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私が唯一の妻でした。
しおりを挟む結界を越える。界を渡る。
ここの結界は透明で柔らかい壁の様だった。手を入れてみるが入らない。
柔らかいが、やんわりと抵抗があり押し返される。水が入ったボールの様に最初は入るけど、ある程度でそれ以上は押せないって感じだった。次は透明な壁に向かって、力を放ってみた。
しかし、壁は力を吸収するばかりで何も変わらない。ウーン🤔。片手で無くてもっと力を込める様に両手で試してみるよう。万が一、花の力が発動してしまっては大変だと思って、鉢植えをついて来てくれた人に預ける。
すると、
「たぶん、その壁はいくら力を放っても壊れはしないでしょう。結界のその壁は、通り抜ける様にご自身に防御の膜を張る方が良いと思いますよ。」
って教えてくれた。
きっと、この方の立場なら本当はそれを教えてはいけないのだろう。
「ありがとうございます。私はコレーと言います。豊穣の女神デーメテールの娘で、私も神殿で手伝いをしています。壁の向こうですが、もしも、私で力になれる事があれば教えてくださいね。お名前をお聞きしてはいけないので、貴方の事がわかる何か教えて頂けないですか?」
そう言うと、しばらく考えてから
「私は アスカラポスです。ただの庭師なので、もう二度と会う事はないでしょう」
「そうかも知れません。だけど、運命は何があるかわからないですからね!会いたいと思い続けていると、きっとずっとずっとずーと先でも会えますよ!私はそう信じます」
「コレー様は、何か、覚えているんですか?」
「反対に何を覚えていて何を忘れていると、聞かれているのかわかりません。
ただ いま胸にあるのが『カエラネバ』と、とても『愛おしい何か』夢があった様な気がしてます。
ですが、目覚めてからずっと、早く 家に帰って母に会わなければ大変な事になると何度も頭の中で繰り返されてます。だから… 今は‥それ以外は無理でも考えないようにしてます。」
と、自分の心を話せた。
では、力を自分の身体中に張り巡らせる感じで流し始める。
思ってた以上に、力がみなぎり溢れてきた。こんなに私、力が発動できたかしら?体が変わってしまってると感じる。この髪や胸だけじゃなくて他にも変わったところがあったんだ。そう思ったけど、細かい事は今は気にしたらダメ!とにかく先に進まないと。
そうして、もっともっと力を身体に溢れて張り巡らせる。そしてまた手を結界の壁に入れると、今度はスッと中まで手が通り抜けた。
行けそうだわ。
「アスカラポスさん、何とか進めそうです。ありがとうございます。」
そうやって預けていた花を受け取った。
「この花も含めてもう一度、力を張り巡らせてください。それで、その花も枯れないはずです。その壁を越えると、見えない様になってますが、お迎えの方が待っています。
それと、さっきも言いましたが、くれぐれも後ろを振り向いてはいけませんよ。
この花をじっと見つめたまま、ただ前に進んでくださいね。もしも結界の中で前なのかわからなくなっても、花に従えば大丈夫ですから。」
「はい。この子に教えてもらいますね」
そう言って、鉢植えを持ってもう一度、力を張りめぐらてる。
「では、ありがとうございます。またいつか!」
「はい。お気をつけて!See you againですね」
ゆっくりと、花を両手に持ち前に進んでいく。大丈夫。少し水の中を歩いている様にふわふわするが辛い事もなく進めている。
言われた通りにじっと花を見つめていると、可愛い白い花がいつもの様にお話してくれる。そしてこの子が見た物を見せてくれる。
きっと、同じ仲間達とお庭で咲いてる様子を映すか、野原の様な風景を見せてくれると思ってた。
だけど、この子が目一杯見せてくれた映像にはすごいイケメンがこの子を見つめてる様子だった。優しい目もとに、すこーしだけ口角が上がりかけている。微笑んでると言うには少し笑顔が足りないようだが、何より整った顔から目が離せない。
こ、こ、好みだわ。どストライクってこの事なんだわ。見つめられてドキドキしたのね?私も、この子の気持ち凄くわかる。
え?なんて?なんて言ってるの?
声が小さすぎて、よく聞こえない。もう一度その人を見せて、声を聞かせて!と、鉢植えを持ち上げて顔を寄せた。思わず立ち止まってしまってる。
『愛しい*******、唯一の花嫁よ』
あーーーーーーわわわわわわわわ!
そうだ!そうだわ!そうだったわ!
どうして!どうして忘れてたのかしら?いやいや、そんな事言ってる場合じゃないから。
私、覚醒して、とんでもない遠くまで飛び出して、助けてもらった時に、
この映像の方が言ったわ。
私の事を、
『我の唯一だ』
って、宣誓していた。
あれは、私を混沌の集合体から助ける為に?そうだ。
なのに、この人は私を手放そうとしている???追い出そうとしている?
なぜ?
私がこの人の元から去れば、唯一はどうなるの?
また新しい『唯一』が選ばれるの?
いや、そんな約束では無さそうだったわ。
だって、定めか?って聞かれてなかった?
待って
じゃあ、二度と花嫁は無いの?
嘘よ、でも。
もしかして『唯一』って文字通り一度だけ?
私………
頭の中で激しく響く声、
『カエラネバ』『カエサネバ』
私、どうしたらいいの。
でも、今 帰ってしまえば、二度とこの映像の方は花嫁がいないの?
あぁ、見えているのに、この方の名前の記憶がない。どうしてもどうしても名前がわからない。
こんな大事なこと、どうして忘れてしまっていたのか?
この花の映像がきっかけとなって、私の中で記憶の底が少し揺らめいている。
混沌の集合体は、カオスと言う遥か古代の神の元素であり、最終船だった。
そこに触れた時の忘れていた時間が隙間からよみがえる。
『 そうだ!俺の唯一だ。返してくれ』
永遠の時を定めの唯一か?
『あぁ 唯一の****ー*だ』
どうしたら、どうしたら、どうしたらいいの?
私。
行けないわ。
帰れない。
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