毒が効くまで長すぎる

ねね

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11 魔物の護衛

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 朝日が昇ってきた。

 岩山から見下ろすと、剥き出しの地面や点在する茂み、小さな村などが、輝く光を浴びている。

 それにしても、隠れるところがなさそうな土地だな。森とか谷とか洞窟とか、何も無い。

 魔物たちがお食事に来たら、皆さんどこに逃げるんだろう。

 いや、足で走って逃げるしかなさそうなんだけどさ…。これじゃあ、足が遅い人から食べられてるかもな。割と状況は深刻だ。

 横を見れば、サルマはまだ眠っている。

 野宿で、顔に日の光が当たっているのに。私という魔物が側にいるのに、まさかの熟睡である。

 図太いと言うか、隙だらけと言うか。
 君の危機感はどうなっているんだ?

 よし、放置していつ起きるか見てやろう。

 私は、朝ごはんの匂いがするお館の気配を探ったり、その辺の景色を眺めたりして時間を潰すことにした。

 ちなみにお館の朝ごはんには、ソーセージがあったと思う。匂いからして。

 やがて次第に日が高くなってきた頃、この岩山に向かってやって来る人間たちが現れた。

 物々しい男ばかり、10人程度の一団だ。

 また、男だよ。しかも随分むさ苦しい。

 連中は見た目で威嚇する気満々だ。
 全員、ごつい、でかい、顔が怖い。

 武装っぷりも非常にこれ見よがしである。重そうな盾にでかい斧、長い剣、棍棒。

 これは、歩いているだけで通報しても許されるレベルじゃないだろうか?

 絵ヅラのくどさに思わずげっそりしていると、背後からサルマの声がした。

 「あれは"赤熊"の連中だな。」

 「あ、おはようサルマ。」

 「おはよう。」

 ようやく起きたか。
 ははは、顔が寝ぼけてる。寝すぎ~。

 若い顔でそんな隙だらけの表情をされると、彼は図太いと言うより呑気なんだろうって気がするな。

 うん、守りたくなるタイプだよ。

 「朝ごはんにしようか。」

 サルマは小さな荷物から、素っ気ないパンを一つ取り出して食べた。

 半分、私にくれようとしたが、私は食事がいらないのだと伝えて断った。

 あー、それだけじゃお腹空くだろうに。

 夜のうちに食べ物を探しておけば良かった。まあ、お昼はお館で貰えるだろうし、なんとかなるか?

 食べながら、これからの話をする。

 「"赤熊"の奴らが来たら、どさくさに紛れて館に入ろう。呪語がわかる奴もいるだろうから、中に入ったら言葉には気をつけろよ。」

 「りょーかい。」

 「アズサは、ともかく魔物だとばれないようにして欲しい。もし俺たちのどちらかが襲われたら、俺を連れて逃げてくれ。」

 「わかった。」

 任務 : 正体を誤魔化す、サルマを守る、最悪逃げる。

 よし覚えた。
 これくらいならどうにかなる、よな?

 ふむ。魔術師とやらに何が出来るか知らないが、今の私は人間の女性の姿。

 人間の女をそこまで警戒する男は、そういない。私、職務質問とかされたことないし。

 警戒されなければ、それだけこちらに有利である。

 バレないように振る舞って、それでも万一トラブルになってしまったら、正体をバラしてでも隙を突き、サルマと逃げてしまえば良い。

 私の正体である青い霧、これは出オチが勝負の初見殺しな存在だ。人間は策を練れば、気体が相手でも戦えるだろう。

 ならば私がやることは、策を練られる前に相手を翻弄し、隙を作ること。

 例えば部屋じゅうに膨張して、片っ端からモノを変質させるとかさ。

 相手の体を変質させるのもアリだな。ちょっとエグいけれども、思いきり筋肉を退化させるくらいならやっても良いんじゃないか?

 うん、できる。どうにでもなりそうだ。

 任せろ、サルマ。
 私に戦闘経験はないけどね。

 熊でも鳩でも、君に手出しはさせないよ。

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