こんな僕の想いの行き場は~裏切られた愛と敵対心の狭間~

ちろる

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『キュリオス』を出て、帰りのタクシーを呼ぼうとスマートフォンを取り出したのだけれど、来栖くるす先輩が「椎名しいな、もう一軒付き合ってよ」と言ってきたので「はい」と頷いた。

 来栖先輩とハシゴするのはいつものことだったし。
 ただ、こんな風にフラれた後だとちょっと悲しかったけれど、それはわかっていたことだったし、嫌悪感を抱かないと言ってくれたんだから、これからまた普通に先輩と後輩の仲に戻れるんだ、良かったじゃないか、と思った。

 タクシーが来て僕たちは一緒に乗り込む。
 来栖先輩が「フィーメまで」と告げて、僕に「日高ひだかくんから何か連絡来てない? 大丈夫?」と言ってきた。

 そういえばスマートフォンが振動していたな……とスーツの内ポケットからそれを取り出す。

 着信が二件とメッセージが一件入っていた。

葵晴あおはどこにいんの? 来栖先輩と一緒じゃねぇよな?』

 僕は溜め息を吐いて、それから暖人はるとに文章を打ち込む。
『来栖先輩と飲んでる。心配しなくてもフラれたから何もない』と返した。

「暖人から、連絡入ってました。一応メッセージ返信しときました。来栖先輩と飲んでますって」

 すぐにまた着信が鳴ったけれど、それは無視した。
 来栖先輩が“暖人”と表示されているスマートフォンの着信画面を横目に見て険相な表情をして、それから僕の顔を覗き込んだ。

「大丈夫? 椎名」

「大丈夫です」

 笑顔を向けると来栖先輩は質実な顔で僕を見つめた。
 一瞬、その表情にどうしたんだろう?と戸惑ったけれど、やがてタクシーが目的地に到着したらしく、いつの間にか停止していて、来栖先輩が清算してくれて「すみません」と謝ると「気にしないで」と微笑まれた。

 でも──。

 タクシーを降りて僕は目をしばたたかせる。

「来栖先輩……? ここって……?」

 来栖先輩が優艶ゆうえんな笑みを見せた。
 いつも温厚な来栖先輩が見せる笑顔じゃないその笑みに呆然としてしまう。

「そ、ラブホ」

 どういうこと──?
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