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第6章〜祭の始まり〜
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いよいよ、学園祭が始まった。
僕らと桐崎さんの『魔法戦』は学園祭の目玉の1つとして扱われており、開始時刻は昼の3時からでかなりの集客を期待されている。月兎先生が言うにはテレビ等のメディアでも放送されるとのこと。
(ーーまさかこの『魔法戦』が咲夜の今後を決める戦いだなんて、観戦している人には想像出来ないだろうな…。)
今の時刻は午後2時前で『魔法戦』開始まで1時間程余裕があるが、実況者による紹介文等の打ち合わせがあるため、僕らは既に『仮想訓練棟』の一室に集まっていた。
未だ時間があるからか、僕らはそれなりにリラックスした雰囲気で待機していた。
「それにしても、正式に入学してからたった1ヵ月で大注目の『魔法戦』に参加することになるなんて、凄い事態よね。」
「注目される1番の要因は最近だと殆ど『魔法戦』に参加してない『剣の巫』が出場するからだけどね…。」
姉さんに僕は苦笑いをしながら応えた。
そんな何気無い会話をしていると、唐突にドアがノックされた。
部屋に入って来た人物は3人で、その内2人は月兎先生と稲葉先生だった。残りの1人は少なくとも僕は面識の無い人で、その人は黒のショートヘアで身長は僕と同じくらいだろうか。人当たりが良さそうで社交的な雰囲気が特徴的な女性だ。
「失礼します。自分は今回行われる貴方たちの『魔法戦』で実況兼解説を務めます黒川(くろかわ)と言います。試合前で申し訳無いのですが、幾つか確認と質問をさせて下さい。」
「あっ、分かりました。僕は一応このパーティのリーダーをしている紲名玲と言います。それでこっちが僕の双子の姉である明日花、こちらが桐崎咲夜と結月朱莉です。」
差し出された黒川さんの右手を握り返しながら、パーティの代表として自分とメンバーの紹介をした。
「ご丁寧にありがとうございます。本日はよろしくお願いしますね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
こうして、黒川さんとの話し合いが40分程行われた。
「忙しい中ありがとうございます。それでは自分は他の準備があるので失礼します。『剣の巫』との戦い、楽しみしてますね。」
黒川さんはそう言い残すと相変わらず朗らかな笑顔のままで、部屋を後にした。
「さて、みんな、インタビューお疲れ♪ステージに呼ばれるまで未だ少し時間があるみたいだから、それまでゆっくりしててね♪」
「わかりました。」
「じゃあ、また呼びに来るね♪」
そう言い終えると、月兎先生と稲葉先生も部屋から去っていった。
「インタビューを受けるなんて、いよいよ咲夜ちゃんのお母さんと闘うのを実感するわね。」
「そう言ってる割にそんな緊張して無い感じだけど、朱莉ちゃん?」
「そうかしら?でも、緊張して動けないよりは良いでしょう?」
「それもそうね。」
(ーー姉さんたちは随分とリラックスしてるし、頼もしい限りだ。)
姉さんたちの会話を聴いていて、ふと咲夜はどうだろうと思った僕は何気無く彼女の方に視線を移す。そこには普段の真面目な表情はなく、むしろ『魔法戦』前だと言うのに柔らかく笑みを浮かべて姉さんたちのやり取りを見ている彼女がいた。
「どうかしましたか?玲?」
僕の視線に気が付いた咲夜は首を傾げながら尋ねてきた。
「いや、咲夜は緊張して無いのかな、と思って…。」
「私ですか?自分でも不思議なくらい落ち着いているのが良くわかります。以前の私なら考えられないですね。」
穏やかな笑みのまま、無理矢理取り繕っているわけでも無く本当にリラックスしているようだ。
「何か理由でもあるの?」
咲夜がどうして落ち着いているのか興味を持った僕は何となく、その理由を聴いてみた。
そんな質問を受けて、咲夜の笑顔が少しだけ雰囲気が変わった気がする。
「そうですね…。考えられるのは、あの約束のおかげかもしれませんね。」
「えっと、それってもしかして…?」
「はい。玲との約束ですよ。」
「やっぱり?」
少し前に僕と咲夜はちょっとした出来事があり、その結果ある『約束』をした。その内容は、僕らのパーティ4人全員で『魔女』になると言う咲夜の願いを叶えるのに協力すると言う事である。
「あの『約束』を果たすためにも、こんな所で躓くことは出来ませんよね?」
「まぁ、確かにね…。」
僕が咲夜の願いを叶える事を一切疑っていない瞳で僕の顔を見てくる咲夜に、僕は自分の鼓動が少し速くなるのを感じつつも、改めてこの『魔法戦』に臨む覚悟を決めて言葉を返した。
咲夜と2人でそんな話をしていると、横から姉さんが声を掛けてくる。
「ふーん?2人とも随分仲良くなったわね?お姉ちゃん、玲たちにはそうゆうのは、未だ早いと思うんだけど?」
(ーー何を言っているんだ、この人は…?一体何をどう聴けばそんな考えになるの?)
姉さんの発言に僕は言葉を失い、思わず姉さんに冷ややかな視線を向けてしまった。一方、咲夜は理解出来ていないのか顔を傾け疑問符を浮かべている。
ちなみに朱莉さんはと言うと、可笑しそうに微笑みながらこちらの様子を観察していた。
そんな僕と咲夜の反応を見た姉さんは自分が考え過ぎていた事を察したのか、しかめっ面だった表情を緩めて普段通りの笑顔に戻った。
「どうやら私の勘違いのようね。ごめん、ごめん。」
「たまに姉さんはの思考回路って暴走するよね…。」
「そんな時もあるものよ、玲。」
「そういうものかな?」
ここで僕と姉さんのやり取りを見ていた朱莉さんが突然小さく笑い声を溢す。
「本当、玲ちゃんも明日花ちゃんも面白いわね。私、このパーティを組めて良かったと思うわ。みんなを見ていると退屈しないもの。」
「そんなに面白い?」
「ええ。これからこのパーティにとって大事な『魔法戦』があるのに、殆ど緊張しているように見えないもの。まぁ、私が言える事ではないかもしれないけどね。」
率直な僕の疑問に朱莉さんは暖かい笑顔で答えてくれた。
そうこうしていると部屋に扉がノックされる音が響き、月兎先生と稲葉先生が部屋に入って来る。
「やっほー♪そろそろ、移動の時間だけど大丈夫かな~?」
どうやら色々と話をしている間に『魔法戦』の時間になってしまったようだ。
僕は息を整えた後、姉さんたちに出陣のための声を掛ける。
「よし!姉さん、咲夜、朱莉さん、相手はかなりの実力者なのは明らかだけど…、訓練の成果を十全に発揮して僕たちの力を桐崎さんに認めさせに行こう‼︎」
「「「了解(です)!」」」
「調子は問題無いかな?厳しい戦いだと思なるだろうけど、頑張って自分たちの望みを掴み取ってきてね♪」
「「「「はい‼︎」」」」
月兎先生に返事をして、僕らは先生たちの案内のもと『魔法戦』の舞台へと歩みを進めた。
何度も『仮想世界』にダイブを繰り返したおかげか、特に問題も無くスムーズに僕らの意識は『魔法戦』のステージに降り立った。
今回の戦闘が行われるステージの形は前に僕らと石川・森内先輩のペアと闘ったステージと同じタイプだが、唯一違う点はステージそのものの大きさである。以前のは半径が25メートル程だったが、今回の場合は半径がその倍の50メートルもある。このステージが一般的に行われる『魔女』同士での公式の『魔法戦』に使われるサイズらしい。
ステージを見回しても桐崎さんの姿は無く、未だダイブしていないようだ。
(ーー事前にステージについて事前に説明は聴いていたけど、こうやって実際に見てみると結構な広さがあるなぁ…。)
そんな事を考えていると、ステージの中心を挟むような形で桐崎さんが姿を現した。
桐崎さんの格好は以前学園に来た時の服装ではなく、白い上衣に紺色の袴という防具のない剣道着のような物を身に纏っている。その風格は桐崎さんの雰囲気も相まって見ている人に神秘的な存在感と武道の達人が持つ静かな威圧感が混ざりあった印象を与える。
「さあ、いよいよ注目の1戦が始まろうとしております!実況は前の試合に引き続きいて、私、黒川が、そして解説には出場選手である学生さんたちの担任を務めておられる月兎リト先生にお越しいただきました!月兎先生、よろしくお願いします。」
「やっほー♪今、紹介された月兎リトで~す♪本日はよろしく~♪」
「それでは早速、質問して行きたいと思います。先ず…。」
黒川さんと月兎先生のやり取りを聞き流しながら、僕はパーティを代表して桐崎さんに声を掛けようと試みる。
「お久しぶりです、桐崎さん。大体、1ヵ月ぶり位ですかね?」
最初に挨拶から入ってみたが、桐崎さんは少しだけ不機嫌そうな表情を見せ、ゆっくりと口を開く。
「申し訳ないけど、こういった公の場で話をするのは得意ではありません。ですが折角の機会なので、私から1つだけ、私の考えを伝えておきます。」
桐崎さんはそこまで言い終えると、静かに眼を閉じる。
「この世界には多くの『力』が存在します。私たち『魔女』の扱う魔法や身体能力、知力、財力、権力等の数えるのが難しいほどに。でも、これらの『力』が有する本質は、その所有者の夢や願い、想い、そして野望を叶えるための道具に過ぎない。その夢の内容は人それぞれ。だけど『力』が足りない者は『力』ある者の前には、その夢を叶えることは不可能に等しいと。」
そこまで言い終えると、桐崎さんは殊更ゆっくりと瞼を開く。
「だからもしも、貴方たちが私に何かを要求するなら、貴方たちの『力』で私を納得させなさい。貴方たちの『力』、この『剣の巫』が見定めてあげます。」
「元より、そのつもりです!」
(ーーこの勝負に勝って、僕らの望みを実現してみせる!)
姉さんたちも僕に同意するように頷いた。
そんな僕らの様子を見て、黒川さんが声を上げる。
「おっと?どうやら、両チームやる気充分のようです!これは今から試合が楽しみです!」
その後も黒川さんの軽快な実況が続いていたが、僕らと桐崎さんの間で言葉は交わされなかった。
「さぁ、間もなく試合開始時刻となります。観客の皆様も是非、一緒にカウントダウンをお願いします!」
黒川さんがそこまで言い終えるとほぼ同じタイミングで僕らの目の前にも電子モニターが出現し、会場全体でカウントダウンが始まった。
「じゃあ、やろうか。みんな!」
僕が意識を戦闘に集中させながら出した掛け声に合わせて姉さんたちも戦闘態勢へと移行する。
一方、桐崎さんは威風堂々とした態度を保ったまま特に構えることはなく、僕らの様子を見ていた。
「それでは、バトルスタートです‼︎」
黒川さんの開始を告げる言葉と共に電子モニターが消失し、ステージに開始の合図が響き渡る。
いよいよ、僕ら4人と桐崎さんとの負けられない闘いの火蓋が切って落とされた。
開始の合図が鳴った瞬間、僕らは僕を先頭に姉さん、咲夜、朱莉さんの順に桐崎さんへと向かって駆け出す。
それに応じる様に桐崎さんは軽やかに右腕を振るうと一瞬で大剣を創り出し、流れる様な動作でそれを掴み取りながら僕らの方へ間合いを詰めに来た。
(ーー聴いてはいたけど、本当に凄まじい剣の生成速度だ!)
そして、先頭の僕が桐崎さんの間合いに入った瞬間に左上から大剣を振り下ろして来る。
僕は大剣の軌道を『魔力感知』を応用することで瞬時に読み取り、『魔力障壁』と魔術を同時展開する。
「封印結晶。」
展開した『魔力障壁』に魔術の上掛けが終わった瞬間、桐崎さんの大剣が『魔力障壁』へと斬りかかってきた。
「…。」
大剣と『魔力障壁』がぶつかりあうが、予想していた結果にならなかったせいか桐崎さんは眉を少しだけしかめた。
実際、『法術』で強化されている大剣と桐崎さんの剣術の腕前があれば、僕のような一学生が展開した『魔力障壁』くらいなら容易く斬り裂ける程の威力がある。しかし今、目の前では僕の『魔力障壁』は斬り裂かれるどころか傷一つ無いまま、桐崎さんの大剣を受け止めきっている。
もちろん、これにはカラクリがある。それは直前に使った魔術のおかげだ。この魔術は元々は特定の条件を満たすことで任意の物質や魔術を結晶に封印するように変化させている訳だ。
そして、今回の封印、正しく言うと変化させた対象はと言うと『魔力障壁』に発生した衝撃等のエネルギーそのものである。そのため、今の僕の手元には桐崎さんの斬撃が持っていた運動エネルギーを変化した結晶がある。
この魔術は月兎先生の目に見えない音による衝撃波を何とか結晶化して利用出来ないかと試行錯誤した結果、改良したおかげで大分利便性の高い魔術へと昇華させる事が出来た。
そんな状況に戸惑いを見せた桐崎さんに僕は反撃のキッカケ作りの為、新たな魔術を桐崎さんの足下に展開させる。
しかし、流石は超一流の『魔女』なだけあって桐崎さんの対応は素早い。
僕が魔術を使おうとすると、すぐさまバックステップで魔術の範囲外へと移動した。
そのため桐崎さんが居た地面から対象を拘束しようと出現した結晶が虚しくも宙を掴む。
(ーーやっぱり、速いな。でも、役割としては充分!)
そう判断した僕の後方から姉さんが右方向へと飛び出す。次の瞬間には右手に持っているハンドガンの銃口を桐崎さんへと合わせて魔術を発動させる。
「フレイムカノン!」
銃口の先から直径2メートル以上はある大きな火球が現れ、桐崎さんに向かって放たれる。魔術を確認した桐崎さんは素早く体勢を立て直すと、攻撃への対処行動を起こす。
「風神の刃。」
桐崎さんが術名を唱えると、彼女の持っている大剣を覆うように風の剣が生み出された。
その大剣で迫り来る火球を真下から斬り上げると同時に大剣に纏っている風の力を解放することにより上空へ向かう暴風が出現した。この防御のせいで姉さんが放った魔術は散り散りになりながら舞い上がってしまい、桐崎さんに届くことはなかった。
(ーーだけど、僕らの攻撃は未だ終わってない!)
そんな僕の思考に応えるかのように、左右からそれぞれ金色と銀色の尾を引く影が桐崎さんを挟み込む為に駆け出した。もちろん、これらの正体は朱莉さんと咲夜に決まっている。
桐崎さんは一切動揺することなく視線を動かして一瞬だけ朱莉さんを確認すると、すぐさま、もう一方から迫って来ている咲夜の方に身体の向きを変えて振り上げた大剣をそのまま上段に構える。
「…っ⁉︎」
(ーー何故か嫌な予感がする。)
その桐崎さんの対応行動を見た僕に虫の知らせとでも言うべきなのか、なんとも言えない直感が来た。僕はその直感を本能的に信じ、左手にある結晶を咲夜と桐崎さんの間を目掛けて素早く投げ込む。
「えっ?」
僕が結晶を投げようとし始めるた時、朱莉さんが驚きの声を上げ脚を止めてしまう。
どうやら桐崎さんが朱莉さんの進行ルートに『魔力障壁』を突如展開させたようだ。
本来『魔力障壁』は防御手段の1つとして使われているのだが、今回桐崎さんは朱莉さんが自分の元に辿り着くための時間稼ぎとして使用したのである。『魔力障壁』は使用者から距離が空くとその強度が著しく落ちてしまうが、この咲夜と桐崎さんの挟撃のタイミングを狂わすには充分な働きと言える。
そして朱莉さんが来るまでに咲夜の攻撃行動に対して、反撃、若しくは行動不能状態にしようと言うのが桐崎さんの思惑なのだろう。
咲夜と朱莉さんの動きを見て、次の瞬間には最適解を導き出して実行出来るのは、まさに強者そのものと言える。
(ーーでも、そんな事はさせない!)
「解!」
僕は咲夜と桐崎さんの2人の間に投げた結晶が届いたと同時に、その結晶に変化させていた魔術を解除する。すると、その結晶があった場所を中心に威力は低いが全方位に衝撃波が疾る。
「っ!」
この予想外の衝撃波で咲夜と桐崎さんがダメージを受けることはなかったが、桐崎さんに向かっていた咲夜の脚は強制的に止まり、桐崎さんの反撃の構えも僅かながらに崩れた。これにより、少しだけ時間を稼ぐことが出来た。
その稼いだ時間のおかげで桐崎さんの『魔力障壁』を最小限の動きで迂回した朱莉さんの攻撃が間に合う。
しかし、桐崎さんの判断は相変わらず素早く、構えが崩れたと分かると直ぐに僕ら4人から距離を取るように大きく2回跳躍をした。
結果として、僕ら4人も桐崎さんもこの交戦でダメージをお互いに与えることは出来なかった。
(ーーだけど、全く収穫がなかった訳じゃない!これなら、あの作戦でいける!)
「姉さん、やれるよね?」
「もちろん!」
僕が姉さんに確認のため問い掛けると、待ってましたと言わんがばかりに勢いよく返事が返ってきた。それを聴いた僕はすぐさま行動を起こす。
「咲夜、朱莉さん。作戦通りいくよ。」
僕は桐崎さんに聞こえないように咲夜と朱莉さんに声を掛けると、僕が先行する形で姉さんと共に2人で桐崎さん目掛けて走り出す。その時、視界の隅に咲夜と朱莉さんが小さく頷いたのが見えた。
一方、桐崎さんも僕と姉さんが来ているのを認識すると迎撃のため大剣を構え直す。
「セット!アサシンバレット!」
「クリエイトウェポン!モード・クリスタルトンファー!」
僕と姉さんは桐崎さんに迫りながら、それぞれ魔術を発動させた。
魔術の効力により姉さんのハンドガンには姉さんがイメージした銃弾が装填され、僕の両手には結晶で作られたトンファーが出現し僕はそれを握り締める。
これらの銃弾とトンファーは魔術で生み出しているために魔力の供給が無くなって時間が経過すると消滅してしまうが、法術と異なり素材を必要としないため魔力がある限り幾らでも創造等をすることが可能である。
そして僕が桐崎さんが持っている大剣の間合いに入ると同時に、戦闘が一気に加速する。
僕を両断しよう振り下ろされて来た大剣の軌道に対して、僕はトンファーを斜めに構えることで受け流そうと試みる。大剣とトンファーが接触した時に結晶が削れていく嫌な音が出たものの何とか凌ぎ切れた。
その後、反撃のため体勢を整える作業に並行して、トンファーに魔力を流し込むことで修復を行いつつ、攻撃が出来る間合いへと踏み出す。
しかし、桐崎さんの剣技は凄まじいもので僕が歩みを進めるより早く、振り下ろした大剣を舞のような流麗な動作で僕目掛け斬り返して来た。
「っ⁉︎」
だが桐崎さんの予期せぬ所から大剣に銃弾が直撃することで甲高い音が周囲に鳴り響き、大剣の動きを遮る。そんな出来事に桐崎さんは驚きを隠せなかった。
その銃弾を放ったのは、もちろん僕の姉さんである。
この銃弾は先程姉さんが魔術で創った銃弾だが、大きな特徴としてその名前が表す通り音速を超えて放たれるにも関わらず、ソニックブームや発砲音等の音が発せられない。まさしく暗殺特化の銃弾である。
そもそも、この銃弾は魔術で創られたため通常の銃弾と異なり物理法則に対して強い主体性を持つことが出来る。そのため、空気抵抗や重量等の影響を圧倒的に抑えることが可能なため狙った場所ダイレクトに着弾する。
これは魔法があるこの世界だからこそ存在出来る言葉通り魔法の銃弾と言うわけだ。
さらに、狙撃手である姉さんの腕前もかなり高い。
元々、前の世界で姉さんが得意だったゲームのジャンルがシューティング系で一人称だろうが三人称だろうがお構い無しで圧倒的な狙撃技術で対戦ゲームを無双していた影響か、この世界での姉さんの狙撃能力は凄まじいの一言に尽きる。その上、姉さんが創り出したハイスペック過ぎる銃弾があるのだから鬼に金棒と言って差し支え無い。
そのため姉さんから言わせてみれば、動いている桐崎さんの大剣を射抜くことぐらいはヌルゲーだとのこと。
正直、姉さんの実力を知らない人からすれば理解に苦しむとは思う。
そんな姉さんの狙撃のおかげで桐崎さんの大剣が僕に届くことは無く、結果として僕のトンファーが桐崎さんに襲い掛かる形になった。
しかし、桐崎さんは大剣が弾かれたと理解すると僕の一撃目を『魔力障壁』で防ぎ、続けて放った二撃目が来る前に後方へと回避し、僕と姉さんから大きく距離を開く。
(ーー凄い対応速度だ!これでも当たらないのか!)
