17 / 56
17
しおりを挟む
「……え? だって、来栖先輩……僕のこと好きじゃないって……」
来栖先輩は何も言わず建物の中に入っていくと、入口でタッチパネルを操作して部屋を確保している。目隠しカバーが付いた受付でルームキーを受け取ると僕の腕を引いた。
「行こ? 椎名」
どういうこと?
来栖先輩は僕の気持ちには応えられないって言ったはずなのに、何でこんなところに来るの?
でも──。
僕は来栖先輩が好きだから。
もしかしたら、来栖先輩が僕のことを好きになってくれようとしているんなら。そんな可能性がもしもあるんだったら。僕と一緒にいてくれようとしているなら。
僕の孤独が晴れるのかもしれないんだったら──。
黙って、腕を引かれるまま部屋に入った。
簡素なテーブルセットと、大きなベッドしかないその部屋で、来栖先輩は迷うことなくベッドに座った。
「来栖先輩……?」
「咥えて? 椎名。俺は椎名の気持ちには応えられないけど……椎名、女みたいに綺麗な顔してるから、ちょっと興味あるんだよね。そうしたら、もう日高くんのものにならなくて済むよね? 俺が日高くんのものにならないように捕まえててあげるよ?」
暖人への敵対心と僕への興味本位。
ただ、それだけだった。
所詮、僕なんかと真剣にずっと生きてくれる人なんかいないんだ。
だったら、もう身体だけでも……大好きな来栖先輩と身体だけでも繋がれるなら、一時でも孤独が紛れるのなら、それでいいのかもしれない。
僕はベッドに腰かける来栖先輩に跪いて。
来栖先輩のスーツのスラックスのファスナーを下ろして、下着からまだ萎びたままのそれを取り出してそっと握りしめて、ゆっくり口に咥えた。
咥内に広がる塩っ辛い味を唾液で搔き消すように水音を立てて、根本を指で擦りながら激しく口淫を続ける。
次第に口の中で来栖先輩の昂ったそれが膨張を始め、喉の奥に届きそうなその大きさにえずきそうになって、「ふっ……ぅ……」と辛苦の吐息がこぼれ、唇を少し引くと、来栖先輩が僕の後頭部を押さえた。
「椎名、超気持ちい。女より上手いかも。もっと奥まで咥えて?」
言葉と同時、更に後頭部を押さえ込まれて、喉に刺さりそうになるそれに、先ほど飲んだジンフィズが逆流しそうになる苦しさに目尻から涙が伝った。
来栖先輩はその涙に気付いていないようだ。
必死に熱を帯びる杭に舌を絡ませながら、上目遣いで来栖先輩を見上げると、恍惚とした表情で僕が与える快楽に酔いしれている。
「っ……ふ」
嘔吐感を堪えながら、でも、大好きな来栖先輩を満たせてあげたいと思って、必死で唇と舌と指で愛撫を続けると、来栖先輩が唐突に僕の後頭部を離した。
「このまま抜いてもらおうと思ったけど、気が変わった。椎名、挿れてあげるね?」
見たことがない雄の顔をした来栖先輩に、僅かに身震いした。
来栖先輩は何も言わず建物の中に入っていくと、入口でタッチパネルを操作して部屋を確保している。目隠しカバーが付いた受付でルームキーを受け取ると僕の腕を引いた。
「行こ? 椎名」
どういうこと?
来栖先輩は僕の気持ちには応えられないって言ったはずなのに、何でこんなところに来るの?
でも──。
僕は来栖先輩が好きだから。
もしかしたら、来栖先輩が僕のことを好きになってくれようとしているんなら。そんな可能性がもしもあるんだったら。僕と一緒にいてくれようとしているなら。
僕の孤独が晴れるのかもしれないんだったら──。
黙って、腕を引かれるまま部屋に入った。
簡素なテーブルセットと、大きなベッドしかないその部屋で、来栖先輩は迷うことなくベッドに座った。
「来栖先輩……?」
「咥えて? 椎名。俺は椎名の気持ちには応えられないけど……椎名、女みたいに綺麗な顔してるから、ちょっと興味あるんだよね。そうしたら、もう日高くんのものにならなくて済むよね? 俺が日高くんのものにならないように捕まえててあげるよ?」
暖人への敵対心と僕への興味本位。
ただ、それだけだった。
所詮、僕なんかと真剣にずっと生きてくれる人なんかいないんだ。
だったら、もう身体だけでも……大好きな来栖先輩と身体だけでも繋がれるなら、一時でも孤独が紛れるのなら、それでいいのかもしれない。
僕はベッドに腰かける来栖先輩に跪いて。
来栖先輩のスーツのスラックスのファスナーを下ろして、下着からまだ萎びたままのそれを取り出してそっと握りしめて、ゆっくり口に咥えた。
咥内に広がる塩っ辛い味を唾液で搔き消すように水音を立てて、根本を指で擦りながら激しく口淫を続ける。
次第に口の中で来栖先輩の昂ったそれが膨張を始め、喉の奥に届きそうなその大きさにえずきそうになって、「ふっ……ぅ……」と辛苦の吐息がこぼれ、唇を少し引くと、来栖先輩が僕の後頭部を押さえた。
「椎名、超気持ちい。女より上手いかも。もっと奥まで咥えて?」
言葉と同時、更に後頭部を押さえ込まれて、喉に刺さりそうになるそれに、先ほど飲んだジンフィズが逆流しそうになる苦しさに目尻から涙が伝った。
来栖先輩はその涙に気付いていないようだ。
必死に熱を帯びる杭に舌を絡ませながら、上目遣いで来栖先輩を見上げると、恍惚とした表情で僕が与える快楽に酔いしれている。
「っ……ふ」
嘔吐感を堪えながら、でも、大好きな来栖先輩を満たせてあげたいと思って、必死で唇と舌と指で愛撫を続けると、来栖先輩が唐突に僕の後頭部を離した。
「このまま抜いてもらおうと思ったけど、気が変わった。椎名、挿れてあげるね?」
見たことがない雄の顔をした来栖先輩に、僅かに身震いした。
11
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる