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ひじり!」

 今日は『プリメア』の二月の新作の第一クールの撮影が昼から入っていて、スタジオの控え室でケータリングのお弁当を食べていると社長の亜美あみさんが入ってきた。

「あ、亜美さん。お疲れ様です」

「ちょっと! 真夜まやの恋人に聞いたんだけど時也ときやと付き合ってるって本当!?」

(真夜くんの恋人は亜美さんの推しだったか……)

「付き合ってるというかなんというか……まぁ、ちょっと色々な事情が絡まった末に関係を持ってしまって……でも、覇王は俺が独占出来るものじゃないので、完全な恋人じゃないんですけどね」

「聖も時也も男には興味がないはずだったのに、どういう事情だったわけ?」

(まさか、お互いの不運な過去に惹かれあって……更に俺はゲイだなんて言えるわけがない……)

「まぁ、色々です。でも、亜美さんも言っていたとおり、覇王を相手にするなんて難しいですね。俺だけのものにはなってくれませんから……」 

 思わずまぶたを伏せると亜美さんは神妙な顔をしてから、勢いよく俺の背中を叩いてきた。

「多分、すっごい嫉妬しちゃうでしょうね。けど、男なんて眼中にない時也がなびいたんだから自信持って! 確かに辛いけどさぁ。なんかあったらこの亜美さんが何でも聞いてあげるから。遠慮なく相談するのよ? 時也も聖も不幸になって欲しくないから。……っていうか美聖みさとは大丈夫なの? あの子かなり時也に入れ込んでたから……」

「美聖は……納得してません。俺も美聖に嫉妬してますし……。姉弟で男の奪い合いとか馬鹿げてますよね」

 苦く笑むと「でも時也が選んだのは聖なんだから、美聖も追々諦めるでしょう。今だけよ、苦しいのは」と優しく笑んでくれた。

(美聖が諦めても、他にたくさんの女がいるけどな……)

 そんなどす黒い感情が、抗えようもなく俺の心を蝕んでいくことに、僅かに恐怖を感じた。

(俺だけの時也さんにするには――)
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