とは言え、桐崎さんが強いには分かりきっていた事なので、そこまで驚きはせず僕は桐崎さんへ駆け出す。
「リロード!」
そんな僕の行動に合わせて姉さんは銃弾を再装填するための魔術を使いながら、援護射撃をしやすい位置に移動するため桐崎さんを中心に大きく円を描くように走り出した。現状では、先程姉さんが使った魔術の銃弾は強力ではあるが1回の発動につき1発しか装填出来ず、連射するのが不可能と言う欠点がある。
「予想以上に厄介ですね…。」
僕と姉さんとの力に桐崎さんはそう感想を呟いた後、持っていた大剣を法術で素早く魔素へと還元し、左腕を動かしながらすぐさま次の魔法を展開する。
「大火の短剣。」
静かな声と共に左腕の動きに合わせて、赤々と熱を発する短剣が3本出現する。
(ーー魔術、かな?狙いは…。)
僕は意識を集中させて桐崎さんの体内を巡る魔素の流れを注意深く観察し、桐崎さんが誰を狙っているのかを先読みする。
体内の魔素の流れはそのまま本人の意識の動きそのものであり、魔素の流れが分かればある程度、次の動きやその人の意識配分等を把握することは可能である。一般的には他人の体内にある魔素の流れを感知出来る程の『魔力感知』を持っている人は少ないけど、僕の『魔力感知』なら充分そのレベルに達している。
(ーー先生たちが言うには、『魔力感知』の精度はその人のセンスが必要不可欠で後天的に精度を高めるのは難しいらしい。これは本当に有難い限りだ。)
そんな事を頭の片隅で考えつつも、桐崎さんの狙いを読み解いた僕はそれに先回りするため口を開く。
「姉さん!」
「疾っ!」
桐崎さんの短剣が目標である姉さんに目掛けて飛び始めると、ほぼ同時に僕がそれを姉さんに伝え、それを聴いた姉さんは自身の脚に風の魔術を起動して瞬間的に機動力を引き上げて桐崎さんの放った魔術の攻撃範囲から素早く移動し終える。
桐崎さんの短剣は姉さんが居た場所に辿り着くと起爆し周囲へ爆炎を放つが誰にも傷を負わせることは叶わなかった。
「えっ?」
僕と姉さんの対応が流石に予想外だったのか、桐崎さんは僕と姉さんを交互に見ながら驚いていた。
その好機に僕は更に桐崎さんへとながら肉迫するものの、桐崎さんも僕の接近に反応して冷静さを取り戻す。
「これは、予想以上ですね…。」
そう小さく呟いた桐崎さんは今度は法術を起動して片手剣を2つ作り出し、左右の手に1本づつ握り締めて構えを取る。
「では、もう少し本気で…。」
そして僕がまた桐崎さんの間合いに入ると桐崎さんは右腕に持っている剣を僕へと振り下ろしてくる。それに僕は両手のトンファーを頭上で交差させて受け止めようする。
「ぐっ⁉︎」
桐崎さんの剣とトンファーがぶつかり合い耳障りな音がフィールドに鳴り響いたが、僕はそれどころではなかった。
理由としたは実にシンプルで桐崎さんの攻撃が片手の斬撃とは思えない程の威力だった。そのため僕は本能的にトンファーごと斬り裂かれないように片膝を地面に降ろして少しでも斬撃の威力を抑えようと試みる。
その甲斐あってかギリギリの所で桐崎さんの攻撃を止めることが出来たものの僕は身動きが殆ど取れない状態に陥ってしまう。
(ーーいや、何だよ!この威力は!流石におかしくないか⁉︎って、ヤバい!)
桐崎さんはもう片方の剣を持っている左腕を動かし、僕の胴体を両断しようとして来ているのを僕は感じ取る。
「させない!」
だけど、それを阻むように桐崎さん目掛けて飛んで来た姉さんの銃弾を桐崎さんは左腕の剣で素早く斬り上げた。
(ーー幾ら『身体活性化』で身体能力とかを引き伸ばせるからとは言え、音速を超える銃弾を易々と斬り飛ばすとは…。)
目先の危機が去ったおかげか僕は少しだけ冷静にそんなことを考えてしまったが、桐崎さんは再び僕の生命を脅かして来る。
「四刃。」
呟くように発せられた言葉を受け、僕の左右にそれぞれ2本づつ計4本の魔素で作られた剣が出現する。その4本の剣は創り出した主の意に応えるように僕を斬り捨てようとして来た。
この4本の剣を防ぎきる術を今の僕は持ち合わせておらず身動きも取れない上、姉さんも銃弾の再装填をしているため援護を行うことが出来ないため、まさに絶対絶滅的な状態と言えるだろう。
でも、こんな状況下でも僕は実のところ、割と落ち着いていた。理由は今桐崎さんと闘っているのは僕と姉さんの2人ではなく4人であり、そして僕の後ろから来ている咲夜と朱莉さんの2人ならば、この攻撃に対処出来ると確信してるからだ。
「ハードブースト!」
突如として僕と左から飛んで来ている2本との間に僕のではない『魔力障壁』と共に朱莉さんが魔術を使用した声が耳に届く。
純粋な朱莉さんの『魔力障壁』だけなら、桐崎さんのこの攻撃を防ぐのは難しいだろう。だからこそ、朱莉さんが同時に使った魔術の効果が生きてくる。
この魔術は対象の強度、つまり防御力を一時的に引き上げる効果があり、流石の桐崎さんの攻撃でも強化された『魔力障壁』を破ることは出来なかった。
そしてもう一方から来ている残りの2本はと言うと、咲夜が身に纏っている『オーラ』に触れた瞬間、跡形も無く消失してしまった。
咲夜はそのままの勢いで桐崎さんの懐まで低い姿勢で飛び込み、右腕を後ろに大きく引き絞る。
「いきますっ!」
「……。」
咲夜の掛け声を聴きながらも、桐崎さんは左腕に持っている振り上げた剣を素早く逆手に持ち直す。どうやら、咲夜の一撃を『身体活性化』で耐え切ってから反撃をしようという狙いなのだろう。
(ーー確かに咲夜の魔法属性を考慮すれば威力の高い攻撃手段があるとは思わない。実際、桐崎さんが咲夜に『魔女』としての才能が無いと判断した要因の1つだろうし…。でも…、その判断が命取りになる!)
「っ⁉︎」
桐崎さんが咲夜の右腕で起きている変化を見た瞬間、表情に驚きの色が走った。
咲夜の全身に纏っていた『オーラ』が右腕に集中し、淡い白銀色だった『オーラ』は今、力強く白銀色の輝きを発している。
「くっ!」
ベテランとしての直感なのか、咲夜の様子を認識した桐崎さんは慌てて後方へと下がろうとしている。しかし、一度反撃の構えをしてしまった分のタイムロスがあるせいで咲夜の攻撃には間に合わない。
「ハァ‼︎」
「ガッ⁉︎」
咲夜が右腕に圧縮していた『オーラ』は桐崎さんの身体に吸い込まれるかのように消えていきながらも、そのまま咲夜の拳を腹部に受けた桐崎さんは口から大量の空気を吐き出しながら大きく吹き飛ばされた。
その光景を見た僕は今から1週間程前に行った作戦会議の風景を思い出す。
僕らと桐崎さんの『魔法戦』は学園祭の目玉の1つとして扱われており、開始時刻は昼の3時からでかなりの集客を期待されている。月兎先生が言うにはテレビ等のメディアでも放送されるとのこと。
(ーーまさかこの『魔法戦』が咲夜の今後を決める戦いだなんて、観戦している人には想像出来ないだろうな…。)
今の時刻は午後2時前で『魔法戦』開始まで1時間程余裕があるが、実況者による紹介文等の打ち合わせがあるため、僕らは既に『仮想訓練棟』の一室に集まっていた。
未だ時間があるからか、僕らはそれなりにリラックスした雰囲気で待機していた。
「それにしても、正式に入学してからたった1ヵ月で大注目の『魔法戦』に参加することになるなんて、凄い事態よね。」
「注目される1番の要因は最近だと殆ど『魔法戦』に参加してない『剣の巫』が出場するからだけどね…。」
姉さんに僕は苦笑いをしながら応えた。
そんな何気無い会話をしていると、唐突にドアがノックされた。
部屋に入って来た人物は3人で、その内2人は月兎先生と稲葉先生だった。残りの1人は少なくとも僕は面識の無い人で、その人は黒のショートヘアで身長は僕と同じくらいだろうか。人当たりが良さそうで社交的な雰囲気が特徴的な女性だ。
「失礼します。自分は今回行われる貴方たちの『魔法戦』で実況兼解説を務めます黒川(くろかわ)と言います。試合前で申し訳無いのですが、幾つか確認と質問をさせて下さい。」
「あっ、分かりました。僕は一応このパーティのリーダーをしている紲名玲と言います。それでこっちが僕の双子の姉である明日花、こちらが桐崎咲夜と結月朱莉です。」
差し出された黒川さんの右手を握り返しながら、パーティの代表として自分とメンバーの紹介をした。
「ご丁寧にありがとうございます。本日はよろしくお願いしますね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
こうして、黒川さんとの話し合いが40分程行われた。
「忙しい中ありがとうございます。それでは自分は他の準備があるので失礼します。『剣の巫』との戦い、楽しみしてますね。」
黒川さんはそう言い残すと相変わらず朗らかな笑顔のままで、部屋を後にした。
「さて、みんな、インタビューお疲れ♪ステージに呼ばれるまで未だ少し時間があるみたいだから、それまでゆっくりしててね♪」
「わかりました。」
「じゃあ、また呼びに来るね♪」
そう言い終えると、月兎先生と稲葉先生も部屋から去っていった。
「インタビューを受けるなんて、いよいよ咲夜ちゃんのお母さんと闘うのを実感するわね。」
「そう言ってる割にそんな緊張して無い感じだけど、朱莉ちゃん?」
「そうかしら?でも、緊張して動けないよりは良いでしょう?」
「それもそうね。」
(ーー姉さんたちは随分とリラックスしてるし、頼もしい限りだ。)
姉さんたちの会話を聴いていて、ふと咲夜はどうだろうと思った僕は何気無く彼女の方に視線を移す。そこには普段の真面目な表情はなく、むしろ『魔法戦』前だと言うのに柔らかく笑みを浮かべて姉さんたちのやり取りを見ている彼女がいた。
「どうかしましたか?玲?」
僕の視線に気が付いた咲夜は首を傾げながら尋ねてきた。
「いや、咲夜は緊張して無いのかな、と思って…。」
「私ですか?自分でも不思議なくらい落ち着いているのが良くわかります。以前の私なら考えられないですね。」
穏やかな笑みのまま、無理矢理取り繕っているわけでも無く本当にリラックスしているようだ。
「何か理由でもあるの?」
咲夜がどうして落ち着いているのか興味を持った僕は何となく、その理由を聴いてみた。
そんな質問を受けて、咲夜の笑顔が少しだけ雰囲気が変わった気がする。
「そうですね…。考えられるのは、あの約束のおかげかもしれませんね。」
「えっと、それってもしかして…?」
「はい。玲との約束ですよ。」
「やっぱり?」
少し前に僕と咲夜はちょっとした出来事があり、その結果ある『約束』をした。その内容は、僕らのパーティ4人全員で『魔女』になると言う咲夜の願いを叶えるのに協力すると言う事である。
「あの『約束』を果たすためにも、こんな所で躓くことは出来ませんよね?」
「まぁ、確かにね…。」
僕が咲夜の願いを叶える事を一切疑っていない瞳で僕の顔を見てくる咲夜に、僕は自分の鼓動が少し速くなるのを感じつつも、改めてこの『魔法戦』に臨む覚悟を決めて言葉を返した。
咲夜と2人でそんな話をしていると、横から姉さんが声を掛けてくる。
「ふーん?2人とも随分仲良くなったわね?お姉ちゃん、玲たちにはそうゆうのは、未だ早いと思うんだけど?」
(ーー何を言っているんだ、この人は…?一体何をどう聴けばそんな考えになるの?)
姉さんの発言に僕は言葉を失い、思わず姉さんに冷ややかな視線を向けてしまった。一方、咲夜は理解出来ていないのか顔を傾け疑問符を浮かべている。
ちなみに朱莉さんはと言うと、可笑しそうに微笑みながらこちらの様子を観察していた。
そんな僕と咲夜の反応を見た姉さんは自分が考え過ぎていた事を察したのか、しかめっ面だった表情を緩めて普段通りの笑顔に戻った。
「どうやら私の勘違いのようね。ごめん、ごめん。」
「たまに姉さんはの思考回路って暴走するよね…。」
「そんな時もあるものよ、玲。」
「そういうものかな?」
ここで僕と姉さんのやり取りを見ていた朱莉さんが突然小さく笑い声を溢す。
「本当、玲ちゃんも明日花ちゃんも面白いわね。私、このパーティを組めて良かったと思うわ。みんなを見ていると退屈しないもの。」
「そんなに面白い?」
「ええ。これからこのパーティにとって大事な『魔法戦』があるのに、殆ど緊張しているように見えないもの。まぁ、私が言える事ではないかもしれないけどね。」
率直な僕の疑問に朱莉さんは暖かい笑顔で答えてくれた。
そうこうしていると部屋に扉がノックされる音が響き、月兎先生と稲葉先生が部屋に入って来る。
「やっほー♪そろそろ、移動の時間だけど大丈夫かな~?」
どうやら色々と話をしている間に『魔法戦』の時間になってしまったようだ。
僕は息を整えた後、姉さんたちに出陣のための声を掛ける。
「よし!姉さん、咲夜、朱莉さん、相手はかなりの実力者なのは明らかだけど…、訓練の成果を十全に発揮して僕たちの力を桐崎さんに認めさせに行こう‼︎」
「「「了解(です)!」」」
「調子は問題無いかな?厳しい戦いだと思なるだろうけど、頑張って自分たちの望みを掴み取ってきてね♪」
「「「「はい‼︎」」」」
月兎先生に返事をして、僕らは先生たちの案内のもと『魔法戦』の舞台へと歩みを進めた。
何度も『仮想世界』にダイブを繰り返したおかげか、特に問題も無くスムーズに僕らの意識は『魔法戦』のステージに降り立った。
今回の戦闘が行われるステージの形は前に僕らと石川・森内先輩のペアと闘ったステージと同じタイプだが、唯一違う点はステージそのものの大きさである。以前のは半径が25メートル程だったが、今回の場合は半径がその倍の50メートルもある。このステージが一般的に行われる『魔女』同士での公式の『魔法戦』に使われるサイズらしい。
ステージを見回しても桐崎さんの姿は無く、未だダイブしていないようだ。
(ーー事前にステージについて事前に説明は聴いていたけど、こうやって実際に見てみると結構な広さがあるなぁ…。)
そんな事を考えていると、ステージの中心を挟むような形で桐崎さんが姿を現した。
桐崎さんの格好は以前学園に来た時の服装ではなく、白い上衣に紺色の袴という防具のない剣道着のような物を身に纏っている。その風格は桐崎さんの雰囲気も相まって見ている人に神秘的な存在感と武道の達人が持つ静かな威圧感が混ざりあった印象を与える。
「さあ、いよいよ注目の1戦が始まろうとしております!実況は前の試合に引き続きいて、私、黒川が、そして解説には出場選手である学生さんたちの担任を務めておられる月兎リト先生にお越しいただきました!月兎先生、よろしくお願いします。」
「やっほー♪今、紹介された月兎リトで~す♪本日はよろしく~♪」
「それでは早速、質問して行きたいと思います。先ず…。」
黒川さんと月兎先生のやり取りを聞き流しながら、僕はパーティを代表して桐崎さんに声を掛けようと試みる。
「お久しぶりです、桐崎さん。大体、1ヵ月ぶり位ですかね?」
最初に挨拶から入ってみたが、桐崎さんは少しだけ不機嫌そうな表情を見せ、ゆっくりと口を開く。
「申し訳ないけど、こういった公の場で話をするのは得意ではありません。ですが折角の機会なので、私から1つだけ、私の考えを伝えておきます。」
桐崎さんはそこまで言い終えると、静かに眼を閉じる。
「この世界には多くの『力』が存在します。私たち『魔女』の扱う魔法や身体能力、知力、財力、権力等の数えるのが難しいほどに。でも、これらの『力』が有する本質は、その所有者の夢や願い、想い、そして野望を叶えるための道具に過ぎない。その夢の内容は人それぞれ。だけど『力』が足りない者は『力』ある者の前には、その夢を叶えることは不可能に等しいと。」
そこまで言い終えると、桐崎さんは殊更ゆっくりと瞼を開く。
「だからもしも、貴方たちが私に何かを要求するなら、貴方たちの『力』で私を納得させなさい。貴方たちの『力』、この『剣の巫』が見定めてあげます。」
「元より、そのつもりです!」
(ーーこの勝負に勝って、僕らの望みを実現してみせる!)
姉さんたちも僕に同意するように頷いた。
そんな僕らの様子を見て、黒川さんが声を上げる。
「おっと?どうやら、両チームやる気充分のようです!これは今から試合が楽しみです!」
その後も黒川さんの軽快な実況が続いていたが、僕らと桐崎さんの間で言葉は交わされなかった。
「さぁ、間もなく試合開始時刻となります。観客の皆様も是非、一緒にカウントダウンをお願いします!」
黒川さんがそこまで言い終えるとほぼ同じタイミングで僕らの目の前にも電子モニターが出現し、会場全体でカウントダウンが始まった。
「じゃあ、やろうか。みんな!」
僕が意識を戦闘に集中させながら出した掛け声に合わせて姉さんたちも戦闘態勢へと移行する。
一方、桐崎さんは威風堂々とした態度を保ったまま特に構えることはなく、僕らの様子を見ていた。
「それでは、バトルスタートです‼︎」
黒川さんの開始を告げる言葉と共に電子モニターが消失し、ステージに開始の合図が響き渡る。
いよいよ、僕ら4人と桐崎さんとの負けられない闘いの火蓋が切って落とされた。
開始の合図が鳴った瞬間、僕らは僕を先頭に姉さん、咲夜、朱莉さんの順に桐崎さんへと向かって駆け出す。
それに応じる様に桐崎さんは軽やかに右腕を振るうと一瞬で大剣を創り出し、流れる様な動作でそれを掴み取りながら僕らの方へ間合いを詰めに来た。
(ーー聴いてはいたけど、本当に凄まじい剣の生成速度だ!)
そして、先頭の僕が桐崎さんの間合いに入った瞬間に左上から大剣を振り下ろして来る。
僕は大剣の軌道を『魔力感知』を応用することで瞬時に読み取り、『魔力障壁』と魔術を同時展開する。
「封印結晶。」
展開した『魔力障壁』に魔術の上掛けが終わった瞬間、桐崎さんの大剣が『魔力障壁』へと斬りかかってきた。
「…。」
大剣と『魔力障壁』がぶつかりあうが、予想していた結果にならなかったせいか桐崎さんは眉を少しだけしかめた。
実際、『法術』で強化されている大剣と桐崎さんの剣術の腕前があれば、僕のような一学生が展開した『魔力障壁』くらいなら容易く斬り裂ける程の威力がある。しかし今、目の前では僕の『魔力障壁』は斬り裂かれるどころか傷一つ無いまま、桐崎さんの大剣を受け止めきっている。
もちろん、これにはカラクリがある。それは直前に使った魔術のおかげだ。この魔術は元々は特定の条件を満たすことで任意の物質や魔術を結晶に封印するように変化させている訳だ。
そして、今回の封印、正しく言うと変化させた対象はと言うと『魔力障壁』に発生した衝撃等のエネルギーそのものである。そのため、今の僕の手元には桐崎さんの斬撃が持っていた運動エネルギーを変化した結晶がある。
この魔術は月兎先生の目に見えない音による衝撃波を何とか結晶化して利用出来ないかと試行錯誤した結果、改良したおかげで大分利便性の高い魔術へと昇華させる事が出来た。
そんな状況に戸惑いを見せた桐崎さんに僕は反撃のキッカケ作りの為、新たな魔術を桐崎さんの足下に展開させる。
しかし、流石は超一流の『魔女』なだけあって桐崎さんの対応は素早い。
僕が魔術を使おうとすると、すぐさまバックステップで魔術の範囲外へと移動した。
そのため桐崎さんが居た地面から対象を拘束しようと出現した結晶が虚しくも宙を掴む。
(ーーやっぱり、速いな。でも、役割としては充分!)
そう判断した僕の後方から姉さんが右方向へと飛び出す。次の瞬間には右手に持っているハンドガンの銃口を桐崎さんへと合わせて魔術を発動させる。
「フレイムカノン!」
銃口の先から直径2メートル以上はある大きな火球が現れ、桐崎さんに向かって放たれる。魔術を確認した桐崎さんは素早く体勢を立て直すと、攻撃への対処行動を起こす。
「風神の刃。」
桐崎さんが術名を唱えると、彼女の持っている大剣を覆うように風の剣が生み出された。
その大剣で迫り来る火球を真下から斬り上げると同時に大剣に纏っている風の力を解放することにより上空へ向かう暴風が出現した。この防御のせいで姉さんが放った魔術は散り散りになりながら舞い上がってしまい、桐崎さんに届くことはなかった。
(ーーだけど、僕らの攻撃は未だ終わってない!)
