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第三章 中核都市エームスハーヴェン
第五十話 クラスチェンジ
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--翌朝。
ジカイラとヒナは、ラインハルト達が帰ってから、丸一日眠っていた。
ジカイラは徹夜続きであったし、ヒナも呪いを掛けられていたティナの介護で同様であった。
ジカイラが目覚めると、傍らにはヒナが寄り添っていた。
穏やかな寝息を立てるヒナの寝顔を眺めつつ、ジカイラは考える。
(こいつにも苦労掛けたな・・・)
実際、ヒナは、献身的にジカイラを支えていた。
ジカイラが眠っているヒナにキスすると、ヒナも目覚める。
「んんっ・・・。どうしたの?」
ヒナの黒い瞳がジカイラを伺う。
ジカイラが戯ける。
「傍らに美女が居るんで、抱きたくなったのさ」
ヒナは、照れながら答える。
「もぅ・・・。朝からなんて・・・」
二人は朝から睦事を始め、一息してから一階に降りたのは、昼近くなってからであった。
昼近くに宿屋の一階の食堂に全員が揃い、昼食を取る。
食事を終えた後、ケニーが口を開く。
「そろそろ、ルナちゃんも中堅職にクラスチェンジしたら良いんじゃないかな?」
ルナが不思議そうに尋ねる。
「中堅職ですか?」
ジカイラが助け船を出す。
「中堅職のほうが色々と使えるスキルも身につくし、戦闘でも有利だ。冒険者ギルドに行ってみると良い。ケニー、ルナと一緒に冒険者ギルドに行ってやれ」
「了解!」
ジカイラが話す。
「ケニーとルナが冒険者ギルドに行っている間、オレとヒナで街を探索してくる。宿屋は貸し切りだから他の人間は来ないと思うが、一応、ティナは留守番を頼む」
「判ったわ」
ティナは、呪いの額冠の一件で皆に迷惑を掛けたという経緯から、素直に留守番を引き受ける。
ケニーとルナは、冒険者ギルドへ向かい、ジカイラとヒナは、街の探索に出掛けた。
ケニーとルナは、冒険者ギルドの建物に入る。
ケニーは、ギルドの窓口でルナの転職の旨を伝える。
ルナは、ケニーに教えられたとおり、冒険者カードを窓口の隣にある水晶の下に置く。
水晶に職業の名称の文字が浮かび上がる。
ルナが水晶に浮き出た文字を読み上げる。
「ルナが転職出来るのは、暗殺者か、剣闘士ね」
ケニーが尋ねる。
「ルナちゃんは、戦士系とスカウト系と、どっちの系統が良いの?」
ルナが答える。
「戦士系が良いな」
「それじゃ、剣闘士だね」
ルナが剣闘士の文字を選択すると水晶は輝き出し、水晶からの光線がルナの職業を冒険者カードに記入した。
「これでルナは、中堅職ね!」
ルナは機嫌良くケニーに笑顔を見せる。
二人は、冒険者ギルドを後にし、市街地へと向かう。
ジカイラとヒナは、港を探索していた。
他の中核都市同様に、この港にも大小様々な船が入港して接岸し、貨物の積み下ろしや旅客の乗船、下船が行われていた。
ジカイラは、港を見回すと、港に停泊している一隻の船に目を止める。
「重ガレオン・・・?」
それは入港している他の船が『商船』もしくは『武装商船』なのに対して、一隻だけ明らかに『軍艦』であった。
ジカイラは、軍艦である重ガレオンに掲げられている旗に目を向ける。
「カスパニア王立海軍!! 王太子旗!?」
(カスパニアの王族が、この街に居るのか??)
