………?」
「あんたのねぐらの灰だよ。枕が変わると寝づらい日もあるだろうと思ってね。」
「あ、地味に嬉しい。」
たいへん残念ながら、シンデレラは感動しました。
これは長年の愛着と申しますか。いや灰なんて毎日、新しくなっているモノなのですけどね。何と言うか、馴染んだものが側にあるとホッとするのです。
自分で持って来ても良かったのですが。引っ越しのバタバタの中で、灰を持って来ることまでは思い至りませんでした。
(あると、こんなに嬉しいのに。……魔女が気付いてくれて良かった……。)
危うく、忘れ物をするところでした。
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