そんな僕の思考に応えるかのように、左右からそれぞれ金色と銀色の尾を引く影が桐崎さんを挟み込む為に駆け出した。もちろん、これらの正体は朱莉さんと咲夜に決まっている。
桐崎さんは一切動揺することなく視線を動かして一瞬だけ朱莉さんを確認すると、すぐさま、もう一方から迫って来ている咲夜の方に身体の向きを変えて振り上げた大剣をそのまま上段に構える。
「…っ⁉︎」
(ーー何故か嫌な予感がする。)
その桐崎さんの対応行動を見た僕に虫の知らせとでも言うべきなのか、なんとも言えない直感が来た。僕はその直感を本能的に信じ、左手にある結晶を咲夜と桐崎さんの間を目掛けて素早く投げ込む。
「えっ?」
僕が結晶を投げようとし始めるた時、朱莉さんが驚きの声を上げ脚を止めてしまう。
どうやら桐崎さんが朱莉さんの進行ルートに『魔力障壁』を突如展開させたようだ。
本来『魔力障壁』は防御手段の1つとして使われているのだが、今回桐崎さんは朱莉さんが自分の元に辿り着くための時間稼ぎとして使用したのである。『魔力障壁』は使用者から距離が空くとその強度が著しく落ちてしまうが、この咲夜と桐崎さんの挟撃のタイミングを狂わすには充分な働きと言える。
そして朱莉さんが来るまでに咲夜の攻撃行動に対して、反撃、若しくは行動不能状態にしようと言うのが桐崎さんの思惑なのだろう。
咲夜と朱莉さんの動きを見て、次の瞬間には最適解を導き出して実行出来るのは、まさに強者そのものと言える。
(ーーでも、そんな事はさせない!)
「解!」
僕は咲夜と桐崎さんの2人の間に投げた結晶が届いたと同時に、その結晶に変化させていた魔術を解除する。すると、その結晶があった場所を中心に威力は低いが全方位に衝撃波が疾る。
「っ!」
この予想外の衝撃波で咲夜と桐崎さんがダメージを受けることはなかったが、桐崎さんに向かっていた咲夜の脚は強制的に止まり、桐崎さんの反撃の構えも僅かながらに崩れた。これにより、少しだけ時間を稼ぐことが出来た。
その稼いだ時間のおかげで桐崎さんの『魔力障壁』を最小限の動きで迂回した朱莉さんの攻撃が間に合う。
しかし、桐崎さんの判断は相変わらず素早く、構えが崩れたと分かると直ぐに僕ら4人から距離を取るように大きく2回跳躍をした。
結果として、僕ら4人も桐崎さんもこの交戦でダメージをお互いに与えることは出来なかった。
(ーーだけど、全く収穫がなかった訳じゃない!これなら、あの作戦でいける!)
「姉さん、やれるよね?」
「もちろん!」
僕が姉さんに確認のため問い掛けると、待ってましたと言わんがばかりに勢いよく返事が返ってきた。それを聴いた僕はすぐさま行動を起こす。
「咲夜、朱莉さん。作戦通りいくよ。」
僕は桐崎さんに聞こえないように咲夜と朱莉さんに声を掛けると、僕が先行する形で姉さんと共に2人で桐崎さん目掛けて走り出す。その時、視界の隅に咲夜と朱莉さんが小さく頷いたのが見えた。
一方、桐崎さんも僕と姉さんが来ているのを認識すると迎撃のため大剣を構え直す。
「セット!アサシンバレット!」
「クリエイトウェポン!モード・クリスタルトンファー!」
僕と姉さんは桐崎さんに迫りながら、それぞれ魔術を発動させた。
魔術の効力により姉さんのハンドガンには姉さんがイメージした銃弾が装填され、僕の両手には結晶で作られたトンファーが出現し僕はそれを握り締める。
これらの銃弾とトンファーは魔術で生み出しているために魔力の供給が無くなって時間が経過すると消滅してしまうが、法術と異なり素材を必要としないため魔力がある限り幾らでも創造等をすることが可能である。
そして僕が桐崎さんが持っている大剣の間合いに入ると同時に、戦闘が一気に加速する。
僕を両断しよう振り下ろされて来た大剣の軌道に対して、僕はトンファーを斜めに構えることで受け流そうと試みる。大剣とトンファーが接触した時に結晶が削れていく嫌な音が出たものの何とか凌ぎ切れた。
その後、反撃のため体勢を整える作業に並行して、トンファーに魔力を流し込むことで修復を行いつつ、攻撃が出来る間合いへと踏み出す。
しかし、桐崎さんの剣技は凄まじいもので僕が歩みを進めるより早く、振り下ろした大剣を舞のような流麗な動作で僕目掛け斬り返して来た。
「っ⁉︎」
だが桐崎さんの予期せぬ所から大剣に銃弾が直撃することで甲高い音が周囲に鳴り響き、大剣の動きを遮る。そんな出来事に桐崎さんは驚きを隠せなかった。
その銃弾を放ったのは、もちろん僕の姉さんである。
この銃弾は先程姉さんが魔術で創った銃弾だが、大きな特徴としてその名前が表す通り音速を超えて放たれるにも関わらず、ソニックブームや発砲音等の音が発せられない。まさしく暗殺特化の銃弾である。
そもそも、この銃弾は魔術で創られたため通常の銃弾と異なり物理法則に対して強い主体性を持つことが出来る。そのため、空気抵抗や重量等の影響を圧倒的に抑えることが可能なため狙った場所ダイレクトに着弾する。
これは魔法があるこの世界だからこそ存在出来る言葉通り魔法の銃弾と言うわけだ。
さらに、狙撃手である姉さんの腕前もかなり高い。
元々、前の世界で姉さんが得意だったゲームのジャンルがシューティング系で一人称だろうが三人称だろうがお構い無しで圧倒的な狙撃技術で対戦ゲームを無双していた影響か、この世界での姉さんの狙撃能力は凄まじいの一言に尽きる。その上、姉さんが創り出したハイスペック過ぎる銃弾があるのだから鬼に金棒と言って差し支え無い。
そのため姉さんから言わせてみれば、動いている桐崎さんの大剣を射抜くことぐらいはヌルゲーだとのこと。
正直、姉さんの実力を知らない人からすれば理解に苦しむとは思う。
そんな姉さんの狙撃のおかげで桐崎さんの大剣が僕に届くことは無く、結果として僕のトンファーが桐崎さんに襲い掛かる形になった。
しかし、桐崎さんは大剣が弾かれたと理解すると僕の一撃目を『魔力障壁』で防ぎ、続けて放った二撃目が来る前に後方へと回避し、僕と姉さんから大きく距離を開く。
(ーー凄い対応速度だ!これでも当たらないのか!)
とは言え、桐崎さんが強いには分かりきっていた事なので、そこまで驚きはせず僕は桐崎さんへ駆け出す。
「リロード!」
そんな僕の行動に合わせて姉さんは銃弾を再装填するための魔術を使いながら、援護射撃をしやすい位置に移動するため桐崎さんを中心に大きく円を描くように走り出した。現状では、先程姉さんが使った魔術の銃弾は強力ではあるが1回の発動につき1発しか装填出来ず、連射するのが不可能と言う欠点がある。
「予想以上に厄介ですね…。」
僕と姉さんとの力に桐崎さんはそう感想を呟いた後、持っていた大剣を法術で素早く魔素へと還元し、左腕を動かしながらすぐさま次の魔法を展開する。
「大火の短剣。」
静かな声と共に左腕の動きに合わせて、赤々と熱を発する短剣が3本出現する。
(ーー魔術、かな?狙いは…。)
僕は意識を集中させて桐崎さんの体内を巡る魔素の流れを注意深く観察し、桐崎さんが誰を狙っているのかを先読みする。
体内の魔素の流れはそのまま本人の意識の動きそのものであり、魔素の流れが分かればある程度、次の動きやその人の意識配分等を把握することは可能である。一般的には他人の体内にある魔素の流れを感知出来る程の『魔力感知』を持っている人は少ないけど、僕の『魔力感知』なら充分そのレベルに達している。
(ーー先生たちが言うには、『魔力感知』の精度はその人のセンスが必要不可欠で後天的に精度を高めるのは難しいらしい。これは本当に有難い限りだ。)
そんな事を頭の片隅で考えつつも、桐崎さんの狙いを読み解いた僕はそれに先回りするため口を開く。
「姉さん!」
「疾っ!」
桐崎さんの短剣が目標である姉さんに目掛けて飛び始めると、ほぼ同時に僕がそれを姉さんに伝え、それを聴いた姉さんは自身の脚に風の魔術を起動して瞬間的に機動力を引き上げて桐崎さんの放った魔術の攻撃範囲から素早く移動し終える。
桐崎さんの短剣は姉さんが居た場所に辿り着くと起爆し周囲へ爆炎を放つが誰にも傷を負わせることは叶わなかった。
「えっ?」
僕と姉さんの対応が流石に予想外だったのか、桐崎さんは僕と姉さんを交互に見ながら驚いていた。
その好機に僕は更に桐崎さんへとながら肉迫するものの、桐崎さんも僕の接近に反応して冷静さを取り戻す。
「これは、予想以上ですね…。」
そう小さく呟いた桐崎さんは今度は法術を起動して片手剣を2つ作り出し、左右の手に1本づつ握り締めて構えを取る。
「では、もう少し本気で…。」
そして僕がまた桐崎さんの間合いに入ると桐崎さんは右腕に持っている剣を僕へと振り下ろしてくる。それに僕は両手のトンファーを頭上で交差させて受け止めようする。
「ぐっ⁉︎」
桐崎さんの剣とトンファーがぶつかり合い耳障りな音がフィールドに鳴り響いたが、僕はそれどころではなかった。
理由としたは実にシンプルで桐崎さんの攻撃が片手の斬撃とは思えない程の威力だった。そのため僕は本能的にトンファーごと斬り裂かれないように片膝を地面に降ろして少しでも斬撃の威力を抑えようと試みる。
その甲斐あってかギリギリの所で桐崎さんの攻撃を止めることが出来たものの僕は身動きが殆ど取れない状態に陥ってしまう。
(ーーいや、何だよ!この威力は!流石におかしくないか⁉︎って、ヤバい!)
桐崎さんはもう片方の剣を持っている左腕を動かし、僕の胴体を両断しようとして来ているのを僕は感じ取る。
「させない!」
だけど、それを阻むように桐崎さん目掛けて飛んで来た姉さんの銃弾を桐崎さんは左腕の剣で素早く斬り上げた。
(ーー幾ら『身体活性化』で身体能力とかを引き伸ばせるからとは言え、音速を超える銃弾を易々と斬り飛ばすとは…。)
目先の危機が去ったおかげか僕は少しだけ冷静にそんなことを考えてしまったが、桐崎さんは再び僕の生命を脅かして来る。
「四刃。」
呟くように発せられた言葉を受け、僕の左右にそれぞれ2本づつ計4本の魔素で作られた剣が出現する。その4本の剣は創り出した主の意に応えるように僕を斬り捨てようとして来た。
この4本の剣を防ぎきる術を今の僕は持ち合わせておらず身動きも取れない上、姉さんも銃弾の再装填をしているため援護を行うことが出来ないため、まさに絶対絶滅的な状態と言えるだろう。
でも、こんな状況下でも僕は実のところ、割と落ち着いていた。理由は今桐崎さんと闘っているのは僕と姉さんの2人ではなく4人であり、そして僕の後ろから来ている咲夜と朱莉さんの2人ならば、この攻撃に対処出来ると確信してるからだ。
「ハードブースト!」
突如として僕と左から飛んで来ている2本との間に僕のではない『魔力障壁』と共に朱莉さんが魔術を使用した声が耳に届く。
純粋な朱莉さんの『魔力障壁』だけなら、桐崎さんのこの攻撃を防ぐのは難しいだろう。だからこそ、朱莉さんが同時に使った魔術の効果が生きてくる。
この魔術は対象の強度、つまり防御力を一時的に引き上げる効果があり、流石の桐崎さんの攻撃でも強化された『魔力障壁』を破ることは出来なかった。
そしてもう一方から来ている残りの2本はと言うと、咲夜が身に纏っている『オーラ』に触れた瞬間、跡形も無く消失してしまった。
咲夜はそのままの勢いで桐崎さんの懐まで低い姿勢で飛び込み、右腕を後ろに大きく引き絞る。
「いきますっ!」
「……。」
咲夜の掛け声を聴きながらも、桐崎さんは左腕に持っている振り上げた剣を素早く逆手に持ち直す。どうやら、咲夜の一撃を『身体活性化』で耐え切ってから反撃をしようという狙いなのだろう。
(ーー確かに咲夜の魔法属性を考慮すれば威力の高い攻撃手段があるとは思わない。実際、桐崎さんが咲夜に『魔女』としての才能が無いと判断した要因の1つだろうし…。でも…、その判断が命取りになる!)
「っ⁉︎」
桐崎さんが咲夜の右腕で起きている変化を見た瞬間、表情に驚きの色が走った。
咲夜の全身に纏っていた『オーラ』が右腕に集中し、淡い白銀色だった『オーラ』は今、力強く白銀色の輝きを発している。
「くっ!」
ベテランとしての直感なのか、咲夜の様子を認識した桐崎さんは慌てて後方へと下がろうとしている。しかし、一度反撃の構えをしてしまった分のタイムロスがあるせいで咲夜の攻撃には間に合わない。
「ハァ‼︎」
「ガッ⁉︎」
咲夜が右腕に圧縮していた『オーラ』は桐崎さんの身体に吸い込まれるかのように消えていきながらも、そのまま咲夜の拳を腹部に受けた桐崎さんは口から大量の空気を吐き出しながら大きく吹き飛ばされた。
その光景を見た僕は今から1週間程前に行った作戦会議の風景を思い出す。
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