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ダンジョン・マスター第一部
16.????
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──人間界某所──
「中々頑張っているみたいね」
「お姉さま! こんなところまでどうして?」
<奇人の住処>への対応を練っていたエレーナは、突如来訪したミュリエールに驚いた。
「頑張ってるエレーナの仕事ぶりをみようと思ってね」
「ありがとうございます! 感激ですわ!」
「それで、ダンジョンの方はどうなの?」
ミュリエールが真剣な顔で問う。
「……あう、それなのですが、思ったよりもしぶといようですわ」
エレーナは一気に意気消沈して、うつむきながら答える。
「あら、そうなの。今はどんな状況なのかしら」
ミュリエールは気にした風もなく、詳細を求めた。
「ええとですね、こちらの思惑通り冒険者や傭兵を送り込むことには成功したのですが、どうも守りが中々硬いらしく、思ったよりも損害を与えられておりませんの……」
「ふうん、ダンジョンの拡張はまだまだのはずだから、大した強さの魔物はいないはずなのですけれどね」
晩年のランドゲルズは力の衰えからダンジョンを縮小していた。それでも手を出せなかったのは、天界から手出しを禁止されていたからだ。
「それについてはダンジョンを管理している魔族の用兵がうまいという噂がありますわ」
「派遣されたのは誰だったかしら?」
「そこまでは詳しくわかっておりませんが、今のところ表舞台に出てきていない魔界貴族の子弟ではないかという説が有力です」
「魔界貴族の子弟……普通の魔界貴族の子弟なら、ある程度名が知れているはずよね」
「そうですわね、魔界も天界と同じく、何かと行事がありますから、そこに出席するような相手は魔界にも天界にも、それなりに名前が知られているはずですわ」
「そうなると出自があまり良くない者かしら、妾の子とか」
「その可能性はありそうですわ」
「……ああ、もしかして彼女かしら、炎の悪魔族、獄炎の主の娘、確か……メリルだったかしら」
「誰ですのそれ?」
「エレーナは知らないかしら? ダークエルフのメリル」
「ああ! そんな醜聞が一時期ありましたわね!」
「きっと彼女でしょう。どうせ表舞台で活躍出来ないからと、左遷されたのでしょうね」
「いやですわ、忌々しい魔族に汚らわしいエルフの混ざり物! 想像するのもおぞましい!」
「そんなものを従えている魔王も格が知れますわね」
「本当に! 早いところ浄化してしまいたいですわ」
「しかし、今の様子では人間には荷が重いかもしれませんわね」
厄介なことにメリルは実力があるようだ。恐らく本人の戦闘能力は大したことがないだろうが、ミュリエール達自身が攻めに行けるわけではないので、そうなると人間には荷が重い。
「大丈夫ですわお姉さま、まだまだ計画は序の口です」
「次はどうするのかしら?」
「冒険者や傭兵の投入など所詮は前座、次は王国軍を動かしますわ」
自信満々にエレーナが答える。
「なるほど、調査団の派遣ね」
「はい! 人間の調査団は兵や魔術師、学者も含め小隊から中隊規模、その人数は五十名以上にもなります、これらが魔王の存在する建設初期のダンジョンだと判断すれば、次は魔王征伐軍が結成されますわ。規模は最低でも大隊規模、人数は最低でも千名近くになるでしょう、これだけの戦力があれば、もはや用兵がうまいというレベルでは覆せない戦力差になりますわ!」
「でも、人間共の判断はあてになるのかしら」
「そこは細工をして、必ず魔王の存在する建設初期のダンジョンだと判断させますわ」
ふふふとエレーナが笑う。
「そうなればあのダンジョンもおしまいね」
「ええ、平地で正面切って戦うならこの程度の人数では大規模上級魔法で一蹴されてしまい勝負になりませんが、ダンジョンでは別の話です。魔物を失ってしまえば幹部が前線に出ざるを得なくなり、大規模魔法は自分たちを巻き込む可能性がある上、ダンジョンを破壊する危険性もあるため使えません。そうなればもはや先は長くありません。相手は何百名もの兵士をとにかく投入し続ければいずれ勝てるのですから」
「魔族や魔王が強いとは言っても、不眠不休でひたすら戦い続けられるほど強靭ではありませんものね」
「ええ、人間共もそれについては過去の経験からわかっているはずですわ、数は質に勝ると」
「ふふふ、どうなるのか楽しみだわ」
「そうですわね、お姉さま」
「中々頑張っているみたいね」
「お姉さま! こんなところまでどうして?」
<奇人の住処>への対応を練っていたエレーナは、突如来訪したミュリエールに驚いた。
「頑張ってるエレーナの仕事ぶりをみようと思ってね」
「ありがとうございます! 感激ですわ!」
「それで、ダンジョンの方はどうなの?」
ミュリエールが真剣な顔で問う。
「……あう、それなのですが、思ったよりもしぶといようですわ」
エレーナは一気に意気消沈して、うつむきながら答える。
「あら、そうなの。今はどんな状況なのかしら」
ミュリエールは気にした風もなく、詳細を求めた。
「ええとですね、こちらの思惑通り冒険者や傭兵を送り込むことには成功したのですが、どうも守りが中々硬いらしく、思ったよりも損害を与えられておりませんの……」
「ふうん、ダンジョンの拡張はまだまだのはずだから、大した強さの魔物はいないはずなのですけれどね」
晩年のランドゲルズは力の衰えからダンジョンを縮小していた。それでも手を出せなかったのは、天界から手出しを禁止されていたからだ。
「それについてはダンジョンを管理している魔族の用兵がうまいという噂がありますわ」
「派遣されたのは誰だったかしら?」
「そこまでは詳しくわかっておりませんが、今のところ表舞台に出てきていない魔界貴族の子弟ではないかという説が有力です」
「魔界貴族の子弟……普通の魔界貴族の子弟なら、ある程度名が知れているはずよね」
「そうですわね、魔界も天界と同じく、何かと行事がありますから、そこに出席するような相手は魔界にも天界にも、それなりに名前が知られているはずですわ」
「そうなると出自があまり良くない者かしら、妾の子とか」
「その可能性はありそうですわ」
「……ああ、もしかして彼女かしら、炎の悪魔族、獄炎の主の娘、確か……メリルだったかしら」
「誰ですのそれ?」
「エレーナは知らないかしら? ダークエルフのメリル」
「ああ! そんな醜聞が一時期ありましたわね!」
「きっと彼女でしょう。どうせ表舞台で活躍出来ないからと、左遷されたのでしょうね」
「いやですわ、忌々しい魔族に汚らわしいエルフの混ざり物! 想像するのもおぞましい!」
「そんなものを従えている魔王も格が知れますわね」
「本当に! 早いところ浄化してしまいたいですわ」
「しかし、今の様子では人間には荷が重いかもしれませんわね」
厄介なことにメリルは実力があるようだ。恐らく本人の戦闘能力は大したことがないだろうが、ミュリエール達自身が攻めに行けるわけではないので、そうなると人間には荷が重い。
「大丈夫ですわお姉さま、まだまだ計画は序の口です」
「次はどうするのかしら?」
「冒険者や傭兵の投入など所詮は前座、次は王国軍を動かしますわ」
自信満々にエレーナが答える。
「なるほど、調査団の派遣ね」
「はい! 人間の調査団は兵や魔術師、学者も含め小隊から中隊規模、その人数は五十名以上にもなります、これらが魔王の存在する建設初期のダンジョンだと判断すれば、次は魔王征伐軍が結成されますわ。規模は最低でも大隊規模、人数は最低でも千名近くになるでしょう、これだけの戦力があれば、もはや用兵がうまいというレベルでは覆せない戦力差になりますわ!」
「でも、人間共の判断はあてになるのかしら」
「そこは細工をして、必ず魔王の存在する建設初期のダンジョンだと判断させますわ」
ふふふとエレーナが笑う。
「そうなればあのダンジョンもおしまいね」
「ええ、平地で正面切って戦うならこの程度の人数では大規模上級魔法で一蹴されてしまい勝負になりませんが、ダンジョンでは別の話です。魔物を失ってしまえば幹部が前線に出ざるを得なくなり、大規模魔法は自分たちを巻き込む可能性がある上、ダンジョンを破壊する危険性もあるため使えません。そうなればもはや先は長くありません。相手は何百名もの兵士をとにかく投入し続ければいずれ勝てるのですから」
「魔族や魔王が強いとは言っても、不眠不休でひたすら戦い続けられるほど強靭ではありませんものね」
「ええ、人間共もそれについては過去の経験からわかっているはずですわ、数は質に勝ると」
「ふふふ、どうなるのか楽しみだわ」
「そうですわね、お姉さま」
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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