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第三章 中核都市エームスハーヴェン
第五十三話 カスパニア王太子襲撃(一)
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ジカイラが口を開く。
「襲撃すると決まれば、話しは早い。今夜、決行しよう」
一同が驚く。
「今夜!?」
「そうだ。今夜だ。晩飯食って、風呂に入ったら、港に行くぞ」
夕食を済ませたジカイラは、手早く報告書を書くと、フクロウ便でラインハルトへ報告書を送った。
夕食後、ジカイラ達は入浴を済ませ、港へと向かう。
ジカイラ達は港に着くと、離れた倉庫の影からスパニア軍艦が接舷している埠頭を望遠鏡で偵察する。
埠頭では、一定間隔でテントが張られて篝火が焚かれ、多くのカスパニア兵が宿営していた。
望遠鏡で埠頭を見たケニーが口を開く。
「・・・ジカさん。カスパニア兵が百人以上、埠頭に居るよ」
ジカイラがニヤけて答える。
「そいつは好都合だ」
ジカイラの答えを聞いたケニーが驚く。
「え?」
ジカイラが続ける。
「埠頭に百人以上居るってことは、その分、船の中には人が居ないってことだろう?」
「そうか!」
ジカイラは、ケニーから望遠鏡を受け取ると、埠頭と軍艦を偵察する。
ジカイラが口を開く。
「・・・アイツら、普段は陸の上に居る連中だな。埠頭を兵で固めれば、軍艦は安全だと勘違いしている」
傍らのヒナが尋ねる。
「どういうこと?」
ジカイラが答える。
「『軍艦を守りたければ、軍艦に居ろ』ってことさ。・・・オレ達は、漁業区画から小舟で出るぞ。」
ティナが感心したように話す。
「埠頭からじゃなく、海の上から小舟で軍艦に乗り込むのね」
ジカイラがニヤけ顔で答える。
「そういう事だ」
ジカイラ達は望遠鏡をしまうと、漁業区画へと急いだ。
深夜の漁業区画は人の気配は無く、港の小波の音だけが響いていた。
泊地には漁船がもやいで係留されて並び、船揚場には小舟が並んでいた。
護岸から遠巻きにカスパニア軍艦の窓から漏れる明かりと、埠頭で煌々と焚かれる篝火の列が見える。
ジカイラは、舟揚場から10人ほどが乗れる小舟を見繕って波打ち際へと押し出す。
「乗れ! 行くぞ!!」
ジカイラの声でケニーを先頭に、皆が小舟に乗り込む。
ジカイラは、膝の辺りまで海に浸かりながら小舟を押し出すと、小舟に乗り込む。
ジカイラ達は、夜の港内に小舟を漕ぎ出して行く。
夜の港内に波は無く、穏やかな海面は、軍艦の窓から漏れる光を鏡のように写し出し、下弦の月の明かりと共に幻想的な光景を描いていた。
櫂で漕ぎながらジカイラが口を開く。
「王太子旗は船尾桜の上、王太子の居る貴賓室は船尾桜の中だ。ケニーとルナは、王太子旗を、他はオレと貴賓室だ」
「「了解!!」」
返事と共にルナは、ケニーの後ろに行き、寄り添う。
ヒナは、後ろを振り返り、櫂を漕ぐジカイラをじっと見詰める。
ヒナが口を開く。
「ジカさん、船頭姿が似合ってる」
ヒナの言葉に、小舟に乗る皆がクスクスと笑い出す。
ジカイラは照れ隠しの言葉を口にする。
「う、うるせぇ! これから軍艦を襲撃するんだぞ!? 少しは緊張感を持て!!」
再び小舟に乗る皆がクスクスと笑い出した。
ジカイラ達の乗る小舟がカスパニア軍艦の傍らに到着する。
ジカイラが指示を出す。
「ケニー、先導を頼む。縄梯子を掛けてくれ」
「判ったよ」
ケニーは、鉤爪付きのロープを船舷に投げ掛けると、ロープを登っていき、甲板に着く。
甲板に着いたケニーは、潜伏スキルを使いつつ、縄梯子を小舟へ向けて降ろすと甲板の片隅に積まれた樽の影に隠れ、周囲を伺う。
(見張りは・・・マストに1人、甲板に5人、船尾楼の上に2人か)
強化弓を番えたケニーは、マストの上の見張りを射殺する。
縄梯子をルナ、ヒナ、ティナの3人の女の子達が順に登って来る。
最初に登ったルナは、ケニーの側に行き、樽の影に隠れると、登って来たヒナを小声で呼び、手招きする。
「ヒナちゃん、こっち、こっち!!」
次に登って来たヒナは、ルナの隣に小走りで走ると樽の影に屈み、後続のティナを小声で呼び、手招きする。
「ティナ、見つかっちゃダメよ!」
次に登って来たティナは、ルナとヒナの側に小走りで走ると、三人固まって集まり、最後に登ってきたジカイラを小声で呼び、手招きする。
「ジカさん、早くー!!」
はしゃぐ3人の女の子達の姿を見たジカイラが呆れる。
「・・・お前ら、『かくれんぼ』じゃないんだぞ!?」
(よし! 次は、船尾楼だ!!)
4人が縄梯子で甲板に登った事を確認したケニーは、甲板から鉤爪付きのロープを船尾楼に投げ掛ける。
「行くよ! ルナちゃん!!」
ケニーは、小声でルナに声を掛けると、ロープを伝って船尾楼の上へと登って行く。
ルナは、ケニーの後ろを着いていく。
ケニーとルナは、船尾楼の縁に二人並んで潜み、船尾楼を警戒する兵士の様子を伺う。
ルナは剣を抜き、剣先で船尾楼の縁をコンコンと叩く。
物音を不審に思った兵士の1人が船尾楼の縁に近付き、船尾楼上から海面を見下ろす。
海面を見下ろした兵士の喉をルナは、素早く剣先で切り裂く。
ケニーは、船尾楼の縁から身を乗り出すと、強化弓でもう1人の兵士を射殺した。
ケニーとルナは船尾楼の上に出ると、船尾楼に掲げられている皇太子旗を降ろして、畳んで袋に仕舞う。
ケニーは船尾楼から甲板を見下ろし、ジカイラ達に合図する。
(次は、甲板の見張りを倒さないとな)
「襲撃すると決まれば、話しは早い。今夜、決行しよう」
一同が驚く。
「今夜!?」
「そうだ。今夜だ。晩飯食って、風呂に入ったら、港に行くぞ」
夕食を済ませたジカイラは、手早く報告書を書くと、フクロウ便でラインハルトへ報告書を送った。
夕食後、ジカイラ達は入浴を済ませ、港へと向かう。
ジカイラ達は港に着くと、離れた倉庫の影からスパニア軍艦が接舷している埠頭を望遠鏡で偵察する。
埠頭では、一定間隔でテントが張られて篝火が焚かれ、多くのカスパニア兵が宿営していた。
望遠鏡で埠頭を見たケニーが口を開く。
「・・・ジカさん。カスパニア兵が百人以上、埠頭に居るよ」
ジカイラがニヤけて答える。
「そいつは好都合だ」
ジカイラの答えを聞いたケニーが驚く。
「え?」
ジカイラが続ける。
「埠頭に百人以上居るってことは、その分、船の中には人が居ないってことだろう?」
「そうか!」
ジカイラは、ケニーから望遠鏡を受け取ると、埠頭と軍艦を偵察する。
ジカイラが口を開く。
「・・・アイツら、普段は陸の上に居る連中だな。埠頭を兵で固めれば、軍艦は安全だと勘違いしている」
傍らのヒナが尋ねる。
「どういうこと?」
ジカイラが答える。
「『軍艦を守りたければ、軍艦に居ろ』ってことさ。・・・オレ達は、漁業区画から小舟で出るぞ。」
ティナが感心したように話す。
「埠頭からじゃなく、海の上から小舟で軍艦に乗り込むのね」
ジカイラがニヤけ顔で答える。
「そういう事だ」
ジカイラ達は望遠鏡をしまうと、漁業区画へと急いだ。
深夜の漁業区画は人の気配は無く、港の小波の音だけが響いていた。
泊地には漁船がもやいで係留されて並び、船揚場には小舟が並んでいた。
護岸から遠巻きにカスパニア軍艦の窓から漏れる明かりと、埠頭で煌々と焚かれる篝火の列が見える。
ジカイラは、舟揚場から10人ほどが乗れる小舟を見繕って波打ち際へと押し出す。
「乗れ! 行くぞ!!」
ジカイラの声でケニーを先頭に、皆が小舟に乗り込む。
ジカイラは、膝の辺りまで海に浸かりながら小舟を押し出すと、小舟に乗り込む。
ジカイラ達は、夜の港内に小舟を漕ぎ出して行く。
