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第一章 中核都市デン・ヘルダー
第十六話 蜥蜴人族長の娘
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夕食時になり、ジカイラとヒナ、ケニーとルナは宿屋に戻って来る。
五人で食卓を囲んで夕食を取りながら、互いの探索結果を話す。
ジカイラが口を開く。
「オレ達は奴隷商人、ケニー達は麻薬商人を見つけたか」
ケニーも意見を言う。
「あいつら、堂々と違法な事やってる。ラインさんに取り締まって貰おう!」
ジカイラがケニーを諭す。
「だが、どちらも本命じゃない。小物だ。本命は蜥蜴人の族長の娘の救出と、秘密警察の存在の確認だ」
ティナが口を開く。
「そうだったわね。まず、族長の娘さんを助けないと」
ヒナが尋ねる。
「どうするつもり?」
ジカイラが答える。
「昼間の探索で怪しい倉庫を見つけた。内側から窓が全て塞がれている。夕食後、オレとケニーで探ってこようと思う」
ルナが尋ねる。
「え? これから行くんですか? 外は真っ暗ですよ??」
ジカイラが苦笑いしながら答える。
「悪党が活動し始めるのは、夜、暗くなってからだ。まさに、これからの時間なのさ」
ジカイラが続ける。
「ウチの綺麗どころ三人は、宿で留守番していてくれ。それと、夜の港には、決して近寄るな」
ティナが尋ねる。
「どうして?」
ジカイラが答える。
「海賊まがいの武装商人が女を誘拐して売り飛ばそうとするからな」
ルナが呟く。
「・・・なんか、夜は怖いところなんですね」
ヒナが俯きながら話す。
「・・・此処では、この街では、女は『商品』なのよ」
ヒナの脳裏に昼間、倉庫で見た光景が蘇る。
ヒナは、以前、ラインハルトやジカイラが助けてくれなければ、自分も犯されていただろうと、自分と倉庫で犯されていた女の子の姿が重なり、全身に悪寒が走る。
ジカイラが暗くなった場の空気を明るくしようと口調を変える。
「ま、三人で宿屋に固まっていれば、並の傭兵なら襲ってきても『返り討ち』にできるだろ」
ティナも明るく答える。
「ジカさん、大丈夫よ。心配しないで」
夕食を終えたジカイラとケニーが席を立つ。
ジカイラがヒナに話し掛ける。
「それじゃあ、サクッと探索してくる。後を頼むぞ」
「気をつけて」
ジカイラとケニーは、宿屋から夜の倉庫街に向かって行った。
ジカイラとケニーは、夜の帳の降りた真っ暗な港沿いの倉庫街を歩く。
昼間の喧騒とは裏腹に、夜の倉庫街は表通りでさえ、稀に歩いている者が居る程度で、ほとんど人の気配がしなかった。
二人は裏通りに入る。
裏通りの寂れた雰囲気は、夜の闇によって不気味さが増していた。
寂れた倉庫街の一角に、全ての窓を内側から板を貼り付けて塞いである倉庫があった。
ジカイラがケニーに耳打ちする。
「あった。此処だ」
目的の倉庫は、全ての窓を内側から板を貼り付けて塞いであったが、窓を塞いでいる板の隙間から建物の中の光が漏れていた。
ケニーがジカイラに答える。
「隙間から光が漏れてる。誰か中に居るみたいだね」
「裏へ回ろう」
二人は、倉庫の裏口へ回る。
「天窓から中の様子を探ってみるよ」
ケニーはそう言うと、音も無く雨樋を登って倉庫の屋根の上がり、天窓から倉庫の中の様子を窺う。
中では、三人の男が倉庫の入り口付近に集まって話し込んでいるようだった。
(・・・三人か)
ケニーは、再び雨樋を伝って倉庫の天井から路地へ降りると、ジカイラに中の様子を伝える。
「中は三人だね」
「そうか。裏口の鍵を開けてくれ。此処から中に入ろう」
「了解」
ケニーは裏口の鍵を開ける。
「開いたよ」
「よし」
二人は、こっそりと倉庫の中に忍び込むと、物陰から話している男達の様子を探る。
三人の男達の会話の内容が二人に聞こえてくる。
「いつまで、此処でこうしているんだ?」
「上から指示があるまで、此処に居るしか無い」
「クソッ。トカゲ女なんて、サッサと殺っちまえば良いんだよ!!」
「手を出すな! 大切な人質だ」
「判ってるよ」
ジカイラがケニーに耳打ちする。
「・・・当たりだな」
「うん」
「仕掛けるぞ。殺すなよ?」
「判った」
ジカイラとケニーは息を合わせて物陰から出ると、三人の男達に襲い掛かる。
ケニーは音も無く一人の男の背後に忍び寄ると、ショートソードの柄で男の後頭部を強打する。
「ガッ!?」
男は一言だけ、そう漏らすと気絶する。
ジカイラは、男の一人に駆け寄ると、斧槍を大振りする。
斧槍の背が男の側頭部を捉え、鈍い音と共に男が倒れる。
残った一人の男がジカイラとケニーに驚く。
「なんだぁ!? お前ら??」
ジカイラは身を翻すと、斧槍の柄で男の鳩尾を突く。
「カハッ!!」
男は、体の中の空気を絞り出すような嗚咽と共に、その場に蹲る。
ジカイラは、蹲る男の髪を掴み、問い質す。
「おい! 『トカゲ女』ってのは、何処に居るんだ?」
男はジカイラを睨め上げて憎まれ口を叩く。
「グゥウウ・・・。お前ら、こんな事して、タダで済むと思うなよ!?」
ジカイラは、男の頭を踏み付け、再び問い質す。
「もう一度聞くぞ? 『トカゲ女』ってのは、何処に居るんだ?」
男は、事務所を指差して答える。
「そ、そこだ! そこの事務所の中の檻だ!!」
ジカイラはケニーに目配せする。
ケニーは、事務所になっている小部屋に入ると、動物用の鉄檻に閉じ込められている蜥蜴人の娘を見つける。
「助けに来たよ。こんな物に閉じ込められて。可哀想に」
そう言うと、ケニーは鉄檻の鍵を開け、中から蜥蜴人の娘を助け出した。
蜥蜴人の娘は、ケニーにお礼を言う。
「ありがとうございます」
「君、名前は?」
「クラン・ドルジと言います」
「僕はケニー。助けに来たよ。こっちへ」
ケニーはクランを連れて、事務所からジカイラの元へ来る。
ジカイラがクランに尋ねる。
「蜥蜴人の族長の娘か?」
「はい。クラン・ドルジと言います」
ジカイラは、頭を踏みつけている男に再び問い質す。
「おい! この娘を誘拐した連中は、何処に居る?」
男は苦しそうに答える。
「し、知らない! オレ達は、組織の上から、『トカゲ女が入っている檻を見張れ』と言われただけだ!!」
ジカイラは、男を蹴り飛ばすと、ケニー達に告げる。
(・・・此奴等は、末端の雑魚だ。これ以上、情報は引き出せそうにないな)
「引き上げるぞ」
ジカイラとケニーは、クランを連れて倉庫を出る。
五人で食卓を囲んで夕食を取りながら、互いの探索結果を話す。
ジカイラが口を開く。
「オレ達は奴隷商人、ケニー達は麻薬商人を見つけたか」
ケニーも意見を言う。
「あいつら、堂々と違法な事やってる。ラインさんに取り締まって貰おう!」
ジカイラがケニーを諭す。
「だが、どちらも本命じゃない。小物だ。本命は蜥蜴人の族長の娘の救出と、秘密警察の存在の確認だ」
ティナが口を開く。
「そうだったわね。まず、族長の娘さんを助けないと」
ヒナが尋ねる。
「どうするつもり?」
ジカイラが答える。
「昼間の探索で怪しい倉庫を見つけた。内側から窓が全て塞がれている。夕食後、オレとケニーで探ってこようと思う」
ルナが尋ねる。
「え? これから行くんですか? 外は真っ暗ですよ??」
ジカイラが苦笑いしながら答える。
「悪党が活動し始めるのは、夜、暗くなってからだ。まさに、これからの時間なのさ」
ジカイラが続ける。
「ウチの綺麗どころ三人は、宿で留守番していてくれ。それと、夜の港には、決して近寄るな」
ティナが尋ねる。
「どうして?」
ジカイラが答える。
「海賊まがいの武装商人が女を誘拐して売り飛ばそうとするからな」
ルナが呟く。
「・・・なんか、夜は怖いところなんですね」
ヒナが俯きながら話す。
「・・・此処では、この街では、女は『商品』なのよ」
ヒナの脳裏に昼間、倉庫で見た光景が蘇る。
ヒナは、以前、ラインハルトやジカイラが助けてくれなければ、自分も犯されていただろうと、自分と倉庫で犯されていた女の子の姿が重なり、全身に悪寒が走る。
ジカイラが暗くなった場の空気を明るくしようと口調を変える。
「ま、三人で宿屋に固まっていれば、並の傭兵なら襲ってきても『返り討ち』にできるだろ」
ティナも明るく答える。
「ジカさん、大丈夫よ。心配しないで」
夕食を終えたジカイラとケニーが席を立つ。
ジカイラがヒナに話し掛ける。
「それじゃあ、サクッと探索してくる。後を頼むぞ」
「気をつけて」
ジカイラとケニーは、宿屋から夜の倉庫街に向かって行った。
ジカイラとケニーは、夜の帳の降りた真っ暗な港沿いの倉庫街を歩く。
昼間の喧騒とは裏腹に、夜の倉庫街は表通りでさえ、稀に歩いている者が居る程度で、ほとんど人の気配がしなかった。
二人は裏通りに入る。
裏通りの寂れた雰囲気は、夜の闇によって不気味さが増していた。
寂れた倉庫街の一角に、全ての窓を内側から板を貼り付けて塞いである倉庫があった。
ジカイラがケニーに耳打ちする。
「あった。此処だ」
目的の倉庫は、全ての窓を内側から板を貼り付けて塞いであったが、窓を塞いでいる板の隙間から建物の中の光が漏れていた。
ケニーがジカイラに答える。
「隙間から光が漏れてる。誰か中に居るみたいだね」
「裏へ回ろう」
二人は、倉庫の裏口へ回る。
「天窓から中の様子を探ってみるよ」
ケニーはそう言うと、音も無く雨樋を登って倉庫の屋根の上がり、天窓から倉庫の中の様子を窺う。
中では、三人の男が倉庫の入り口付近に集まって話し込んでいるようだった。
(・・・三人か)
ケニーは、再び雨樋を伝って倉庫の天井から路地へ降りると、ジカイラに中の様子を伝える。
「中は三人だね」
「そうか。裏口の鍵を開けてくれ。此処から中に入ろう」
「了解」
ケニーは裏口の鍵を開ける。
「開いたよ」
「よし」
二人は、こっそりと倉庫の中に忍び込むと、物陰から話している男達の様子を探る。
三人の男達の会話の内容が二人に聞こえてくる。
「いつまで、此処でこうしているんだ?」
「上から指示があるまで、此処に居るしか無い」
「クソッ。トカゲ女なんて、サッサと殺っちまえば良いんだよ!!」
「手を出すな! 大切な人質だ」
「判ってるよ」
ジカイラがケニーに耳打ちする。
「・・・当たりだな」
「うん」
「仕掛けるぞ。殺すなよ?」
「判った」
ジカイラとケニーは息を合わせて物陰から出ると、三人の男達に襲い掛かる。
ケニーは音も無く一人の男の背後に忍び寄ると、ショートソードの柄で男の後頭部を強打する。
「ガッ!?」
男は一言だけ、そう漏らすと気絶する。
ジカイラは、男の一人に駆け寄ると、斧槍を大振りする。
斧槍の背が男の側頭部を捉え、鈍い音と共に男が倒れる。
残った一人の男がジカイラとケニーに驚く。
「なんだぁ!? お前ら??」
ジカイラは身を翻すと、斧槍の柄で男の鳩尾を突く。
「カハッ!!」
男は、体の中の空気を絞り出すような嗚咽と共に、その場に蹲る。
ジカイラは、蹲る男の髪を掴み、問い質す。
「おい! 『トカゲ女』ってのは、何処に居るんだ?」
男はジカイラを睨め上げて憎まれ口を叩く。
「グゥウウ・・・。お前ら、こんな事して、タダで済むと思うなよ!?」
ジカイラは、男の頭を踏み付け、再び問い質す。
「もう一度聞くぞ? 『トカゲ女』ってのは、何処に居るんだ?」
男は、事務所を指差して答える。
「そ、そこだ! そこの事務所の中の檻だ!!」
ジカイラはケニーに目配せする。
ケニーは、事務所になっている小部屋に入ると、動物用の鉄檻に閉じ込められている蜥蜴人の娘を見つける。
「助けに来たよ。こんな物に閉じ込められて。可哀想に」
そう言うと、ケニーは鉄檻の鍵を開け、中から蜥蜴人の娘を助け出した。
蜥蜴人の娘は、ケニーにお礼を言う。
「ありがとうございます」
「君、名前は?」
「クラン・ドルジと言います」
「僕はケニー。助けに来たよ。こっちへ」
ケニーはクランを連れて、事務所からジカイラの元へ来る。
ジカイラがクランに尋ねる。
「蜥蜴人の族長の娘か?」
「はい。クラン・ドルジと言います」
ジカイラは、頭を踏みつけている男に再び問い質す。
「おい! この娘を誘拐した連中は、何処に居る?」
男は苦しそうに答える。
「し、知らない! オレ達は、組織の上から、『トカゲ女が入っている檻を見張れ』と言われただけだ!!」
ジカイラは、男を蹴り飛ばすと、ケニー達に告げる。
(・・・此奴等は、末端の雑魚だ。これ以上、情報は引き出せそうにないな)
「引き上げるぞ」
ジカイラとケニーは、クランを連れて倉庫を出る。
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