冥界の愛

文字の大きさ
73 / 107

私が唯一の妻でした。

しおりを挟む

結界を越える。界を渡る。
 
ここの結界は透明で柔らかい壁の様だった。手を入れてみるが入らない。
 柔らかいが、やんわりと抵抗があり押し返される。水が入ったボールの様に最初は入るけど、ある程度でそれ以上は押せないって感じだった。次は透明な壁に向かって、力を放ってみた。
 しかし、壁は力を吸収するばかりで何も変わらない。ウーン🤔。片手で無くてもっと力を込める様に両手で試してみるよう。万が一、花の力が発動してしまっては大変だと思って、鉢植えをついて来てくれた人に預ける。

すると、
 「たぶん、その壁はいくら力を放っても壊れはしないでしょう。結界のその壁は、通り抜ける様にご自身に防御の膜を張る方が良いと思いますよ。」
って教えてくれた。
 
 きっと、この方の立場なら本当はそれを教えてはいけないのだろう。

「ありがとうございます。私はコレーと言います。豊穣の女神デーメテールの娘で、私も神殿で手伝いをしています。壁の向こうですが、もしも、私で力になれる事があれば教えてくださいね。お名前をお聞きしてはいけないので、貴方の事がわかる何か教えて頂けないですか?」

そう言うと、しばらく考えてから

「私は アスカラポスです。ただの庭師なので、もう二度と会う事はないでしょう」


「そうかも知れません。だけど、運命は何があるかわからないですからね!会いたいと思い続けていると、きっとずっとずっとずーと先でも会えますよ!私はそう信じます」


「コレー様は、何か、覚えているんですか?」

「反対に何を覚えていて何を忘れていると、聞かれているのかわかりません。
ただ いま胸にあるのが『カエラネバ』と、とても『愛おしい何か』夢があった様な気がしてます。
ですが、目覚めてからずっと、早く 家に帰って母に会わなければ大変な事になると何度も頭の中で繰り返されてます。だから… 今は‥それ以外は無理でも考えないようにしてます。」
と、自分の心を話せた。



 では、力を自分の身体中に張り巡らせる感じで流し始める。
思ってた以上に、力がみなぎり溢れてきた。こんなに私、力が発動できたかしら?体が変わってしまってると感じる。この髪や胸だけじゃなくて他にも変わったところがあったんだ。そう思ったけど、細かい事は今は気にしたらダメ!とにかく先に進まないと。
 そうして、もっともっと力を身体に溢れて張り巡らせる。そしてまた手を結界の壁に入れると、今度はスッと中まで手が通り抜けた。
 
 行けそうだわ。

 「アスカラポスさん、何とか進めそうです。ありがとうございます。」

 そうやって預けていた花を受け取った。

「この花も含めてもう一度、力を張り巡らせてください。それで、その花も枯れないはずです。その壁を越えると、見えない様になってますが、お迎えの方が待っています。
 それと、さっきも言いましたが、くれぐれも後ろを振り向いてはいけませんよ。
 この花をじっと見つめたまま、ただ前に進んでくださいね。もしも結界の中で前なのかわからなくなっても、花に従えば大丈夫ですから。」

「はい。この子に教えてもらいますね」

そう言って、鉢植えを持ってもう一度、力を張りめぐらてる。

「では、ありがとうございます。またいつか!」

「はい。お気をつけて!See you againですね」



 
 ゆっくりと、花を両手に持ち前に進んでいく。大丈夫。少し水の中を歩いている様にふわふわするが辛い事もなく進めている。

 言われた通りにじっと花を見つめていると、可愛い白い花がいつもの様にお話してくれる。そしてこの子が見た物を見せてくれる。



 きっと、同じ仲間達とお庭で咲いてる様子を映すか、野原の様な風景を見せてくれると思ってた。

 だけど、この子が目一杯見せてくれた映像にはすごいイケメンがこの子を見つめてる様子だった。優しい目もとに、すこーしだけ口角が上がりかけている。微笑んでると言うには少し笑顔が足りないようだが、何より整った顔から目が離せない。
 こ、こ、好みだわ。どストライクってこの事なんだわ。見つめられてドキドキしたのね?私も、この子の気持ち凄くわかる。

 え?なんて?なんて言ってるの?
 声が小さすぎて、よく聞こえない。もう一度その人を見せて、声を聞かせて!と、鉢植えを持ち上げて顔を寄せた。思わず立ち止まってしまってる。






 『愛しい*******、唯一の花嫁よ』








 あーーーーーーわわわわわわわわ!


そうだ!そうだわ!そうだったわ!

どうして!どうして忘れてたのかしら?いやいや、そんな事言ってる場合じゃないから。


 私、覚醒して、とんでもない遠くまで飛び出して、助けてもらった時に、

 この映像の方が言ったわ。
 私の事を、



『我の唯一だ』


って、宣誓していた。

あれは、私を混沌の集合体から助ける為に?そうだ。

なのに、この人は私を手放そうとしている???追い出そうとしている?


なぜ?


私がこの人の元から去れば、唯一はどうなるの?

また新しい『唯一』が選ばれるの?
いや、そんな約束では無さそうだったわ。

だって、定めか?って聞かれてなかった?

待って

じゃあ、二度と花嫁は無いの?
嘘よ、でも。

もしかして『唯一』って文字通り一度だけ?

私………

頭の中で激しく響く声、

『カエラネバ』『カエサネバ』


私、どうしたらいいの。

でも、今 帰ってしまえば、二度とこの映像の方は花嫁がいないの?


あぁ、見えているのに、この方の名前の記憶がない。どうしてもどうしても名前がわからない。


 こんな大事なこと、どうして忘れてしまっていたのか?

この花の映像がきっかけとなって、私の中で記憶の底が少し揺らめいている。




 混沌の集合体は、カオスと言う遥か古代の神の元素であり、最終船だった。

そこに触れた時の忘れていた時間が隙間からよみがえる。

 『 そうだ!俺の唯一だ。返してくれ』


  



 『あぁ 唯一の****ー*だ』



 どうしたら、どうしたら、どうしたらいいの? 
 私。

 行けないわ。



 帰れない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。

クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。 3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。 ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。 「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

落ちこぼれ村娘、拾った王子に溺愛される。

いっぺいちゃん
恋愛
辺境の村で育った元気娘 ミレイ。 ある日、森で倒れていた金髪の青年を助けるが、 実は彼は国一の人気者 完璧王子レオン だった。 だがレオンは外に出ると人格がゆるみ、 王宮で見せる完璧さは作ったキャラだった。 ミレイにだけ本音を見せるようになり、 彼は彼女に依存気味に溺愛してくる。 しかしレオンの完璧さには、 王宫の闇に関わる秘密があって—— ミレイはレオンの仮面を剥がしながら、 彼を救う本当の王子に導いていく。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。 ※この作品は「小説家になろう」でも同時投稿しています。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

処理中です...