60 / 64
第三章 中核都市エームスハーヴェン
第六十話 一騎打ち
しおりを挟む
中核都市エームスハーヴェンを攻略するべく十万人のカスパニア王国軍が迫る中、ジカイラはその軍勢の前で地面に魔剣シグルドリーヴァを突き立て、仁王立ちして対峙する。
ヒナは馬に乗ったまま、ジカイラを見守る。
程なくカスパニア王国軍の中から、一組の男女がジカイラ達の前にやってくる。
カスパニア王国軍を率いる将軍ロビンと宮廷魔導師ナオ・レンジャーであった。
二人は、ジカイラ達の前で馬から降りて対峙する。
ロビンが口を開く。
「貴様か! ジカイラというのは! 一騎打ちを望むというその勝負、受けてやる!!」
一方のナオ・レンジャーは、ジカイラに見惚れ、目を細める。
(鍛え抜いた肉体といい、精悍な顔立ちといい、良い男ね!)
ジカイラが口を開く。
「オレが勝ったら、軍を退け! 良いな?」
ロビンが答える。
「何を馬鹿な事を・・・」
そこまで言いかけたロビンの言葉をナオ・レンジャーが遮り、答える。
「良いわよ! その条件で!! ・・・もちろん、勝つわよね? ロビン!」
一瞬、躊躇したものの、ロビンは答える。
「お、おう! 当たり前だ!!」
そう言うと、ロビンは武器を取り出して身構える。
ロビンの武器は、右手に持つ柄の先に長い鉄鎖がついており、鉄鎖の先には人の頭ほどの鉄球が着いていた。
ロビンは、右手で柄を振り上げると、鉄球を振り回し始める。
ジカイラも地面に突き立てていた魔剣シグルドリーヴァを引き抜くと、ロビンに対して剣先を向け、構える。
魔剣シグルドリーヴァの漆黒の刀身から妖しい光が立ち上る。
ロビンが口を開く。
「勝負だ! 黒い剣士!!」
ジカイラも口を開く。
「行くぜ!!」
ヒナとナオ・レンジャーが立ち会い、中核都市エームスハーヴェンの市民達が見守り、十万のカスパニア王国軍の兵士達の目前で、ジカイラとロビンは一騎打ちを始める。
「ウォオオオ!!」
雄叫びを上げながら、ロビンは振り回している鉄球をジカイラに投げつける。
ジカイラは大きく身を反らして鉄球を避ける。
二度、三度とロビンは鉄球を振り回し、ジカイラに投げつけるが、いずれもジカイラは避ける。
ジカイラは、ロビンを観察していた。
(腕力はあるようだが、攻撃は大振りなうえ、トロい。・・・少し出方を見るか)
攻撃を避けてばかりのジカイラに対して、ロビンは煽り始める。
「おらおらぁ~。どうした? 黒い剣士! 避けてばかりかぁ? あぁん?」
一見、ロビンが優勢に見えるため、カスパニア軍の兵士達が歓声を上げ始める。
ヒナは、一騎打ちで戦うジカイラを見詰めて祈るように呟く。
「ジカさん・・・」
ジカイラは冷静にロビンの攻撃を分析する。
(此奴は右側からしか攻撃してこない!)
ジカイラが反撃に転じる。
ジカイラは、ロビンが投げつけてきた鉄球を魔剣シグルドリーヴァで打ち返す。
鈍い金属音が響き渡る。
投げた鉄球を打ち返された事にロビンが驚く。
「う、打ち返しただと!?」
二人の一騎打ちを離れて見ているエームスハーヴェンの市民達や、カスパニア軍の兵士達も驚き、ざわめき出す。
ロビンは、更に激しく鉄球の投げ付けを繰り返す。
「クソッ!! ウラァアアア!!」
ジカイラは、繰り返し投げつけられる鉄球を、全て魔剣シグルドリーヴァで打ち返す。
鈍い金属音が何度も戦場に響き渡る。
ナオ・レンジャーはジカイラの戦い振りに、ますます見惚れる。
(・・・凄い。まだまだ余裕がありそうね)
意を決したジカイラは、魔剣を低く構え、腰を落とすと深く息を吸い、渾身の力を込めて魔剣シグルドリーヴァでロビンが投げつけてきた鉄球を打つ。
ジカイラの豪腕で振り上げられた魔剣シグルドリーヴァがロビンが投げつけてきた鉄球を砕く。
ロビンを含む、それを見ていた者達が驚愕する。
「剣で鉄球を打ち砕いただと!?」
ジカイラは魔剣を低く構え、大きく間合いを踏み込むと、再び渾身の力を込めて魔剣シグルドリーヴァを振り上げる。
魔剣シグルドリーヴァの峰がロビンの側頭部を捕える。
「ごあっ!?」
鈍い音と短い嗚咽と共にロビンは意識を失い、白目を剥いて後ろに倒れる。
気絶して倒れたロビンは、仰向けにひっくり返った蛙のように、手足をピクピクと痙攣させていた。
ジカイラは、右手に魔剣シグルドリーヴァを持つと、高く掲げる。
(勝った!!)
ジカイラとロビンの一騎打ちの結果に、エームスハーヴェンの市民達が歓声を上げ、カスパニア軍の兵士達は落胆の声を漏らす。
ヒナが乗っていた馬から降りて、ジカイラのところへ走り出す。
「ジカさん!!」
そう叫ぶと、ジカイラの元に駆け寄ったヒナは、その首に抱きついてキスする。
二人の一騎打ちの結果にナオ・レンジャーは高笑いして、ジカイラに歩み寄る。
「あーはっはっは! ・・・男だねぇ!!」
ナオ・レンジャーはヒナを無視して、両手を前で合わせると、二の腕で胸を押し寄せ、谷間を強調する姿勢を取り、うっとりとジカイラの顔を見上げる。
「どうだ? その貧相な小娘から乗り換えて、『私の男』にならないか?」
露骨にジカイラを誘惑するナオ・レンジャーに対して、ヒナが敵意を剥き出しにして睨み付ける。
ジカイラが口を開く。
「ワリィな。オレはコイツの彼処の締り具合が気に入ってるんでな」
ヒナが赤面してジカイラを小突く。
「彼処の締まり具合って! 沢山の人が聞いてるのよ!!」
ナオ・レンジャーは不敵な笑みを浮かべる。
「なら、腕ずくで私の男にしてやる!!」
ヒナが、ジカイラとナオ・レンジャーの間に割って入る。
「彼処がガバガバの年増女は、お呼びじゃないわ!!」
ジカイラは苦笑いしながら呟く。
「彼処がガバガバって・・・」
ヒナに侮辱された怒りで、ナオ・レンジャーの額に血管が浮き出る。
「この私が・・・。私が年増だと!? 殺してやる!! 小娘が!!!」
ヒナがジカイラの方を振り向いて告げる。
「ジカさんは、下がってて!」
「・・・判ったよ」
ジカイラは、数歩、後ろに下がる。
ヒナとナオ・レンジャーが互いに睨み合って対峙する。
バレンシュテット帝国の『氷の魔女』と、カスパニア王国の『宮廷魔導師』の一騎打ちが始まろうとしていた。
ヒナは馬に乗ったまま、ジカイラを見守る。
程なくカスパニア王国軍の中から、一組の男女がジカイラ達の前にやってくる。
カスパニア王国軍を率いる将軍ロビンと宮廷魔導師ナオ・レンジャーであった。
二人は、ジカイラ達の前で馬から降りて対峙する。
ロビンが口を開く。
「貴様か! ジカイラというのは! 一騎打ちを望むというその勝負、受けてやる!!」
一方のナオ・レンジャーは、ジカイラに見惚れ、目を細める。
(鍛え抜いた肉体といい、精悍な顔立ちといい、良い男ね!)
ジカイラが口を開く。
「オレが勝ったら、軍を退け! 良いな?」
ロビンが答える。
「何を馬鹿な事を・・・」
そこまで言いかけたロビンの言葉をナオ・レンジャーが遮り、答える。
「良いわよ! その条件で!! ・・・もちろん、勝つわよね? ロビン!」
一瞬、躊躇したものの、ロビンは答える。
「お、おう! 当たり前だ!!」
そう言うと、ロビンは武器を取り出して身構える。
ロビンの武器は、右手に持つ柄の先に長い鉄鎖がついており、鉄鎖の先には人の頭ほどの鉄球が着いていた。
ロビンは、右手で柄を振り上げると、鉄球を振り回し始める。
ジカイラも地面に突き立てていた魔剣シグルドリーヴァを引き抜くと、ロビンに対して剣先を向け、構える。
魔剣シグルドリーヴァの漆黒の刀身から妖しい光が立ち上る。
ロビンが口を開く。
「勝負だ! 黒い剣士!!」
ジカイラも口を開く。
「行くぜ!!」
ヒナとナオ・レンジャーが立ち会い、中核都市エームスハーヴェンの市民達が見守り、十万のカスパニア王国軍の兵士達の目前で、ジカイラとロビンは一騎打ちを始める。
「ウォオオオ!!」
雄叫びを上げながら、ロビンは振り回している鉄球をジカイラに投げつける。
ジカイラは大きく身を反らして鉄球を避ける。
二度、三度とロビンは鉄球を振り回し、ジカイラに投げつけるが、いずれもジカイラは避ける。
ジカイラは、ロビンを観察していた。
(腕力はあるようだが、攻撃は大振りなうえ、トロい。・・・少し出方を見るか)
攻撃を避けてばかりのジカイラに対して、ロビンは煽り始める。
「おらおらぁ~。どうした? 黒い剣士! 避けてばかりかぁ? あぁん?」
一見、ロビンが優勢に見えるため、カスパニア軍の兵士達が歓声を上げ始める。
ヒナは、一騎打ちで戦うジカイラを見詰めて祈るように呟く。
「ジカさん・・・」
ジカイラは冷静にロビンの攻撃を分析する。
(此奴は右側からしか攻撃してこない!)
ジカイラが反撃に転じる。
ジカイラは、ロビンが投げつけてきた鉄球を魔剣シグルドリーヴァで打ち返す。
鈍い金属音が響き渡る。
投げた鉄球を打ち返された事にロビンが驚く。
「う、打ち返しただと!?」
二人の一騎打ちを離れて見ているエームスハーヴェンの市民達や、カスパニア軍の兵士達も驚き、ざわめき出す。
ロビンは、更に激しく鉄球の投げ付けを繰り返す。
「クソッ!! ウラァアアア!!」
ジカイラは、繰り返し投げつけられる鉄球を、全て魔剣シグルドリーヴァで打ち返す。
鈍い金属音が何度も戦場に響き渡る。
ナオ・レンジャーはジカイラの戦い振りに、ますます見惚れる。
(・・・凄い。まだまだ余裕がありそうね)
意を決したジカイラは、魔剣を低く構え、腰を落とすと深く息を吸い、渾身の力を込めて魔剣シグルドリーヴァでロビンが投げつけてきた鉄球を打つ。
ジカイラの豪腕で振り上げられた魔剣シグルドリーヴァがロビンが投げつけてきた鉄球を砕く。
ロビンを含む、それを見ていた者達が驚愕する。
「剣で鉄球を打ち砕いただと!?」
ジカイラは魔剣を低く構え、大きく間合いを踏み込むと、再び渾身の力を込めて魔剣シグルドリーヴァを振り上げる。
魔剣シグルドリーヴァの峰がロビンの側頭部を捕える。
「ごあっ!?」
鈍い音と短い嗚咽と共にロビンは意識を失い、白目を剥いて後ろに倒れる。
気絶して倒れたロビンは、仰向けにひっくり返った蛙のように、手足をピクピクと痙攣させていた。
ジカイラは、右手に魔剣シグルドリーヴァを持つと、高く掲げる。
(勝った!!)
ジカイラとロビンの一騎打ちの結果に、エームスハーヴェンの市民達が歓声を上げ、カスパニア軍の兵士達は落胆の声を漏らす。
ヒナが乗っていた馬から降りて、ジカイラのところへ走り出す。
「ジカさん!!」
そう叫ぶと、ジカイラの元に駆け寄ったヒナは、その首に抱きついてキスする。
二人の一騎打ちの結果にナオ・レンジャーは高笑いして、ジカイラに歩み寄る。
「あーはっはっは! ・・・男だねぇ!!」
ナオ・レンジャーはヒナを無視して、両手を前で合わせると、二の腕で胸を押し寄せ、谷間を強調する姿勢を取り、うっとりとジカイラの顔を見上げる。
「どうだ? その貧相な小娘から乗り換えて、『私の男』にならないか?」
露骨にジカイラを誘惑するナオ・レンジャーに対して、ヒナが敵意を剥き出しにして睨み付ける。
ジカイラが口を開く。
「ワリィな。オレはコイツの彼処の締り具合が気に入ってるんでな」
ヒナが赤面してジカイラを小突く。
「彼処の締まり具合って! 沢山の人が聞いてるのよ!!」
ナオ・レンジャーは不敵な笑みを浮かべる。
「なら、腕ずくで私の男にしてやる!!」
ヒナが、ジカイラとナオ・レンジャーの間に割って入る。
「彼処がガバガバの年増女は、お呼びじゃないわ!!」
ジカイラは苦笑いしながら呟く。
「彼処がガバガバって・・・」
ヒナに侮辱された怒りで、ナオ・レンジャーの額に血管が浮き出る。
「この私が・・・。私が年増だと!? 殺してやる!! 小娘が!!!」
ヒナがジカイラの方を振り向いて告げる。
「ジカさんは、下がってて!」
「・・・判ったよ」
ジカイラは、数歩、後ろに下がる。
ヒナとナオ・レンジャーが互いに睨み合って対峙する。
バレンシュテット帝国の『氷の魔女』と、カスパニア王国の『宮廷魔導師』の一騎打ちが始まろうとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる