7 / 20
7 操り人形
しおりを挟む
時間がない。さてどうするか。
爆速の狼は鼻が効く。岩陰の青年にも気付いているだろう。
少年たちに命令されれば、彼を始末しに来てしまう。
この青年には和ませてもらったし、私としても本日7人目のスプラッタは遠慮したい。
どうしよう。どうすればいい?
焦って辺りを見回すと、首のない囚人の死体が目に入った。
ええい、アレだ、アレしかない!
私はすっ飛んで死体の中に飛び込んだ。
爆速の狼が5匹とも、首で私を追いかける。アテレコすると「ん?」って感じ。可愛い連中だ。
じゃあなくて。
悪いな。君らのおやつは、私がもらうよ。
死体の内側からガンガン気圧(?)をかけて、死んだ体を持ち上げる。
死体がひょいと持ち上がる。あ、地に足がついてない。
《なっ、何だ!?》
《どうした、レド!》
《気を付けろ!そこに何かいる!》
手ぇ動くかな?あ、空ぶった。
もう一度、うおっ危ない!
腕、千切れそう。つーか手枷が千切れた。
力み過ぎだ。力を抜いて。
そろーっと、自分が入った死体の手で、隣にある別の死体を持ち上げる。
はいオッケー。物が持てれば大丈夫。
最低限の練習、終了!さあいくぞ!
私は、首なし死体に入ったまま、ヒュッと空を飛んで岩陰にもどった。
《ぎゃあああああ!》
《うわあああああ!》
《し、死体が、死体が飛んだ!!!》
やかましい奴らだな。
青年は、物も言わずに私を見つめている。
は~い、びっくりしてるとこ悪いけど、もっとびっくりしてもらうからね~。
私は青年を抱え込み、まっすぐ空に飛び上がる。一気に50メートルくらい、上へ。
爆速の狼は、爆速だけど低空飛行なのだ。
せいぜい10メートルくらいの高さでしか飛んでいるのを見たことがないし、口から吐く熱線にだってリーチってものがある。
距離を取るのは、お手軽だけど有効な対策。
これでこの子は安全だ。
余裕を持って下を見ると、真っ青になって腰を抜かした3人の少年たちが見えた。
あいつら、いい顔だな。
ふふん、よ~く覚えておけ。
魔物で遊ぶのは、とっても危ないのだよ!
爆速の狼たちはこっちをまる無視で、おっさんの血だまりに集って肉をあさっている。
腕の中の青年が、はっと息を飲んだ。
《先生!そんな……。》
素朴な声である。呆然とした響きもある。
首なし死体に抱っこされ、その胸中で何を考えているのやら。
後で聞いて見よう。あ、私言葉わからないんだった。ショック~。
まあ、いいか。ともかく今は、さっさとここを離れるぞ。
風上へ、君が安全なところまで。
君がいるからスピードは出せないけれど、爆速の狼たちはきっと追って来ないだろう。
奴らに命令する立場の少年が、腰を抜かしてしまっているからね。
爆速の狼は鼻が効く。岩陰の青年にも気付いているだろう。
少年たちに命令されれば、彼を始末しに来てしまう。
この青年には和ませてもらったし、私としても本日7人目のスプラッタは遠慮したい。
どうしよう。どうすればいい?
焦って辺りを見回すと、首のない囚人の死体が目に入った。
ええい、アレだ、アレしかない!
私はすっ飛んで死体の中に飛び込んだ。
爆速の狼が5匹とも、首で私を追いかける。アテレコすると「ん?」って感じ。可愛い連中だ。
じゃあなくて。
悪いな。君らのおやつは、私がもらうよ。
死体の内側からガンガン気圧(?)をかけて、死んだ体を持ち上げる。
死体がひょいと持ち上がる。あ、地に足がついてない。
《なっ、何だ!?》
《どうした、レド!》
《気を付けろ!そこに何かいる!》
手ぇ動くかな?あ、空ぶった。
もう一度、うおっ危ない!
腕、千切れそう。つーか手枷が千切れた。
力み過ぎだ。力を抜いて。
そろーっと、自分が入った死体の手で、隣にある別の死体を持ち上げる。
はいオッケー。物が持てれば大丈夫。
最低限の練習、終了!さあいくぞ!
私は、首なし死体に入ったまま、ヒュッと空を飛んで岩陰にもどった。
《ぎゃあああああ!》
《うわあああああ!》
《し、死体が、死体が飛んだ!!!》
やかましい奴らだな。
青年は、物も言わずに私を見つめている。
は~い、びっくりしてるとこ悪いけど、もっとびっくりしてもらうからね~。
私は青年を抱え込み、まっすぐ空に飛び上がる。一気に50メートルくらい、上へ。
爆速の狼は、爆速だけど低空飛行なのだ。
せいぜい10メートルくらいの高さでしか飛んでいるのを見たことがないし、口から吐く熱線にだってリーチってものがある。
距離を取るのは、お手軽だけど有効な対策。
これでこの子は安全だ。
余裕を持って下を見ると、真っ青になって腰を抜かした3人の少年たちが見えた。
あいつら、いい顔だな。
ふふん、よ~く覚えておけ。
魔物で遊ぶのは、とっても危ないのだよ!
爆速の狼たちはこっちをまる無視で、おっさんの血だまりに集って肉をあさっている。
腕の中の青年が、はっと息を飲んだ。
《先生!そんな……。》
素朴な声である。呆然とした響きもある。
首なし死体に抱っこされ、その胸中で何を考えているのやら。
後で聞いて見よう。あ、私言葉わからないんだった。ショック~。
まあ、いいか。ともかく今は、さっさとここを離れるぞ。
風上へ、君が安全なところまで。
君がいるからスピードは出せないけれど、爆速の狼たちはきっと追って来ないだろう。
奴らに命令する立場の少年が、腰を抜かしてしまっているからね。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる