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1章 異世界
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「世界も平和になったものよのォ……」
我は自らの身体と共に消えゆく宿敵、“邪神竜”ヴォルガディウスを見つめながら誰にともなく言った。
『聖王龍……貴様も死ぬつもりか?』
ヴォルガディウスが憎しみの篭った声で言った。
「我はこの平和になった世には要らぬ命。それに、貴様もこうでもしないと消滅しないであろう?」
『確かに、貴様の生命全てに宿った聖魔力なら我を消滅することもできるだろうな』
邪神竜ヴォルガディウスは、この世界……この星を破壊しに来た“邪神教団”の親玉であり崇められる神である。
ヴォルガディウスは、ふと、何かに気付いたかのように言った。
『貴様、我と似たような魂をしておるな。同じ境遇にでもあったか』
「そうであろう。貴様、我と同じ転生者であろう?」
そう。我こと“聖王龍”レガディアは、記憶をもったまま2度も転生した、奇怪な存在なのである。
***
我──俺は元々、聖王龍など大層な存在などではなく、地球の日本に住んでいた極々普通の高校生だった。
異世界に召喚されたのだ。親友とその彼女と共に『勇者御一行』として。
親友は勇者だった。その彼女は治癒神官だった。そして俺は、賢者だった。
召喚された理由は、魔王討伐。世界を征服せんとする、他種族を虐げている魔族の王を倒して欲しいと言われた。俺達は引き受ける事にした。
最初は、ゲームのラスボスを倒すぐらいの感覚だった。だが、すぐにそれは甘い考えだと悟ることになる。
初めての戦闘は軍との共闘だった。そこで、魔族との戦いで死傷した兵士達を見て現実とゲームの違いを思い知った。見るも無残な姿で死んでいった兵士を見る度、なんで魔王討伐を引き受けたんだろうって思ったし、諦めようと親友とも話した。
それでも諦めなかったのは一重に、『仲間』が居たからだろう。
10年という長い月日の間、魔王軍と戦い続け、遂に魔王の元へと辿り着いた。そして、魔王を倒しかけたその時、魔王は最期の力を振り絞って勇者である俺の親友を殺そうと魔血の槍を飛ばした。俺はそれを庇い死んだ。
俺は少し強い魔法使いでしかないが、勇者である親友は英雄だ。彼が残らないと、世界に混乱が巻き起こるかもしれない。そう思って庇った。それに、元の世界に帰れないと聞いていたので、未練は無かったしな。
共に戦ってきた仲間に看取られながら、俺はそのまま安らかな眠りへと身を預けた。
その140年後、そこで終わるものだと思っていた俺の命は、『転生』という形で生き長らえた。転生した先は、魔族種の漆鬼族である。実は、俺達が魔王討伐を成し遂げた後も魔族は生き残り、魔大陸の奥地でひっそりと生き延びていたらしい。俺が魔族に転生して見た光景は、今度は魔族の領地である魔大陸を侵攻し、魔族を奴隷にする人間と亜人種の姿、そして貧しい生活を強いられている魔族の姿だった。
つまるところ、結局どちらが上に立ったところで敗者は奴隷のように扱われるのだ。人間も、上に立って調子に乗り、魔族と同じような事を行ったのである。
俺は憤慨した。そして、嘆いた。この状況を打開するため、俺は自らを魔王と名乗り、魔王国の再建、魔大陸での生活水準の向上などを行った。
魔族を虐げ、残虐の限りを尽くした人間には容赦なく攻撃したし、逆に必要以上に人間を虐げている魔族も処刑した。
そうこうしている内に100年が経ち、人間の国々では、俺を恐るべき魔王として敵視し、討伐隊が組むようになった。
そして、2度目の勇者召喚が行われた。俺の親友である元勇者とその妻である元治癒神官など、エルフ族以外の元仲間達は全員寿命死しており、仕方の無い勇者召喚だったらしい。
新しい勇者達は、俺達の時とは違い、50年の月日を費やし俺の所に来た。何故か勇者の外見が少年のままだったのが衝撃だった。
俺は勇者が来ることを予想し、1人で魔王城に残っていた。勇者を説得するためだ。
俺は勇者に、自らの話をし、現状を正しく伝え、そして頼み事をした。
『俺が死んだ後、お前達と俺の部下である四天王、協力して世を正しい平和な物にして欲しい』と。
実は、俺は信頼する部下に自らの前世の事や俺の目的を教えていた。それに最も同意し、支えてくれたのが四天王達である。
勇者も、人間族に思うところがあったのか、直ぐに納得し、協力することを約束してくれた。
そこから先、どうなったかは知らない。俺は自ら命を絶ったから。俺という世界共通の敵が居れば争いは収まらない。そう思っての自害だった。
これで終われば良かったが、その200年後、今度は聖王龍として転生していた。
世界は平和になっていた。魔族と人間、亜人種が仲良く共存し、切磋琢磨し合う。そんな世界になっていたのである。さらに言えば、技術力も進歩し魔道技術が進化、魔道具の能力も向上していたりと、色々な部分で良いことづくしになっていた。
俺はそんなこの平和になった世界を、人間達が対処出来ないような強大でおぞましい『外』の敵から守護することが使命である聖王龍となった俺は、そんな世界を見守りながら、時に1人で、時に勇者達の子孫と共に世界を平和にするために戦い続けていた。
そして、俺が聖王龍となってから1000年後、邪神竜率いる邪神教団が外界から侵略、世界破壊をしに攻めてきた。俺はそれを、世界が破壊される直前に食い止め、自らの全聖魔力を使い異界に邪神竜を引きずり込み、消滅させている。それが今の状況だ。
その余波のようなもので、世界の文明は壊されてしまったが、元々世界が平和だった事で、復興作業は捗っていた。
冒頭で言った言葉は、それを見ながら言った言葉でもある───────
***
我は、自らの辿ってきた数奇な運命を思い出しながら目を瞑る。
『何故、貴様は……我と同じような運命を辿ったというのに、世界に絶望しなかったのか?』
ヴォルガディウスが尋ねた。
「貴様も、勇者召喚、転生、転生という運命に囚われていた魂だったか」
『あぁ、そうだ。もっとも、その運命の中で我は世界に絶望し、このような事を行ったがな』
「貴様が何にどう絶望したのかは分からないでもない。だが、世界には……希望がある。未来がある。どれだけ世界が愚かだろうと、歪だろうと人々が生きる為に必要な柱である事は変わりない」
我は、ヴォルガディウスの言葉に対して、しみじみと言った。
『…………ふはは。そうか。確かにそうだな。ありがとう……おかげで最期は絶望せずに済みそうだ』
ヴォルガディウスは突然笑いだして言った。そして、まるで成仏するかのように、光の粒となって消えてゆく。
「………………哀れよの、ヴォルガディウス。さて、やっとこの人生も終わりだ。…………これ以上転生するのは、流石に勘弁被るな」
その言葉が最期の力だったかのように、俺もヴォルガディウスと共に消えていった───
我は自らの身体と共に消えゆく宿敵、“邪神竜”ヴォルガディウスを見つめながら誰にともなく言った。
『聖王龍……貴様も死ぬつもりか?』
ヴォルガディウスが憎しみの篭った声で言った。
「我はこの平和になった世には要らぬ命。それに、貴様もこうでもしないと消滅しないであろう?」
『確かに、貴様の生命全てに宿った聖魔力なら我を消滅することもできるだろうな』
邪神竜ヴォルガディウスは、この世界……この星を破壊しに来た“邪神教団”の親玉であり崇められる神である。
ヴォルガディウスは、ふと、何かに気付いたかのように言った。
『貴様、我と似たような魂をしておるな。同じ境遇にでもあったか』
「そうであろう。貴様、我と同じ転生者であろう?」
そう。我こと“聖王龍”レガディアは、記憶をもったまま2度も転生した、奇怪な存在なのである。
***
我──俺は元々、聖王龍など大層な存在などではなく、地球の日本に住んでいた極々普通の高校生だった。
異世界に召喚されたのだ。親友とその彼女と共に『勇者御一行』として。
親友は勇者だった。その彼女は治癒神官だった。そして俺は、賢者だった。
召喚された理由は、魔王討伐。世界を征服せんとする、他種族を虐げている魔族の王を倒して欲しいと言われた。俺達は引き受ける事にした。
最初は、ゲームのラスボスを倒すぐらいの感覚だった。だが、すぐにそれは甘い考えだと悟ることになる。
初めての戦闘は軍との共闘だった。そこで、魔族との戦いで死傷した兵士達を見て現実とゲームの違いを思い知った。見るも無残な姿で死んでいった兵士を見る度、なんで魔王討伐を引き受けたんだろうって思ったし、諦めようと親友とも話した。
それでも諦めなかったのは一重に、『仲間』が居たからだろう。
10年という長い月日の間、魔王軍と戦い続け、遂に魔王の元へと辿り着いた。そして、魔王を倒しかけたその時、魔王は最期の力を振り絞って勇者である俺の親友を殺そうと魔血の槍を飛ばした。俺はそれを庇い死んだ。
俺は少し強い魔法使いでしかないが、勇者である親友は英雄だ。彼が残らないと、世界に混乱が巻き起こるかもしれない。そう思って庇った。それに、元の世界に帰れないと聞いていたので、未練は無かったしな。
