アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち

StarFox

文字の大きさ
6 / 63
第二章 士官学校

第六話 補給処での乱闘

しおりを挟む
 補給処に八人で買い出しに行って夕食の材料を見繕い、アレクとルイーゼが商品の会計をしようとした時に事件が起こる。

 おそらくアレクたちと同じ軍用列車で来たであろう、士官候補生の学生達がアレクたちの隣を通り過ぎる。

 彼らはアレクたちとのすれ違いざまに、亜人達を見てののしり始める。

「見ろよ。が居るぞ」

「気持ち悪い」

「ウゲッ、飯が不味くなる」

 彼らの侮辱に蜥蜴人リザードマンのトゥルムが反論する。

「『』はないだろう? せめて『』と言ってくれ」

 侮辱した学生達が驚く。

「コイツ、喋ったぞ?」

「トカゲの癖に喋るのか!?」

 トゥルムの傍らでやり取りを聞いていたアルが、学生達の肩を掴んで注意する。

「おい、お前ら! 幾らなんでも、言い過ぎだろ! トゥルムに謝れ!」

 アルに肩を掴まれた学生は、振り向き様にアルを殴り、悪態を突く。

「お前は人間なのに、トカゲの肩を持つのかよ?」

「貴様!」

 アレクがアルを殴った学生を殴り付ける。

 アルとアレクは、アルを殴った学生達と取っ組み合いになり、それぞれ互いの仲間達が加勢して、補給処の出入口前で二つのグループ同士の乱闘になる。

 乱闘には、女子生徒も加わっていた。

 アレクは、掴み掛かってきた学生の奥襟おくえりを取ると、頭突きを食らわせ、更に膝蹴りを食らわせると、その学生は嗚咽を漏らしながら、うずくまった。

(コイツら、兄上と比べると、全然遅いし、弱い……)

(そうだ!? ルイーゼは?)

 アレクはルイーゼを心配して、乱闘の中でルイーゼの姿を探す。

 アレクがルイーゼの姿を見つけると、彼女は相手のグループの女子生徒と戦っていた。

 彼女の表情は、軍用列車の中でアレクに見せた可愛らしい笑顔とは打って変わって、鋭い眼光を放つ戦士の表情であった。

 ルイーゼは、殴り掛かってきた相手の腕を左手で掴むと、大きく踏み込んで間合いを詰め、相手の顔に右腕で肘打ちを食らわせる。

 彼女の戦い振りは、明らかに素人ではない、訓練された体捌きと体術であった。

(ルイーゼ、強いじゃないか!?)




 次第に乱闘の優劣が出てくる。

 ナタリーは、腕力事は苦手なようで、ルイーゼに助けられていた。

 ドワーフのドミトリーは、樽のような体型であったが、奇声を上げながら格闘術を発揮して相手を圧倒していた。

 獣人ビーストマンのエルザは、身のこなしの速度が人間とは段違いであり、相手の攻撃を避けては、チクチクと反撃していた。

 エルフのナディアは、闇の精霊シェードを召喚して相手の視界を暗闇で閉ざし、何も見えなくなって闇雲に暴れる相手をおちょくっていた。

 アルの立ち回りは、派手であった。

「おりゃあああああ!」

 アルは、叫びながら助走をつけると、相手に飛び蹴りを食らわせ、飛び蹴りを食らった相手の学生は、補給処の商品棚をなぎ倒しながら後ろに倒れる。

「ウォオオオオオオ!」

 蜥蜴人リザードマンのトゥルムは、両手で相手の学生を自分の頭の上まで高く持ち上げる。

 蜥蜴人リザードマンの体格は人間より二回りは大きく、腕力は人間のそれより数段強力であった。

 トゥルムの戦い振りを見たアルが褒める。

「良いぞ、トゥルム! やっちまえ!」

 トゥルムは補給処の出入り口から、持ち上げた相手を外に投げ捨てた。







 アルがアレクの傍に来て話し掛ける。 

「勝負、あったな!」

「ああ」

 トゥルム達を侮辱した学生達のほとんどは、打ちのめされているか、動けなくなっていた。

 補給処の奥から、相手のリーダー格と思われる一人の学生がアレクとアルの元に歩いてくる。

「お前ら、仲間を派手にやってくれたな」

 アルは、現れた学生を見て驚く。

 金髪に茶色の瞳。

 茶色の瞳や鼻の形など細かい部分こそ違うが、身長や体型、顔の輪郭や作り、耳の形までアレクに似ている学生であった。

 アルが傍らのアレクに話し掛ける。

「ボスキャラ登場ってか? ……けど、なんか、お前にそっくりな奴が現れたぞ?」

 相手の学生もアレクを見て、驚いているようであった。

 学生とアレクが対峙し、睨み合う。

 アレクは、兄のジークと喧嘩する時のように身構える。

 すると、相手の学生も身構える。

 睨み合い一触即発の空気であったが、その時、甲高い笛の音が補給処に響き渡る。

 補給処での乱闘騒ぎを聞き付けた軍監達が笛を吹き、警棒を振りかざしながら乱闘の仲裁に現れる。

 アレクは一瞬、笛の音がする方に目線を動かす。

 次の瞬間、学生がアレクに殴り掛かって来る。

 アレクは紙一重で学生の拳を避けると、殴り返そうとする。

 相手の学生も紙一重でアレクの拳を躱す。

 拳でのやり取りを三回ほど繰り返すと、アレクは一歩、後ろに退き、再び学生と対峙し、睨み合う。

(コイツ、強いぞ!?)

 アレクがそう考えていると、軍監達が学生達とアレクたちを取り押さえる。

 軍監達がアレクたちに告げる。

「ガキども、初日から乱闘騒ぎとは良い度胸だ! 軍隊をナメるなよ!」

 軍監達によって、アレクたちと相手の学生達は、士官学校の一室に連行される。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

処理中です...