毒が効くまで長すぎる

ねね

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6 魔物の参戦

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 《もうダメだ、もたない。》

 《あと少し粘ってくれ!》

 《仕方ないな。そこどけ!俺が火を使う。》

 おっさんに吹っ飛ばされて地面に転がっていた少年が、あわてて脇に転がった。

 おっさんは鞭をふりふりズンズン前に進む。

 鞭の長さまで迫られたところで、ひょろ長い少年が何かを叫んだ。

 《燃えろ!》

 うおっ?野球ボールくらいの火の玉がたくさん、ひどいノーコンで飛んでくる!

 おいおい、茂みも燃えてるぞ。なに、自爆攻撃なの?

 うわ、やだな~。

 私は別に、火がついても燃えたりはしないんだけどさ。あのしょぼい火の玉に当たったりしたら、地味に落ち込んじゃうよ…。

 やれやれ、はた迷惑な少年だ。

 私はおっさんが出てきた岩の陰に逃げ込んだ。

 あ、先客がいる。
 おっさんの仲間だろうか。

 その暗がりには、20歳くらいの青年が1人いた。やや硬い表情で、腕組みして立っている。

 青年は、少しも血腥くない。

 筋肉太りしていない、健康そうな体つき。少し神経質ぽくて、でも険のない顔。

 これは、戦闘職の人間ではなさそうだ。

 ラッキー。
 殺伐としていない人間、見ーっけ!

 今生で初めて見る穏やかな雰囲気の若者に、私のテンションはぐんと上がった。

 向こうは私に気付いていない。私は青年の斜め上からいそいそと近づいていく。

 戦闘終了まで、ここで和ませて頂くのだ。
 これは可愛い。あ~和む。

 岩の向こうからは、おっさんの怒鳴り声が聞こえてくる。

 《火を止めろ!火事になるぞ!》 

 《うわ、来るな、来るな!》

 《聞こえてるのか?火を止めろこの野郎!》

 ヒュッ、ドッ。

 うん。見なくても解る。2人目が沈したかな。おっさん、強いね~。

 ところで、3人目の少年はさっきから何をしてるんだ?爆速の狼も、全然動いてないような。

 《あとはお前1人だ。大人しくしろ。》

 《……》

 ん?

 突然、空気の圧が高まった。
 岩の向こうでぶち上がる硬質な暗黒の気配。

 私はコレが何かをバッチリ知っている。
 闇の森の魔物がやる、ポピュラーな威嚇である。

 あ、ヤバい。連中が来るぞ。

 《バカな、今召喚した魔物を使うだと!?
  調教するまで、数日はかかるはずだ!》

 《俺は魔物を慣らすのが早いんだ!
  残念だったな。》

 和んでる場合じゃない。私はヒュッと岩から飛び出した。

 あちらではちょうど、爆速の狼の2匹がおっさんに飛びかかっていくところ。

 おっさんは鞭を振るうが、明らかに歩が悪い。というか勝負にならない。

 あっという間に鞭を持つ手を咬み千切られ、頭からバリバリ食われてしまった。

 カルシウム~。

 なるほど。召喚した魔物って、こういう風に使うのね。生物兵器として需要があると。
 
 うわ、勘弁して。
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