共に戦ってきた仲間に看取られながら、俺はそのまま安らかな眠りへと身を預けた。
その140年後、そこで終わるものだと思っていた俺の命は、『転生』という形で生き長らえた。転生した先は、魔族種の漆鬼族である。実は、俺達が魔王討伐を成し遂げた後も魔族は生き残り、魔大陸の奥地でひっそりと生き延びていたらしい。俺が魔族に転生して見た光景は、今度は魔族の領地である魔大陸を侵攻し、魔族を奴隷にする人間と亜人種の姿、そして貧しい生活を強いられている魔族の姿だった。
つまるところ、結局どちらが上に立ったところで敗者は奴隷のように扱われるのだ。人間も、上に立って調子に乗り、魔族と同じような事を行ったのである。
俺は憤慨した。そして、嘆いた。この状況を打開するため、俺は自らを魔王と名乗り、魔王国の再建、魔大陸での生活水準の向上などを行った。
魔族を虐げ、残虐の限りを尽くした人間には容赦なく攻撃したし、逆に必要以上に人間を虐げている魔族も処刑した。
そうこうしている内に100年が経ち、人間の国々では、俺を恐るべき魔王として敵視し、討伐隊が組むようになった。
そして、2度目の勇者召喚が行われた。俺の親友である元勇者とその妻である元治癒神官など、エルフ族以外の元仲間達は全員寿命死しており、仕方の無い勇者召喚だったらしい。
新しい勇者達は、俺達の時とは違い、50年の月日を費やし俺の所に来た。何故か勇者の外見が少年のままだったのが衝撃だった。
俺は勇者が来ることを予想し、1人で魔王城に残っていた。勇者を説得するためだ。
俺は勇者に、自らの話をし、現状を正しく伝え、そして頼み事をした。
『俺が死んだ後、お前達と俺の部下である四天王、協力して世を正しい平和な物にして欲しい』と。
実は、俺は信頼する部下に自らの前世の事や俺の目的を教えていた。それに最も同意し、支えてくれたのが四天王達である。
勇者も、人間族に思うところがあったのか、直ぐに納得し、協力することを約束してくれた。
そこから先、どうなったかは知らない。俺は自ら命を絶ったから。俺という世界共通の敵が居れば争いは収まらない。そう思っての自害だった。
これで終われば良かったが、その200年後、今度は聖王龍として転生していた。
世界は平和になっていた。魔族と人間、亜人種が仲良く共存し、切磋琢磨し合う。そんな世界になっていたのである。さらに言えば、技術力も進歩し魔道技術が進化、魔道具の能力も向上していたりと、色々な部分で良いことづくしになっていた。
俺はそんなこの平和になった世界を、人間達が対処出来ないような強大でおぞましい『外』の敵から守護することが使命である聖王龍となった俺は、そんな世界を見守りながら、時に1人で、時に勇者達の子孫と共に世界を平和にするために戦い続けていた。
そして、俺が聖王龍となってから1000年後、邪神竜率いる邪神教団が外界から侵略、世界破壊をしに攻めてきた。俺はそれを、世界が破壊される直前に食い止め、自らの全聖魔力を使い異界に邪神竜を引きずり込み、消滅させている。それが今の状況だ。
その余波のようなもので、世界の文明は壊されてしまったが、元々世界が平和だった事で、復興作業は捗っていた。
冒頭で言った言葉は、それを見ながら言った言葉でもある───────
***
我は、自らの辿ってきた数奇な運命を思い出しながら目を瞑る。
『何故、貴様は……我と同じような運命を辿ったというのに、世界に絶望しなかったのか?』
ヴォルガディウスが尋ねた。
「貴様も、勇者召喚、転生、転生という運命に囚われていた魂だったか」
『あぁ、そうだ。もっとも、その運命の中で我は世界に絶望し、このような事を行ったがな』
「貴様が何にどう絶望したのかは分からないでもない。だが、世界には……希望がある。未来がある。どれだけ世界が愚かだろうと、歪だろうと人々が生きる為に必要な柱である事は変わりない」
我は、ヴォルガディウスの言葉に対して、しみじみと言った。
『…………ふはは。そうか。確かにそうだな。ありがとう……おかげで最期は絶望せずに済みそうだ』
ヴォルガディウスは突然笑いだして言った。そして、まるで成仏するかのように、光の粒となって消えてゆく。
「………………哀れよの、ヴォルガディウス。さて、やっとこの人生も終わりだ。…………これ以上転生するのは、流石に勘弁被るな」
その言葉が最期の力だったかのように、俺もヴォルガディウスと共に消えていった───
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