夜の港内に波は無く、穏やかな海面は、軍艦の窓から漏れる光を鏡のように写し出し、下弦の月の明かりと共に幻想的な光景を描いていた。
櫂で漕ぎながらジカイラが口を開く。
「王太子旗は船尾桜の上、王太子の居る貴賓室は船尾桜の中だ。ケニーとルナは、王太子旗を、他はオレと貴賓室だ」
「「了解!!」」
返事と共にルナは、ケニーの後ろに行き、寄り添う。
ヒナは、後ろを振り返り、櫂を漕ぐジカイラをじっと見詰める。
ヒナが口を開く。
「ジカさん、船頭姿が似合ってる」
ヒナの言葉に、小舟に乗る皆がクスクスと笑い出す。
ジカイラは照れ隠しの言葉を口にする。
「う、うるせぇ! これから軍艦を襲撃するんだぞ!? 少しは緊張感を持て!!」
再び小舟に乗る皆がクスクスと笑い出した。
ジカイラ達の乗る小舟がカスパニア軍艦の傍らに到着する。
ジカイラが指示を出す。
「ケニー、先導を頼む。縄梯子を掛けてくれ」
「判ったよ」
ケニーは、鉤爪付きのロープを船舷に投げ掛けると、ロープを登っていき、甲板に着く。
甲板に着いたケニーは、潜伏スキルを使いつつ、縄梯子を小舟へ向けて降ろすと甲板の片隅に積まれた樽の影に隠れ、周囲を伺う。
(見張りは・・・マストに1人、甲板に5人、船尾楼の上に2人か)
強化弓を番えたケニーは、マストの上の見張りを射殺する。
縄梯子をルナ、ヒナ、ティナの3人の女の子達が順に登って来る。
最初に登ったルナは、ケニーの側に行き、樽の影に隠れると、登って来たヒナを小声で呼び、手招きする。
「ヒナちゃん、こっち、こっち!!」
次に登って来たヒナは、ルナの隣に小走りで走ると樽の影に屈み、後続のティナを小声で呼び、手招きする。
「ティナ、見つかっちゃダメよ!」
次に登って来たティナは、ルナとヒナの側に小走りで走ると、三人固まって集まり、最後に登ってきたジカイラを小声で呼び、手招きする。
「ジカさん、早くー!!」
はしゃぐ3人の女の子達の姿を見たジカイラが呆れる。
「・・・お前ら、『かくれんぼ』じゃないんだぞ!?」
(よし! 次は、船尾楼だ!!)
4人が縄梯子で甲板に登った事を確認したケニーは、甲板から鉤爪付きのロープを船尾楼に投げ掛ける。
「行くよ! ルナちゃん!!」
ケニーは、小声でルナに声を掛けると、ロープを伝って船尾楼の上へと登って行く。
ルナは、ケニーの後ろを着いていく。
ケニーとルナは、船尾楼の縁に二人並んで潜み、船尾楼を警戒する兵士の様子を伺う。
ルナは剣を抜き、剣先で船尾楼の縁をコンコンと叩く。
物音を不審に思った兵士の1人が船尾楼の縁に近付き、船尾楼上から海面を見下ろす。
海面を見下ろした兵士の喉をルナは、素早く剣先で切り裂く。
ケニーは、船尾楼の縁から身を乗り出すと、強化弓でもう1人の兵士を射殺した。
ケニーとルナは船尾楼の上に出ると、船尾楼に掲げられている皇太子旗を降ろして、畳んで袋に仕舞う。
ケニーは船尾楼から甲板を見下ろし、ジカイラ達に合図する。
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