ヒナがジカイラに尋ねる。
「どうしたの?」
ジカイラが説明する。
「・・・港に一隻だけ軍艦が居る。カスパニア王立海軍の重ガレオンだ。カスパニアの王族が街に居るようだ」
ヒナが驚く。
「カスパニアの王族が!?」
ジカイラが続ける。
「この街は『港湾自治都市群』と名乗っているが、バレンシュテット帝国領だ。王太子旗を掲げたカスパニアの軍艦が居て良い場所じゃない。・・・何か裏があるな」
ジカイラとヒナは、港周辺の探索を終え、市街地へと向かう。
街の大通りでジカイラ、ヒナの二人とケニー、ルナの二人が顔を合わせる。
ジカイラが口を開く。
「お? ケニー。ルナ。無事、転職できたのか?」
ジカイラの問いに、ルナは笑顔で答える。
「はい! 剣闘士になりました!」
ヒナも笑顔で祝福する。
「おめでとう」
四人で街の大通りを歩いていると、小柄なケニーが人相の悪い者達に絡まれる。
「二人もイイ女を連れやがって。あやかりたいねぇ」
ジカイラが止めに入る。
「なんだ? お前ら? 傭兵か??」
屈強な男であるジカイラが現れたことで、人相の悪い傭兵達は怯む。
「お、お前、こいつらの仲間か?」
ジカイラは、怯む傭兵達を見下ろして告げる。
「こいつらはオレの連れだ。・・・失せろ」
「くそ! ナメやがって!!」
傭兵の一人がジカイラに殴り掛かる。
ジカイラは、殴り掛かって来た傭兵の拳を避けると、傭兵を蹴り飛ばした。
「野郎!!」
傭兵達は仲間を集め、抜剣してジカイラ達に対峙する。
ケニーは、両手でショートソードを抜剣して構えると、ルナも羽織っているローブを脱ぎ、抜剣して傭兵達に構える。
ルナの肌の露出が増えたことで、傭兵達が下卑た歓声を上げる。
ルナの防具は『ビキニ・アーマー』と呼ばれる、水着のような肌の露出の多い防具であるため、普段、戦闘の無い街中ではローブを羽織っていた。
ジカイラがポンポンとルナの肩を手で叩いて呟く。
「彼奴等は女に飢えているんだ。彼奴等に、あんまり『乙女の柔肌』を見せつけるな」
「ふざけやがって!!」
傭兵の一人が奇声を上げてジカイラに斬り掛かってくる。
ジカイラは、魔剣の柄に手を掛けると、素早く抜剣し、左下から右上へ居合斬りに傭兵を斬りつけた。
魔剣は、ほとんど抵抗なく傭兵の体を一刀両断した。
ジカイラは、歪んだ笑みを受かべ、即死した傭兵の死体に向かって告げる。
「ワリぃな。試し斬りだ」
ジカイラとヒナは、ラインハルト達が帰ってから、丸一日眠っていた。
ジカイラは徹夜続きであったし、ヒナも呪いを掛けられていたティナの介護で同様であった。
ジカイラが目覚めると、傍らにはヒナが寄り添っていた。
穏やかな寝息を立てるヒナの寝顔を眺めつつ、ジカイラは考える。
(こいつにも苦労掛けたな・・・)
実際、ヒナは、献身的にジカイラを支えていた。
ジカイラが眠っているヒナにキスすると、ヒナも目覚める。
「んんっ・・・。どうしたの?」
ヒナの黒い瞳がジカイラを伺う。
ジカイラが戯ける。
「傍らに美女が居るんで、抱きたくなったのさ」
ヒナは、照れながら答える。
「もぅ・・・。朝からなんて・・・」
二人は朝から睦事を始め、一息してから一階に降りたのは、昼近くなってからであった。
昼近くに宿屋の一階の食堂に全員が揃い、昼食を取る。
食事を終えた後、ケニーが口を開く。
「そろそろ、ルナちゃんも中堅職にクラスチェンジしたら良いんじゃないかな?」
ルナが不思議そうに尋ねる。
「中堅職ですか?」
ジカイラが助け船を出す。
「中堅職のほうが色々と使えるスキルも身につくし、戦闘でも有利だ。冒険者ギルドに行ってみると良い。ケニー、ルナと一緒に冒険者ギルドに行ってやれ」
「了解!」
ジカイラが話す。
「ケニーとルナが冒険者ギルドに行っている間、オレとヒナで街を探索してくる。宿屋は貸し切りだから他の人間は来ないと思うが、一応、ティナは留守番を頼む」
「判ったわ」
ティナは、呪いの額冠の一件で皆に迷惑を掛けたという経緯から、素直に留守番を引き受ける。
ケニーとルナは、冒険者ギルドへ向かい、ジカイラとヒナは、街の探索に出掛けた。
ケニーとルナは、冒険者ギルドの建物に入る。
ケニーは、ギルドの窓口でルナの転職の旨を伝える。
ルナは、ケニーに教えられたとおり、冒険者カードを窓口の隣にある水晶の下に置く。
水晶に職業の名称の文字が浮かび上がる。
ルナが水晶に浮き出た文字を読み上げる。
「ルナが転職出来るのは、暗殺者か、剣闘士ね」
ケニーが尋ねる。
「ルナちゃんは、戦士系とスカウト系と、どっちの系統が良いの?」
ルナが答える。
「戦士系が良いな」
「それじゃ、剣闘士だね」
ルナが剣闘士の文字を選択すると水晶は輝き出し、水晶からの光線がルナの職業を冒険者カードに記入した。
「これでルナは、中堅職ね!」
ルナは機嫌良くケニーに笑顔を見せる。
二人は、冒険者ギルドを後にし、市街地へと向かう。
ジカイラとヒナは、港を探索していた。
他の中核都市同様に、この港にも大小様々な船が入港して接岸し、貨物の積み下ろしや旅客の乗船、下船が行われていた。
ジカイラは、港を見回すと、港に停泊している一隻の船に目を止める。
「重ガレオン・・・?」
それは入港している他の船が『商船』もしくは『武装商船』なのに対して、一隻だけ明らかに『軍艦』であった。
ジカイラは、軍艦である重ガレオンに掲げられている旗に目を向ける。
「カスパニア王立海軍!! 王太子旗!?」
(カスパニアの王族が、この街に居るのか??)
ヒナがジカイラに尋ねる。
「どうしたの?」
ジカイラが説明する。
「・・・港に一隻だけ軍艦が居る。カスパニア王立海軍の重ガレオンだ。カスパニアの王族が街に居るようだ」
ヒナが驚く。
「カスパニアの王族が!?」
ジカイラが続ける。
「この街は『港湾自治都市群』と名乗っているが、バレンシュテット帝国領だ。王太子旗を掲げたカスパニアの軍艦が居て良い場所じゃない。・・・何か裏があるな」
ジカイラとヒナは、港周辺の探索を終え、市街地へと向かう。
街の大通りでジカイラ、ヒナの二人とケニー、ルナの二人が顔を合わせる。
ジカイラが口を開く。
「お? ケニー。ルナ。無事、転職できたのか?」
ジカイラの問いに、ルナは笑顔で答える。
「はい! 剣闘士になりました!」
ヒナも笑顔で祝福する。
「おめでとう」
四人で街の大通りを歩いていると、小柄なケニーが人相の悪い者達に絡まれる。
「二人もイイ女を連れやがって。あやかりたいねぇ」
ジカイラが止めに入る。
「なんだ? お前ら? 傭兵か??」
屈強な男であるジカイラが現れたことで、人相の悪い傭兵達は怯む。
「お、お前、こいつらの仲間か?」
ジカイラは、怯む傭兵達を見下ろして告げる。
「こいつらはオレの連れだ。・・・失せろ」
「くそ! ナメやがって!!」
傭兵の一人がジカイラに殴り掛かる。
ジカイラは、殴り掛かって来た傭兵の拳を避けると、傭兵を蹴り飛ばした。
「野郎!!」
傭兵達は仲間を集め、抜剣してジカイラ達に対峙する。
ケニーは、両手でショートソードを抜剣して構えると、ルナも羽織っているローブを脱ぎ、抜剣して傭兵達に構える。
ルナの肌の露出が増えたことで、傭兵達が下卑た歓声を上げる。
ルナの防具は『ビキニ・アーマー』と呼ばれる、水着のような肌の露出の多い防具であるため、普段、戦闘の無い街中ではローブを羽織っていた。
ジカイラがポンポンとルナの肩を手で叩いて呟く。
「彼奴等は女に飢えているんだ。彼奴等に、あんまり『乙女の柔肌』を見せつけるな」
「ふざけやがって!!」
傭兵の一人が奇声を上げてジカイラに斬り掛かってくる。
ジカイラは、魔剣の柄に手を掛けると、素早く抜剣し、左下から右上へ居合斬りに傭兵を斬りつけた。
魔剣は、ほとんど抵抗なく傭兵の体を一刀両断した。
ジカイラは、歪んだ笑みを受かべ、即死した傭兵の死体に向かって告げる。
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