ラストヒーロー:魔王軍全戦力vs.僕1人

混沌世界終焉

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第3章/幻想物語 魔女の夢(過去の記憶)

第21話/忘れじの記憶 01-才能開花[ライメル]

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昔のことは、今でも鮮明に覚えている。
あんな事があったんだ、忘れられるわけが
ない。

あの頃の僕は、泣き虫で、背が低くて、
その上ものすごく弱虫で。
何にも出来ない人間だった。

ある日、僕はいじめっ子に見つかって、
家に帰る途中に、何時間も殴られた。
やり返すことは出来なかった。
負けるって、分かっていたから。

でも、いつも僕を助けてくれる人がいた。

*   *   *

「ライメル…?大丈夫なの、立てる?」

イリナかな、今日も僕を助けてくれるのか。

「うん、立てるよ。
 こんなの毎日やられてるし、もう慣れっ子
 だから平気だよ。」

僕は、弱虫のくせして、イリナの前では
いつも格好つけていた。
唯一僕を助けてくれる、僕の味方でいて
くれる人の前で、みっともない姿を晒したくはなかったから。

「慣れっ子って、それがダメなの!
 そんなこと言ってたら、どんどんイジメ
 ひどくなるよ?」

最近、僕によくそう言ってくる。
僕は全然平気なんだ。なのに、なぜイリナは
しつこく言ってくるんだ?
この頃の僕は、その意味が分からなかった。

*   *   *

ある日、僕はおつかいに行った。
こんなに弱い僕だけれど、誰かのお役に
立ちたかったから。
だから、お母さんに自ら”おつかいに行く”
と言って、僕は店に向かった。

すると、いつものいじめっ子が居た。
まあ、いつも通り殴られるか…はぁ。
今日も家に帰ったら、お母さんに心配される
のかな。心配、かけたくないな…
最近毎日、傷だらけで家に帰るから、最近は
ずっと僕を心配している。

ありがたいけど、心配をかけるのは嫌いだ。

じゃ、殴られてくるか。

「おい、ライメル!
 どうしたんだよ、その金ぇ!」

「よこせ、よこせ!」

ああ、そうか。今日はおつかいだから、お金を持ってきてるんだ。
このお金を取られるのは、お母さんに申し訳ないなあ…
逃げられる気はしないけど、一応走って
逃げてみようかな。

*   *   *

くそっ、まだ追ってくるのかよ…

もう、何分走っているか、分からない。
そもそも、僕って体力が少ないんだ。

僕は全力で逃げたが、結局いじめっ子に
捕まった。
僕は、殴られた。蹴られた。石を思いっきり
投げられた。おまけにお金も盗られた…
僕の顔は傷だらけになっていた。
水面に写った僕の顔は、とても醜かった。

「こんな顔で、家に帰るのか…
 今日もお母さんは心配するのかな…」

しかも、お金を盗られたから、おつかいも
出来てないじゃないか。

僕は、人の役に立ちたいのに…
頼まれた仕事すら出来ないのか…?
僕が、弱いからなのかな。
こんなに僕が弱いだなんてな。

*   *   *

家に帰ると、思った通りお母さんに心配
されてしまった。

ごめんね、お母さん…
僕が、弱く生まれたから、だよね。
お母さんは、これから苦労する味だろうな。
僕のせいで、苦労する。

いつか、お母さんを助けられるほど、強く
かっこいい人に成たいな。

*   *   *

次の日、僕は珍しく、昼頃に目が覚めた。
そして、街から人が消えていた。
ただ、1人を除いて。

それは、イリナだった。

「なんで、イリナだけが、ここに?」

僕が1番最初に言った言葉は、これだった。

「なんでって、ここに住んでるから
 当たり前じゃない?」

普通の答えが返ってきた。

「じゃ、大人が1人もいないのは、なんで 
 なんだろうね。」

そう聞くと、イリナは少しの間、沈黙した。
その後に、彼女は優しく言ってくれた。

「まあ、今は2人だけなんだし、ちょっと
 この状況を、楽しも…?」

そう言って、彼女は僕の手を引いた。
正直、この時のイリナは、怖かった。
なんだかイリナが、人間ではない何かに
見えたからだ。

僕はとっさに、彼女の手を振り払った。

「お前、イリナじゃないだろ…?
 一体誰なんだよ。」

その時、イリナの姿形は豹変し、一瞬に
して、恐ろしい魔物へと変化した。

僕はこの日、初めて魔物を見た。

恐ろしく長い指と爪、高い身長に、紫色の
ワンピースの様な服と、大きな帽子。
間違いなく”魔女”だ。

魔女は、魔物の中でも最上位の強さを誇る
魔物だって、聞いた事がある。
そして、人に変身するのが得意で、よく
人を騙して、その人間を食べるって事も
よく聞いた話だった。

僕は、全身が震えていた。
魔女は、おかしな目をして、こちらをじぃー
っと見つめてくる。
その時僕は、目を逸らす事が出来なかった。
目を逸らしたら、死ぬと思ったから。

恐怖で動けなくなっていた。

そして、僕はようやく気づく事が出来た?

「ああ、みんなこの魔物に、1人残らず
 殺されたんだな…
 じゃあ、僕もそろそろ、死ぬのかな…?」

僕は、生きる希望を失った。
誰もいない街で、生きる気力なんてない。
いいや、それは違うかな。
正確に言えば、イリナのいない街で、生活
するのが嫌だったんだ。

お母さんには、心配かけたくなかったから、
悩みを何一つ打ち明けられなかった。

でも、イリナには、なんでも話す事が出来た
んだ。そう、なんでも。
僕の心の拠り所は、間違いなくイリナだった
んだなって、この時気づいた。

そんなイリナがいない世界で、僕は生きて
いける訳がないじゃないか。

そう思って、ゆっくり目を閉じて、魔女に
殺されるのを待とうとした。
その時、微かに声が聞こえたんだ。

「…ん…?誰の声だ…?」

どこから声がするんだろう。
方向的に、瓦礫の下みたいだけど…

「僕の名前を、呼んでいるのか…?」

僕は必死に、耳を澄ませた。
聞こえてくるのは、毎日の様に聞いていた、
イリナの声だった。

その時、僕はまだ死にたくないと、強く
思ったんだ。
気づけば、魔女なんか恐れずに、イリナを
助けに行こうと、足が勝手に動いていた。

でも、もう遅いらしい…
足は完全に潰されて、体の感覚が、ほとんど
無くなっているらしい。
そして、死ぬ前に彼女は言った。

「ライメル…?ごめん、ねぇ…?
 私、ぜんぜん貴方の事を、守れな、かった
 よね…?いいや、言いたい事が、一つだけ
 残って、いるの…

 強く、なってね…、?」

僕は、彼女の前で、膝から崩れていった。
生まれて初めて、大切な人が目の前で死ぬ
って事を経験した。

絶望感が圧倒的に多かったけれど、その他に
もう一つだけ、思った事がある。

街を、大事な人を、こんなメチャクチャに
した、この魔物に対する、激しい怒りだ。

そして、僕の炎魔術師としての才能が、今
初めて花開いた。

第21話/忘れじの記憶 01-才能開花[ライメル]














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