アスカニア大陸戦記 黒衣の剣士と氷の魔女

StarFox

文字の大きさ
59 / 64
第三章 中核都市エームスハーヴェン

第五十九話 十万人vs一人

しおりを挟む
--夕刻。 中核都市エームスハーヴェン 宿屋

 街の郊外にカスパニア軍十万が迫った事で、エームスハーヴェンの市内は騒然となる。

 ジカイラ達が領主の城に出向くと、領主のヨーカンが暗殺されたため、役人達はどうして良いか判らず、右往左往するばかりであった。

 ジカイラが傍らのヒナに話し掛ける。

「役人はアテにならんな。オレ達で対処しよう。北側の城門に行くぞ」

「対処って?」

「なぁに。オレに考えがある。任せろ」

 ジカイラ達は、北側の城門に向かった。





 
 ジカイラ達5人とラインハルト達4人は、エームスハーヴェン北側の城門前に集まる。

 城門では、郊外にカスパニア軍十万が迫ったため、街の衛兵が防衛のため、城門を閉じようとしているところであった。

 ジカイラが衛兵に話し掛ける。

「おーっとっと。門を閉めるのは、ちょっと待ってくれ」

 衛兵が苛立ってジカイラに答える。

「何だと!? 我々は、街の防衛で忙しいんだ!! 何者だ!? 貴様!!」

 ジカイラは、得意気に傍らのラインハルトを腕を掴むと、衛兵の前に引っ張り出して、告げる。

「何者とは何だ!! 貴様! こちらにおられる御方を誰だと心得る!? バレンシュテット帝国 第三十五代皇帝 ラインハルト・ヘーゲル・フォン・バレンシュテット陛下なるぞ!! 控えろ!!」

