33 / 107
饅頭の下には小判がぎっしりです。
しおりを挟む冥界から戻ったヘルメスの話を聞いたアポロンは、面白そうに笑った。
「 もしかして、冥府に春が来たのか? 」
「 違いますよアポロン様。だってハデス様は、お会いにもなっていない様ですよ。会う必要は無いって言ってるそうです。」
「えーー?本当かなぁ
それで済むのかなあ、疑問?疑惑?とにかく信じられない。
冥界の春が来る方に僕は賭けるね。
真面目なヘルメス君はラブは無いと見るかい?
初めはそれは偶然だったのかもしれない。けど、運命は必然なんだろう?
『会うものは必ず出会う!』ってババ様の『予言じゃ~』だものな。
『出逢った瞬間からフォーリンラブじゃな』って言ってたんだろう?
そんな長いこと同じ冥府宮にいながら出会わない訳がないよね?お似合いそうだし。力関係は問題ないんじゃないか?
あーー、でもこれは困るよね。 」
これと言ってアポロンは親指を下に示して地上を指さした。
そう、コレー喪失の冬とか名付けられた地上の季節は もうしばらく続いていた。
ただ、ほうれん草然り冬でも何とか飢えずに済ませれる程度にはデーメテールも頑張ってくれている様で持ち堪えてはいた。
人々も工夫して頑張ってるんだな。
( あれもこれも含めて、コレーは、やっぱり長くあそこに置いておくべきじゃないな )
ヘルメスは冥界から帰って何度目かの溜息を付いた。
「 ところで、アポロン様
「 ところで、ヘルメス君 お前いつまでその敬語で話すの?もう誰もいないよ。普通に話して 」
苦笑いしてヘルメスが口調を元に戻す。
「 こういう事は、まず側近が大事なんですよ。いい加減慣れてくれよ。アポロンに、次期天界の王になってもらいたいんだ。
皆に舐められてるようでは困るんだ。
もう戦も無いし、アポロンの力や知恵を見せつける場面がなかなか無いんだ。
今回の気候変動は、コレー様喪失の冬、又はデーメテール様のお隠れ、とか言われてる。これはある意味チャンスなんだ。この災害を解決したのがアポロンだったって実績が欲しいんだ。
大体、力ある女神はもうほぼゼウス様の手がついてる。後はニンフ達や人間の王の娘だね、姫君をたくさん娶らないと。
頑張ってくれよアポロン。」
「 そう、葉っぱかけられるとうんざりするもんだよヘルメス君~。
そういう権力に関係しない所で恋をしたくなるのが男って者だろ?」
「 お前、いい加減にしろよ!こっちは、あちこち調整するのに大変なんだ。
お前だけじゃ無いんだからな。好き勝手するなよ。」
「 あぁ 親父殿ねー。あれは異常だな。
やっぱり神々の中の神って、一番エライ?神って、ああでないと。」
「 本気で言ってるのか?
わかってるんだろ?どうしてこんな風にしてるのかを。
あのおばさんや、鬼嫁達みたいな事言うなよ。
全部この世界の安定の為なんだから。
ゼウス様も好きで
してる訳では、、
してる訳は、、
ないのはず、
ないのか?
少しぐらい好きかも?
やっぱり少しは好きかも? 」
「 ハーーーー 」
「 はーーーー 」
二人して溜息ついた。
アポロンは考える。
何だろう。庇っていいのか悪いのか?
でも確実にその血は自身に入ってる訳で、何を言おうが自身達も同じ立場として次に立つ事になる。
「 お前は僕にそうなれって言ってるんだよ?」
「 それは、アポロンならこの世界をめちゃくちゃにはしないし。
それに何よりアポロンが誰かに好きになった人を取られたりする事が無いようにと思って。
もちろん実力もないのに後押しする様な事はしない。
充分に実力もある。母神の血筋の事も含めて皆を納得させられる。
いつかは、あのゼウス様も譲る時が来るだろう。
その時にあの世界の王の呪いを繰り返さない為にも、ゼウス様が示したやり方で譲位して欲しいと思って、いや切望しているよ。」
力説してるが、ますますヘルメスに熱が入る。
「 何度、父王殺しで世代交代すればいいんだ。それは予言や呪いじゃなくて、ただのバカのやり方だ。俺はバカは嫌いだ。終わらせるぞ、そのくだらない呪いは。」
( しまった、まただ。クソ!
くだらない呪いって言ってしまい、あんなにケイロンとミノスに本気で怒られたのに。)
唇をグッと噛んでヘルメスが黙った。
「 あ!そう言えば、コレーの世話役にケイロンが付いてたよ。言うの忘れてた。」
「 へぇー、ケイロンが?
それは安心だねー。やっぱり大事にして貰ってるんだ。
ははは、ヘルメスが追い出される訳だね。
コレー、帰ってくるかな?
必ず帰すってか。
ヘルメス、君 またお迎えまでに様子を見てきてよ。」
「 あぁ、もちろんそのつもりだよ」
と答えたヘルメスに向かってアポロンが、何となく呟く。
「 これってさ。」
うん?
「 もしかして、全部計算?
僕が天界を継いだ時に、幼い頃から遊んだコレーや、一緒に育ったケイロンが冥界で要職に就いてる。下手したらコレーは冥界の王の后なんてしてるかも。
これって十分に太いパイプがあるって事だよね?僕にとっては凄い良いタイミングだよね。
もしかして、仕掛けたの? だれ?」
「 まさか~」と、アポロンは笑い飛ばすが、
ヘルメスは横で考え込んでいた。
ヘルメスは昔、ミノスから聞いた どこかの東の国の話しというのを思いだしていた。
「 越後屋、おぬしも悪よのぉ 」
「 いえいえ、お代官様ほどでは 」
ヌヒヒヒヒヒ
グヒヒヒヒヒ
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる