異世界のダンジョン・マスター

優樹

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ダンジョン・マスター第一部

15.リーゼの観察日記

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 ダンジョン(本当の名前は奇人の住処って言うんだって、変わった人が多いからなのかな?)に移り住んできてから一週間が経ちました。それまでにあったことを日記にしていこうと思います。
 日記はメリルさんがくれました、メリルさんも日々あった色んな事を記録しているみたい。ちなみに最初メリル様って呼んだら「このダンジョンの主は魔王様です、魔王様以外に様をつける必要などありません」と言われてしまいました。私としてはありがたい申し出だったので、素直に従っています。
 ダンジョンでの生活は概ね順調です、ちょっと気になるのはお日様を浴びられないことだけど、ダンジョン内(というか第二層)は基本的に明かりが灯してあるので、生活に不便はないです。
 私の生活は朝起きて、アーシャさんと一緒に食事の準備をするところから始まります。水とかはどうしているのかと思ったけど、アーシャさんが呪文を唱えると、おおがめの中に水がどっぱんどっぱんと増えていきました。訊けば簡単な水魔法らしいです。初めて魔法なんてみたのでびっくりしました。
 アーシャさんは不思議な雰囲気を持っている魔族の方で、種族はインプらしいです。蝙蝠のような羽根がぱたぱた動いていて可愛い。気になる。触ってみたい。いずれ仲良くなったら触らせてくれるだろうか。それに尻尾もつるっとした質感をしていて、ニギニギしたら気持ちよさそう。ああ、触ってみたい。
 食事の後はアーシャさんと手分けして掃除や洗濯をします。ここでもアーシャさんは色んな魔法を使って、手際よく仕事を終わらせていました、凄い凄いと思って訊けばメイド歴はもう◯◯◯年にもなるんだって、年数の部分は訊いたのだけど、内緒です。
 ダンジョン内はとても広くて、自分たちが生活している部分の掃除だけでも大変です。私一人じゃとても一日で全部は終わらないなあ。私も簡単な生活魔術とか使えないだろうか。今度お姉ちゃんに相談してみよう。
 掃除を切りのいいところまで終わらせたら、今度は昼食の準備です。アーシャさんはメイド歴が長いこともあって料理のレパートリーも豊富。私は食材の下処理などをしながら、料理の勉強もさせてもらう。代わりに私が知っている料理などを教えると、アーシャさんはレパートリーが増えると喜んでくれました。
 昼食は特に用事がなければ皆で食べます。最初の頃は魔王様と一緒に食べるなんてとんでもないってメリルさんは言っていたらしいんだけど、一人で食べる食事が寂しいから皆で一緒に食べるように魔王様からお願いしたんだって。私もお姉ちゃん以外の人と一緒に食事するのは久しぶりで、楽しかったです。
 昼食後は片付けを終わらせると、自由時間になります。私の元々の仕事は家事じゃなくて、魔王様の話し相手だから、自由な時間が多めに取られています。とはいえ毎日魔王様とお話するわけではなく、魔王様に用事があったりすると時間が余ってしまいます。そういう時はメリルさんに貸してもらった本を読んだり、魔物の皆さんと交流したりしています。
 スケ蔵さんとスケ道さんはよく一緒に雑用をするので、一緒にいると和みます。言葉を発することは出来ないけど、ジェスチャーと歯を打ち鳴らす音で意思の疎通が出来ている……気がします。
 魔王様とお話するときには、大体執務室に行くと居ます。執務室にはモフ助もいて、ブラッシングしてあげると気持ちよさそうにするのがとっても可愛いです、そして赤い毛皮を思う存分もふもふすると思わず眠くなってしまうくらい気持ちいいです。
 魔王様とお話する内容は街で暮らしていた時の生活や、世相や一般常識、どんな職業があるかなど多岐に渡ります。たまに知らないことや答えにくいこともあるけど、特に嫌なことは訊かれません。お姉ちゃんなんかは魔王様と何を話したのか気にしているけど、そんな変な話はしてないよ!
 魔王様は第一印象と同じで、優しいお兄さんという感じでした。どうして魔王になったのかとか、そういった踏み込んだ話はしていないけど、こんな優しい人が魔王にならなくてはいけないような理由がきっとあるんだろうなあ。
 魔王様とお話した後は、再び調理場に戻ってアーシャさんと夕食の準備。夕食も用事がなければ皆で食べます。やっぱり一人で食べる食事より、皆で食べる食事のほうが美味しいよね。
 その後はアーシャさんが魔法で沸かしてくれたお風呂に入って、お姉ちゃんと一緒の部屋で寝ます。時々不安になってお姉ちゃんのベッドに潜り込んでしまい、もうしょうがないなあといった感じで苦笑されますが、いいんです、お姉ちゃんは私専用なんですから!

……

 ある日俺が調理場の前を通りかかると、アーシャとリーゼが向かい合っていた。
 何をしているのかと様子を見てみれば、お互いニコニコと笑顔を向け合っている。……なんだろうか、新手のにらめっこか?
 しかもよく見て見るとアーシャが寝ているような気がする。あの羽根の動き、あれはきっと寝てる。
 でも何か意味があるのかも知れないし、気付かれないようにそっと立ち去ることにした。

……

 アーシャとリーゼが向い合ってニコニコしている。とても和やかな雰囲気だ。
 最初はどうなるかと思ったけど、リーゼはダンジョンの生活に溶け込めているようで安心だ。
 アタシはそう思って、邪魔しないように立ち去った。

……

 私はおもむろにアーシャに近づくと、懐から抜き放ったスリッパでアーシャの頭をひっぱたいた。
「起きなさい」

……

 朝食後の片付け中、アーシャさんと和気あいあいと会話していたら、アーシャさんが私の顔を見てニコニコしているので、私も思わず手を止めて笑顔を返してしまった。
 ニコニコ、ニコニコ、ニコニコ、ニコニコ
 アーシャさんが何も言わないので、私も何も言わないでニコニコし続ける。
 ニコニコ、ニコニコ、ニコニコ、ニコニコ
 リラックスしているのか、羽根の動きが徐々にゆっくりになっていく、ああ、触ってみたい。
 ニコニコ、ニコニコ、ニコニコ、ニコニコ
 そうして数分、無言のまま笑顔を向け合っていたら、メリルさんがつかつかと近寄ってきて電光石火の勢いでアーシャさんの頭をひっぱたいた。
「起きなさい」
 その手にはいつの間にかスリッパが握られている。凄い早業だ。ってそうじゃない、えっ、アーシャさん寝てたの!?
「メリル様―痛いですぅ」
 ニコニコ顔……ではなく、目を閉じていたらしいアーシャさんがうっすらと涙を浮かべながらメリルさんに抗議する。
「居眠りしているからです」
「食後で血糖値が上がってー」
「なんですかそれは」
「って魔王様が言ってましたー」
 血糖値ってなんだろう、私も今度訊いてみよう。
「もういいです、仕事をしなさい」
「リーゼがやってくれるってー」
「あ、はい! ただいま!」
 突然呼ばれたのでわたわたとしながら、食器の片付けを始める。
「真に受けなくて構いません、冗談ですから」
「あたしの睡眠時間がぁ」
「その、お疲れでしたら食事の片付けくらい私がやりますよ?」
 普段からアーシャさんは私より沢山働いているし……
「アーシャはいつでも眠いという頭の病気なのです、気にしなくて構いません」
「メリル様、ひどいぃ」
「もう一度ひっぱたかれたいですか?」
「ごめんなさぁい、仕事に戻りますー」
「よろしい」
 最後に目に見えぬ速度でスリッパを何処かに収納すると、メリル様はつかつかと去っていった。
 なんというか、凄い。

 こんな感じで、私は結構ダンジョン生活を楽しく過ごしている。
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