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第三章 中核都市エームスハーヴェン
第五十一話 傭兵団との一戦
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ジカイラは、魔剣シグルドリーヴァを傭兵達に向けて構えると、その刀身を観察する。
魔剣シグルドリーヴァの漆黒の刀身は、久々に人間の血に触れ、歓喜するように妖しげな光を放っていた。
(簡単に人間を一刀両断できる。・・・良い切れ味だ。剣速もラインハルトと同じくらい出ているか? 魔剣シグルドリーヴァ。良い剣だ)
目の前で人間一人を簡単に一刀両断してみせたジカイラに対して、傭兵団は更に怯む。
ジカイラが前に歩み出て、構えている魔剣の切先を傭兵団に向けると、傭兵達はジリジリと後退る。
「う、うっ・・・」
「・・・ああ」
ジカイラは、構えていた魔剣を肩に担ぐと、傍らのヒナに話し掛ける。
「街中だが、構わねぇ。ヒナ。やれ!!」
ヒナはジカイラの声に頷くと、傭兵団に向けて手をかざし、魔法を唱える。
「氷結水晶槍、四本!!」
ヒナの声と共に、四本の氷の槍が空気中から作られると、傭兵団に向けて飛んで行き、怯む傭兵達を貫き、なぎ倒していく。
「うわわわわ」
「魔導師が居るのか!?」
「魔女だ! 魔女が居るぞ!!」
ヒナの魔法とその威力をを目の当たりにした傭兵団は、恐慌状態になる。
「くそっ! やっちまえ!!」
傭兵達は、屈強なジカイラと魔法を使うヒナを避け、小柄なケニーと女性のルナに狙いを定め、斬り掛かる。
ケニーは、二本のショートソードを巧みに使い、斬り掛かってくる傭兵を斬り伏せる。
ルナも剣と小型盾を上手く使い、傭兵達を斬り捨てていく。
騒動を聞き付け、街の役人と衛兵達がジカイラ達の元に駆け付けてくる。
衛兵達を見て、ジカイラがポツリと呟く。
「やっと、お出ましか」
衛兵達は、ジカイラ達と傭兵団の間に割って入り、役人が双方から事情を聞く。
ジカイラは『巡礼者一行』という偽の身分で、傭兵達が絡んできた経緯を役人に説明する。
街中で巡礼者一行が傭兵団に襲われたということで、役人は動揺を隠せないでいた。
「領主様に報告しますので、どうか宿の方で、しばしお待ちを」
役人は、ジカイラ達が宿泊する宿の場所を尋ねて確認すると、領主の城へ急いで戻って行った。
ジカイラ達は、怯えた目を向ける傭兵達を尻目に宿屋へ戻る。
ジカイラ達は宿屋に戻ると、留守番のティナに傭兵団との経緯を説明する。
ティナが呆れて話す。
「絡んできた傭兵で魔剣の試し斬りって・・・」
ジカイラは悪びれた素振りも見せず話す。
「一応、正当防衛だぞ? ・・・それと、港に外国の軍艦が停泊していた。カスパニア王国の王太子旗を掲げてな。・・・恐らくこの街にカスパニアの王族が居る。領主と外国が繋がっている事を探るには、領主に謁見する必要がある。それには、街で騒動を起こす必要があったという訳さ」
ヒナも呆れたように話す。
「最初から街で騒動を起こす事を狙っていたのね。ジカさん、ワルいんだー」
「は? オレは元海賊だぞ?? 今頃、気付いたのかよ?」
戯けるジカイラは真顔になると、ルナに軽く注意する。
「ルナ。街には女に飢えている連中がゴマンと居るんだ。肌の露出には気をつけろよ」
ルナは素直に従う。
「判りました」
帝国軍によって、デン・ヘルダー、エンクホイゼンの二つの中核都市から追われた傭兵団は、このエームスハーヴェンに流入していた。
傭兵団を追って娼婦や武器商人、職を求める流れ者達もエームスハーヴェンに流入し、日々、街の治安状態は悪化していた。
-- エームスハーヴェン 領主の城 謁見の間
役人からジカイラ達の騒動について報告を受けた領主のヨーカンは、焦っていた。
先のメルクリウス同様、街中で巡礼者が傭兵団に襲われた事が帝国大聖堂から皇帝に報告されれば、領主の自分が街の治安維持の責任を問われ、更迭されるからであった。
(待て、待て。まず、口止めできるか、彼等に会ってみよう)
ヨーカンは、役人にジカイラ達を城に呼ぶように言い付ける。
程なくジカイラ達が宿屋から領主の城に来る。
謁見したヨーカンは、ジカイラ達に形式的な挨拶と自己紹介をし、ジカイラ達も偽の身分で挨拶と自己紹介をする。
探索任務のために用意された偽の身分では、首席僧侶のティナが団長であり、ティナが最初にヨーカンに挨拶し、順番にジカイラ達を紹介する。
紹介の際に、ジカイラの名前を聞いた途端、ヨーカンの顔が恐怖に引き攣る。
ヨーカンは、目を泳がせながら、必死に思案を巡らせる。
(ジカイラ!! ジカイラだと!? 『黒い剣士ジカイラ』!! 間違いない! 秘密警察のアキ少佐やダークエルフのシグマが言っていた、あの秘密警察の本部を潰したという手練の黒い剣士だ!!)
