1 / 15
序章〜この世界のはじまり〜
しおりを挟む
(ーーどうしてこうなった)
小説やアニメでたまに使われているのを聞くことはあったが、まさか自分が使うような出来事に遭遇するとは思いもしなかった。
今の状況を自分が理解するためにも説明してみよう。
僕こと紲名玲(きずな あきら)は今、床の上で仰向けになっている。そして、目の前には綺麗なセミロングの銀髪を持つ女性が自分の上で馬乗状態で整った顔を驚きの色に染めている。説明終了。
なるほど、現状だけを説明しても、全く理解できないな。などと考えていることで混乱の極みから少しずつだが落ち着きを取り戻しつつある自分に対して目の前の女性が放った一言で混乱の極みに逆戻りすることとなった。
「えっ…?なんで男の人がいるんですか?」
確かに本来ここに男がいるはずないのだから彼女の疑問はもっともである。しかし、彼女の発言を受けて僕は自分の魔法が強制的に解除されていることを理解し、驚愕した。
魔法…そう、この世界は魔法が存在するように改変されたのだ。そして、結論から言ってしまうと、そのように世界を改変したのが僕の双子の姉である紲名明日花(きずな あすか)である。
ちょっと長くなるが、この魔法が存在する世界の成り立ちから今の状況に至るまでを説明させてもらう。
今から、およそ4カ月前…暦の上では秋の終わりが近づいて来た頃。僕と姉は成績には自信があり、学校では真面目で社交性のある優等生を演じてきたおかげで、志望校への合格も確実と言っていいほどだった。そのため、他の学生たちより余裕のある高校3年生の生活を送っていた。
ただ、学校の教師や他の生徒たちには秘密にしていることがある。それは、2人ともアニメやゲーム、漫画などが大好きな所謂隠れオタクだということである。特に、姉はアニメや漫画の女性のキャラが好きの中々、僕には理解しにくい趣味である。
そのためか、男性に対しては身内を除いて、ほとんど興味を持たず、学校生活における振る舞いからはそのことが想像もつかない。そのせいで、見た目の良さもあるためか男子生徒たちからの告白も何度かされているが、全てその場で断るという伝説を作った。そのような、少し一般的とは言えないかもしれないが、いたって普通の高校生活を過ごしていた。
しかし、そんな日常を大きく変える事件が起きてしまった。
ある日の放課後、僕は姉がクラスメイトと共に教室から出て行くのを目撃したが、その際の姉たちの雰囲気から嫌な予感がしたために、僕は姉たちには気付かれないように後をついていった。
後を追うと、体育館裏という学校内で人目に付きにくい場所としての代名詞の場所に移動した。そこで、姉とクラスメイトが口論を始めた。正直、居心地が悪いと感じつつも会話の内容を盗み聴きすると、どうやらクラスメイトである女子生徒は姉に対して、テストの成績や女子生徒が片思いしていたらしい男子生徒からの告白を姉が断ったことについて文句を言っているようだ。
一方、姉の方は女子生徒に対して特に反論することなく話を聴くことに徹していた。おそらく、何を言っても女子生徒にとっては神経を逆撫ですることになりかねないと判断したのだろう。しかし、女子生徒にとってはそんな姉の何も言わない様子すらも気に食わなかったのか感情に激しさが増していく。そして、感情の激しさがいよいよ頂点に達したのか、女子生徒の鞄から何か紙の束みたいなものを取り出し姉に見せた。
その瞬間、姉の表情が驚きに染まった。どうやら、女子生徒が取り出した紙束の正体は、最近姉が新たな趣味の1つとして作り始めたオリジナルの小説の原稿のようだ。
(ーー今時、小説を手書きなのか…)
どうやら、女子生徒が今回、姉を体育館裏に呼び出すという今までになかった現状のキッカケになったのが姉の小説のようだ。
(ーーというか、我が姉ながらハマっているとはいえ学校に自作の原稿を持ってくるなよ。まぁ、そういう所も姉さんらしいっちゃ、らしいけど…)
確かに、受験生として一生懸命勉強しているだろう女子生徒にとって趣味として小説を書いて学校にまで持ってきている姉にテストの点数で負けるという事実は納得することができないだろう。
(ーーまぁ、実際に負けているけど…)
一方で、姉の方はというと大分取り乱した様子で女子生徒から小説の原稿を取り返そう話しかけている。そのような状況を見ながら、僕はこのことを先生たちに報告しに行くべきか如何かで悩んでいた。この場を上手く治める方法が他に思い浮かばないのは事実だが、下手に大事にすると女子生徒と姉が受験に何らかの不利益を被る可能性があるかもと考えたからである。
しかし、現実は僕に充分な考える時間を与えてはくれなかった。女子生徒が、姉の原稿を取り返そうとしている姿に対して何を思ったのか、おもむろに姉の目の前で原稿を引き裂こうとし始めた。
これを見て、僕は意を決して物陰から飛び出しながら女子生徒の行動を止めるために声を掛けてようとした。それと同時に、姉が女子生徒に手を伸ばしながら声をあげようとしていた。
「やめーー」
僕と姉のどちらの声だったのか、或いは同時に叫んだのか、わからないがその瞬間に、俺の視界は突然白い光に覆われるとともに、意識が遠のいて行くのを感じたーーー。
