異世界のダンジョン・マスター

優樹

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ダンジョン・マスター第三部

1.溝

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天界兵を仲間に引き入れた俺達のダンジョン。戦力的にはかなりの増強と言えるが、その内実はギスギスしたものだった。
 当然である、天界兵はダンジョンの魔物をほとんど殺し尽くした相手、セレナはそれに激昂して戦ったのだ。
 イレーヌによる交渉で他の3人も仲間になったとは言え、和気あいあいとはいかない。
 いつ背中を刺されるかもわからない状況と言えば、こちらも緊張するものだ。
 それに…天界兵を仲間に引き入れていると魔界に知れれば、どうなってしまうか、これは想像もつかない。
 メリルの言では、天界兵を捕虜とした場合、即座に殺す、意思を縛って死ぬまで戦わせる、あるいは奴隷のように扱うか…何にせよ、良い待遇とはいえないだろう。
 それがうちでは戦力不足のために意思を縛らず戦わせるというのだから、異例と言える。
 過去に同じ事象があったかどうかすらもわからない。
 俺としては、ある意味天界兵にも同情しつつ、それでいてダンジョンの魔物を殺したことを完全に許すことはできないという複雑な心境をしているのだ。直接戦ったセレナなどは、到底受け入れがたい結果になったことだろう。
 だがメリルの判断は正しいとも一方ではわかっている。とは言えそう簡単に気持ちを切り替えられるほど俺は単純にできていない。
 最近のダンジョンはピリピリしている、こんな状況でまた大規模な敵襲が会った場合どうするか…俺はそれに頭を悩ませていた。
 顔を突き合わせれば険悪な雰囲気。特にカインとセレナがその傾向にある。まぁカインは誰に対しても似たような態度をとっているようだが…
 一方ロナとマイルはそれほど敵意が強い感じではない。ロナは穏やかな気性であることと、マイルは間接的に俺達に命を救われたからだろう。また、ダークエルフであるメリルが迷宮大将で、ハーフブラッドである自分が特に差別されてないのも影響しているかもしれない。
 イレーヌは…傍から見ればダンジョン運営に献身的にも見えるが、その暗い表情の下では何を考えているかわからない。仲間を助けるために命を担保にした制約を結んだことから、仲間思いには思えるが…
 そうやって整理してみると、概ねカインとセレナが中心となってこの険悪な雰囲気を作り出していることがわかる。わかるのだが、どうすれば打ち解けられるかとなると難しい問題だ。だって俺でさえ彼らの扱いに困っているのだから…
 執務室でうんうんと唸っていると、ノックの音がした。
「魔王様、そんなに唸ってどうなされましたか?外にまで聞こえてますよ」
 扉を開けるとそこにはメリルがいた。やはりここは、メリルに相談するのが一番か。
 そう思って俺の悩みを打ち明けたのだが…
「実際難しい問題ですね、天界兵はいわばイレーヌの命を握られているからこのダンジョンに所属しているのであって、自分の意思でいるわけではありません。その彼らの心を開くとなると…正直私にも検討がつかないというのが現状の状況です」
 どうやらメリルも似たようなことを考えていたみたいだった。そりゃあ当然か、メリルはいつだって俺達やこのダンジョンのことを考えているのだから。
「わかった。俺ももう少し考えてみるよ。メリルも何かいい案があったら教えてくれ」
「わかりました、魔王様」
 そう言ってメリルを執務室から送り出すと、俺は椅子に座って改めて考える。
「そうだな、一人でうじうじしてても仕方ない、ちょっくら他の人の意見も聞いてみるか」
 が、セレナには相談しないほうがいいだろう…と心のなかで付け加える。
「まずはそうだな…アーシャにあたってみるか」
 そう独りごちて、俺は執務室を出た。
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