(・・・マズいぞ。「巡礼者の護衛」などと言っているが、此奴は皇帝の手下だ。『口止め』するのも『口封じ』する事も難しい)
(・・・皇帝に嗅ぎ付けられたか!? ・・・『黒い剣士ジカイラ』! ・・・どうする?)
魔剣シグルドリーヴァの漆黒の刀身は、久々に人間の血に触れ、歓喜するように妖しげな光を放っていた。
(簡単に人間を一刀両断できる。・・・良い切れ味だ。剣速もラインハルトと同じくらい出ているか? 魔剣シグルドリーヴァ。良い剣だ)
目の前で人間一人を簡単に一刀両断してみせたジカイラに対して、傭兵団は更に怯む。
ジカイラが前に歩み出て、構えている魔剣の切先を傭兵団に向けると、傭兵達はジリジリと後退る。
「う、うっ・・・」
「・・・ああ」
ジカイラは、構えていた魔剣を肩に担ぐと、傍らのヒナに話し掛ける。
「街中だが、構わねぇ。ヒナ。やれ!!」
ヒナはジカイラの声に頷くと、傭兵団に向けて手をかざし、魔法を唱える。
「氷結水晶槍、四本!!」
ヒナの声と共に、四本の氷の槍が空気中から作られると、傭兵団に向けて飛んで行き、怯む傭兵達を貫き、なぎ倒していく。
「うわわわわ」
「魔導師が居るのか!?」
「魔女だ! 魔女が居るぞ!!」
ヒナの魔法とその威力をを目の当たりにした傭兵団は、恐慌状態になる。
「くそっ! やっちまえ!!」
傭兵達は、屈強なジカイラと魔法を使うヒナを避け、小柄なケニーと女性のルナに狙いを定め、斬り掛かる。
ケニーは、二本のショートソードを巧みに使い、斬り掛かってくる傭兵を斬り伏せる。
ルナも剣と小型盾を上手く使い、傭兵達を斬り捨てていく。
騒動を聞き付け、街の役人と衛兵達がジカイラ達の元に駆け付けてくる。
衛兵達を見て、ジカイラがポツリと呟く。
「やっと、お出ましか」
衛兵達は、ジカイラ達と傭兵団の間に割って入り、役人が双方から事情を聞く。
ジカイラは『巡礼者一行』という偽の身分で、傭兵達が絡んできた経緯を役人に説明する。
街中で巡礼者一行が傭兵団に襲われたということで、役人は動揺を隠せないでいた。
「領主様に報告しますので、どうか宿の方で、しばしお待ちを」
役人は、ジカイラ達が宿泊する宿の場所を尋ねて確認すると、領主の城へ急いで戻って行った。
ジカイラ達は、怯えた目を向ける傭兵達を尻目に宿屋へ戻る。
ジカイラ達は宿屋に戻ると、留守番のティナに傭兵団との経緯を説明する。
ティナが呆れて話す。
「絡んできた傭兵で魔剣の試し斬りって・・・」
ジカイラは悪びれた素振りも見せず話す。
「一応、正当防衛だぞ? ・・・それと、港に外国の軍艦が停泊していた。カスパニア王国の王太子旗を掲げてな。・・・恐らくこの街にカスパニアの王族が居る。領主と外国が繋がっている事を探るには、領主に謁見する必要がある。それには、街で騒動を起こす必要があったという訳さ」
ヒナも呆れたように話す。
「最初から街で騒動を起こす事を狙っていたのね。ジカさん、ワルいんだー」
「は? オレは元海賊だぞ?? 今頃、気付いたのかよ?」
戯けるジカイラは真顔になると、ルナに軽く注意する。
「ルナ。街には女に飢えている連中がゴマンと居るんだ。肌の露出には気をつけろよ」
ルナは素直に従う。
「判りました」
帝国軍によって、デン・ヘルダー、エンクホイゼンの二つの中核都市から追われた傭兵団は、このエームスハーヴェンに流入していた。
傭兵団を追って娼婦や武器商人、職を求める流れ者達もエームスハーヴェンに流入し、日々、街の治安状態は悪化していた。
-- エームスハーヴェン 領主の城 謁見の間
役人からジカイラ達の騒動について報告を受けた領主のヨーカンは、焦っていた。
先のメルクリウス同様、街中で巡礼者が傭兵団に襲われた事が帝国大聖堂から皇帝に報告されれば、領主の自分が街の治安維持の責任を問われ、更迭されるからであった。
(待て、待て。まず、口止めできるか、彼等に会ってみよう)
ヨーカンは、役人にジカイラ達を城に呼ぶように言い付ける。
程なくジカイラ達が宿屋から領主の城に来る。
謁見したヨーカンは、ジカイラ達に形式的な挨拶と自己紹介をし、ジカイラ達も偽の身分で挨拶と自己紹介をする。
探索任務のために用意された偽の身分では、首席僧侶のティナが団長であり、ティナが最初にヨーカンに挨拶し、順番にジカイラ達を紹介する。
紹介の際に、ジカイラの名前を聞いた途端、ヨーカンの顔が恐怖に引き攣る。
ヨーカンは、目を泳がせながら、必死に思案を巡らせる。
(ジカイラ!! ジカイラだと!? 『黒い剣士ジカイラ』!! 間違いない! 秘密警察のアキ少佐やダークエルフのシグマが言っていた、あの秘密警察の本部を潰したという手練の黒い剣士だ!!)
(・・・マズいぞ。「巡礼者の護衛」などと言っているが、此奴は皇帝の手下だ。『口止め』するのも『口封じ』する事も難しい)
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