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12 仕切れない領主
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《国の調停者が殺されたー!?》
その男性は一声叫んだきり、口を開けたまま彫像になった。
周囲の男たちは何も言わないが、驚いているのは一目瞭然。皆さん、瞬きしないと目が乾きますよ~。
《はい。召喚獣をけしかけたのは、"白鳩"の当主の甥たちでした。
確認できた召喚獣は5匹。闇狼の成獣です。
こちらの手許に召喚獣がいない以上、対抗するのは不可能だったと思います。》
淡々と話すサルマ。
話し掛けている相手は、おそらく、領主だと思われる。身なりが良いし、良い椅子に座っているからね。
そう、男たち。
この部屋には、またもや男しかいない。
領主を始め身なりが良いのが3人、後は兵士が7~8人ってところ。
はあ、この世界に男女平等の発想はないな。男子修道院みたいな風景に心が折れそうだ。
私、まさかの紅一点。
思ったより悪目立ちするかも。
"赤熊"のご一行が到着した直後、私とサルマは、さもたった今来たかのような顔をしてお館へ入った。
お館は簡素な作りで、重厚な外観とは裏腹に、内部は年代物の風格に溢れている。
有り体に言うと、ボロい。壁は染みとヒビだらけ、床が落ちて草が生えた廊下もある。
人も多くない。あれかな、一時的に館を使えるようにはしたけれど、最低限しか手はかけなかったのかな。
今いる部屋は、壁に織物が掛けてあるので、隙間風はそれほど酷くない。いや、壁に小さな穴が空いているんだけどね…。
あ、領主の隣にいる人が復活した。
《このことは誰かに話したか?》
《いいえ。》
《目撃者は他には?》
《いないと思います。》
《そうか。
では、調停者が"白鳩"の者に殺されたことは誰にも言うな。和解の話が拗れてしまう。
魔物に殺されたことだけ皆に伝えよう。》
《わかりました。
あの、話し合いのことですが。私も聞かせて頂いて構いませんか?
せめて話し合いの内容についての報告を入れたいんです。》
《それは、構わないが。乱闘になる恐れがある。身の安全は保障できないぞ。》
《隅で大人しくしておきます。》
《そうか。気をつけろよ。》
《はい。》
んー?さっきから領主がしゃべってないけどいいのかなー?
おい、いつまで呆然としているんだ領主。
そこでサルマに促され、私はサルマと退室した。
ドアを閉めながら部屋の中を見ると、未だ表情が動かない領主を囲んで、男たちが話し込んでいる。
げ、この領主、ダメっぽい…。
あの表情は、実はあんまり物を考えてないぞ。
動かない、考えない、あとは"悪い思いつき"が加われば、迷惑上司に認定できる。
私の中でのご領主の評価は、今のところ迷惑上司の一歩手前ってところか。
あれ。いくら周りがフォローしてもさ、あの領主で熊さんや鳩さんに抑えが効くんだろうか?
うん。ム~~リ~~。
私は、歩きながら天井を仰いだ。
殺し合いになるかどうかは、もう"赤熊"と"白鳩"次第だな。お館のどこを壊して逃げるか、検討しておいた方がよさそうだ。
その男性は一声叫んだきり、口を開けたまま彫像になった。
周囲の男たちは何も言わないが、驚いているのは一目瞭然。皆さん、瞬きしないと目が乾きますよ~。
《はい。召喚獣をけしかけたのは、"白鳩"の当主の甥たちでした。
確認できた召喚獣は5匹。闇狼の成獣です。
こちらの手許に召喚獣がいない以上、対抗するのは不可能だったと思います。》
淡々と話すサルマ。
話し掛けている相手は、おそらく、領主だと思われる。身なりが良いし、良い椅子に座っているからね。
そう、男たち。
この部屋には、またもや男しかいない。
領主を始め身なりが良いのが3人、後は兵士が7~8人ってところ。
はあ、この世界に男女平等の発想はないな。男子修道院みたいな風景に心が折れそうだ。
私、まさかの紅一点。
思ったより悪目立ちするかも。
"赤熊"のご一行が到着した直後、私とサルマは、さもたった今来たかのような顔をしてお館へ入った。
お館は簡素な作りで、重厚な外観とは裏腹に、内部は年代物の風格に溢れている。
有り体に言うと、ボロい。壁は染みとヒビだらけ、床が落ちて草が生えた廊下もある。
人も多くない。あれかな、一時的に館を使えるようにはしたけれど、最低限しか手はかけなかったのかな。
今いる部屋は、壁に織物が掛けてあるので、隙間風はそれほど酷くない。いや、壁に小さな穴が空いているんだけどね…。
あ、領主の隣にいる人が復活した。
《このことは誰かに話したか?》
《いいえ。》
《目撃者は他には?》
《いないと思います。》
《そうか。
では、調停者が"白鳩"の者に殺されたことは誰にも言うな。和解の話が拗れてしまう。
魔物に殺されたことだけ皆に伝えよう。》
《わかりました。
あの、話し合いのことですが。私も聞かせて頂いて構いませんか?
せめて話し合いの内容についての報告を入れたいんです。》
《それは、構わないが。乱闘になる恐れがある。身の安全は保障できないぞ。》
《隅で大人しくしておきます。》
《そうか。気をつけろよ。》
《はい。》
んー?さっきから領主がしゃべってないけどいいのかなー?
おい、いつまで呆然としているんだ領主。
そこでサルマに促され、私はサルマと退室した。
ドアを閉めながら部屋の中を見ると、未だ表情が動かない領主を囲んで、男たちが話し込んでいる。
げ、この領主、ダメっぽい…。
あの表情は、実はあんまり物を考えてないぞ。
動かない、考えない、あとは"悪い思いつき"が加われば、迷惑上司に認定できる。
私の中でのご領主の評価は、今のところ迷惑上司の一歩手前ってところか。
あれ。いくら周りがフォローしてもさ、あの領主で熊さんや鳩さんに抑えが効くんだろうか?
うん。ム~~リ~~。
私は、歩きながら天井を仰いだ。
殺し合いになるかどうかは、もう"赤熊"と"白鳩"次第だな。お館のどこを壊して逃げるか、検討しておいた方がよさそうだ。
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