 ジカイラによって、突然、衛兵や人々の前に引き出されたラインハルトは苦笑いする。

「・・・おいおい」

 ジカイラの言葉を聞いた近くの衛兵達が、ラインハルトを見て狼狽える。

「こ、皇帝陛下・・・!!」

「・・・皇帝陛下だ!!」

「助かるのか!? 俺達!!」

「間違いない。・・・皇帝陛下だ!! 皇妃様も居るぞ!!」

 ラインハルトがバレンシュテット帝国皇帝だと気付いた者達から、その場に跪き、最敬礼を取り始める。

 ラインハルトとナナイの皇帝夫妻に最敬礼を取り始める衛兵達の姿を見た市民達にも『皇帝陛下がこの街に居る』という話は伝わり、瞬く間に周囲に広がる。

 街から逃げようとしていた市民の一人が、ラインハルト達の方を向いて、口を開く。

皇帝、万歳ジーク・カイザー!!」

 大通りを逃げ惑う市民達も、その言葉を聞いて足を止め、ラインハルト達の方を見る。

 別の市民達がラインハルトを見て叫ぶ。

皇帝、万歳ジーク・カイザー!!」

皇帝、万歳ジーク・カイザー!!」

 やがて、ジカイラ達、ラインハルト達の周囲を取り囲むように人だかりができ、市民達は右手を斜め前に挙手して敬礼を取り、口々に雄叫びを上げる。

「「皇帝、万歳ジーク・カイザー!!」」

「「皇帝、万歳ジーク・カイザー!!」」

 市民達は、様々な言葉を口にする。

「皇帝陛下が来てくれた! 助かるんだ! 俺達!!」

「そうだ! バレンシュテット帝国は無敵だ!!」

 その様子を見たヒナがジカイラに話し掛ける。

「凄い・・・」

 ジカイラがヒナに答える。

「『人望』ってやつだ。さて、行くぞ! ヒナ!! ・・・衛兵、馬を借りるぞ」

「ジカさん、ちょっと!!」

「オレがカスパニア軍の侵攻を食い止める! 全面戦争を防ぐには、やるしか無い!!」

「ええっ!?」

 ジカイラは、衛兵から馬を借りると後ろにヒナを乗せ、城門から郊外に陣取るカスパニア軍に向かって一騎で駆けて行った。

 ラインハルトの傍らにいるナナイが口を開く。

「一騎で、どうするつもりなのかしら?」

 ラインハルトは微笑んで答える。

「彼らに任せてみよう」

 リリーが口を開く。

「十万の軍勢を相手に一騎で??」

 エリシスがリリーに答える。

「『黒い剣士』のお手並み拝見ね」

 ケニーも口を開く。

「ジカさん、流石に無茶だよ・・・!!」

 ルナが答える。

「ジカさんなら、何とかしてくれると思う」









--エームスハーヴェン郊外 カスパニア軍 

 一騎でカスパニア軍に駆け寄ってくるジカイラにカスパニア軍の見張りが問い掛ける。

「此処から先はカスパニア軍の陣だ! 何者だ!? 貴様!! 軍使か!?」

 ジカイラは、見張りに告げる。

「帝国無宿人、ジカイラ推参!! カスパニア軍の大将は、オレと一騎打ちで勝負しろ!!」

 カスパニア軍の見張りは、驚いて答える。

「しょ、将軍に伝える! しばし、待たれよ!!」

 そう言うと見張りは、本陣に向けて走って行った。

 ヒナがジカイラに話し掛ける。

「一騎打ちなんて、無茶よ! ジカさん!!」

 ジカイラは、馬の上にヒナを残したまま自分だけ馬から降りると、魔剣シグルドリーヴァを鞘から抜いて地面に突き立て、柄の上に両手を置きカスパニア軍に向かって対峙する。

 ジカイラは、顔だけ振り向いて笑顔でヒナに答える。

「一騎打ちで敵の大将を倒す。ヤバくなったら、バックレる。簡単だろ?」

 ヒナが呆れて答える。

「・・・もぅ」







--カスパニア軍 本陣

 本陣には、将軍のロビンと宮廷魔導師のナオ・レンジャーが居た。

 見張りが本陣に駆け込んで報告する。

「将軍閣下! 敵が現れました!! 敵の騎士が、ただ一騎で我軍に対峙しております!! 『帝国無宿人、ジカイラ』と名乗っており、その騎士は将軍との『一騎打ち』を所望するとの事です!!」

 報告を聞いたロビンとナオ・レンジャーは驚愕する。

 ナオ・レンジャーが呟く。

「『帝国無宿人ジカイラ』!? 王太子殿下の報告書にあった、あの『黒い剣士ジカイラ』か!?」

 ロビンが口を開く。

「十万の軍勢を相手に、一騎で対峙だと?」

「はい」

 ナオ・レンジャーは、ウットリと嬉しそうに口を開く。

「十万の軍勢に一騎で立ち向かい、将軍との『一騎打ち』勝負だなんて。男らしいわねぇ・・・。ロビン、その勝負、もちろん受けるんでしょうね?」

 ロビンが気不味そうにナオ・レンジャーの方を見て答える。

「・・・んん?」
 
 ナオ・レンジャーがロビンに告げる。

「列強カスパニア王国の将軍が一騎打ちの勝負から逃げたなんて、全軍の士気に関わるわよ!?」

 ナオ・レンジャーの言葉にロビンが黙る。

「・・・」

 ナオ・レンジャーが渋るロビンを一喝する。

「アナタも男でしょ? なら、受けなさい!!」

「・・・はい」

 ナオ・レンジャーが報告に来た見張りの兵士に答える。

「ロビン将軍は一騎打ちで勝負するとのことだ! 我々、二人が出向く! 貴様は下がって良い!!」

「はっ!!」

 ロビンとナオ・レンジャーは馬に乗り、前線のジカイラ達の元へ向かう。

 ナオ・レンジャーは楽しそうに微笑みを浮かべる。

(『黒い剣士ジカイラ』。十万の軍勢に一騎で立ち向かう男気は合格ね。私の目に叶う男だと良いけど)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...