小説やアニメでたまに使われているのを聞くことはあったが、まさか自分が使うような出来事に遭遇するとは思いもしなかった。
今の状況を自分が理解するためにも説明してみよう。
僕こと紲名玲(きずな あきら)は今、床の上で仰向けになっている。そして、目の前には綺麗なセミロングの銀髪を持つ女性が自分の上で馬乗状態で整った顔を驚きの色に染めている。説明終了。
なるほど、現状だけを説明しても、全く理解できないな。などと考えていることで混乱の極みから少しずつだが落ち着きを取り戻しつつある自分に対して目の前の女性が放った一言で混乱の極みに逆戻りすることとなった。
「えっ…?なんで男の人がいるんですか?」
確かに本来ここに男がいるはずないのだから彼女の疑問はもっともである。しかし、彼女の発言を受けて僕は自分の魔法が強制的に解除されていることを理解し、驚愕した。
魔法…そう、この世界は魔法が存在するように改変されたのだ。そして、結論から言ってしまうと、そのように世界を改変したのが僕の双子の姉である紲名明日花(きずな あすか)である。
ちょっと長くなるが、この魔法が存在する世界の成り立ちから今の状況に至るまでを説明させてもらう。
今から、およそ4カ月前…暦の上では秋の終わりが近づいて来た頃。僕と姉は成績には自信があり、学校では真面目で社交性のある優等生を演じてきたおかげで、志望校への合格も確実と言っていいほどだった。そのため、他の学生たちより余裕のある高校3年生の生活を送っていた。
ただ、学校の教師や他の生徒たちには秘密にしていることがある。それは、2人ともアニメやゲーム、漫画などが大好きな所謂隠れオタクだということである。特に、姉はアニメや漫画の女性のキャラが好きの中々、僕には理解しにくい趣味である。
そのためか、男性に対しては身内を除いて、ほとんど興味を持たず、学校生活における振る舞いからはそのことが想像もつかない。そのせいで、見た目の良さもあるためか男子生徒たちからの告白も何度かされているが、全てその場で断るという伝説を作った。そのような、少し一般的とは言えないかもしれないが、いたって普通の高校生活を過ごしていた。
しかし、そんな日常を大きく変える事件が起きてしまった。
ある日の放課後、僕は姉がクラスメイトと共に教室から出て行くのを目撃したが、その際の姉たちの雰囲気から嫌な予感がしたために、僕は姉たちには気付かれないように後をついていった。
後を追うと、体育館裏という学校内で人目に付きにくい場所としての代名詞の場所に移動した。そこで、姉とクラスメイトが口論を始めた。正直、居心地が悪いと感じつつも会話の内容を盗み聴きすると、どうやらクラスメイトである女子生徒は姉に対して、テストの成績や女子生徒が片思いしていたらしい男子生徒からの告白を姉が断ったことについて文句を言っているようだ。
一方、姉の方は女子生徒に対して特に反論することなく話を聴くことに徹していた。おそらく、何を言っても女子生徒にとっては神経を逆撫ですることになりかねないと判断したのだろう。しかし、女子生徒にとってはそんな姉の何も言わない様子すらも気に食わなかったのか感情に激しさが増していく。そして、感情の激しさがいよいよ頂点に達したのか、女子生徒の鞄から何か紙の束みたいなものを取り出し姉に見せた。
その瞬間、姉の表情が驚きに染まった。どうやら、女子生徒が取り出した紙束の正体は、最近姉が新たな趣味の1つとして作り始めたオリジナルの小説の原稿のようだ。
(ーー今時、小説を手書きなのか…)
どうやら、女子生徒が今回、姉を体育館裏に呼び出すという今までになかった現状のキッカケになったのが姉の小説のようだ。
(ーーというか、我が姉ながらハマっているとはいえ学校に自作の原稿を持ってくるなよ。まぁ、そういう所も姉さんらしいっちゃ、らしいけど…)
確かに、受験生として一生懸命勉強しているだろう女子生徒にとって趣味として小説を書いて学校にまで持ってきている姉にテストの点数で負けるという事実は納得することができないだろう。
(ーーまぁ、実際に負けているけど…)
一方で、姉の方はというと大分取り乱した様子で女子生徒から小説の原稿を取り返そう話しかけている。そのような状況を見ながら、僕はこのことを先生たちに報告しに行くべきか如何かで悩んでいた。この場を上手く治める方法が他に思い浮かばないのは事実だが、下手に大事にすると女子生徒と姉が受験に何らかの不利益を被る可能性があるかもと考えたからである。
しかし、現実は僕に充分な考える時間を与えてはくれなかった。女子生徒が、姉の原稿を取り返そうとしている姿に対して何を思ったのか、おもむろに姉の目の前で原稿を引き裂こうとし始めた。
これを見て、僕は意を決して物陰から飛び出しながら女子生徒の行動を止めるために声を掛けてようとした。それと同時に、姉が女子生徒に手を伸ばしながら声をあげようとしていた。
「やめーー」
僕と姉のどちらの声だったのか、或いは同時に叫んだのか、わからないがその瞬間に、俺の視界は突然白い光に覆われるとともに、意識が遠のいて行くのを感じたーーー。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる