悪役令嬢の最強コーデ

ことのはおり

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3章

7. 戦闘とマンドラゴルァ

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 「ガキィン!」と音がして、飛んできた金属製の武器をギルバートが剣で払い落とす。それが合図だったらしく、シュリの言ったように7人の男が木立の合間からバラバラと姿を現した。シュリが予測した通り、崖を背にしてローズたちは取り囲まれた。

「ヒャア~ハッハッハッ! てめえら、女と有り金置いて今すぐずらかりな!!そしたら命だけは助けてやる!」

 7人の中でも一際体が大きく、熊みたいに毛むくじゃらの男がそう叫ぶ。どうやらその男はリーダー格のようだ。それにしてもいかにもお決まりの台詞に、ローズは恐怖より滑稽さを感じた。ギルバートの言うように、町のチンピラレベルなのだろう。

 彼らには「身だしなみを整える」という感覚が欠如しているらしく、どの男もひげは伸び放題、髪はボサボサ(約半数は禿げてるが)、シラミが飛んできそうなほど汚く、あと少しでも近づいたら悪臭で気絶してしまうのではないかと思うほど。あまりの不快さにローズが眉をしかめながら男たちを眺めていると、リーダーの熊男と目が合ってしまった。そいつは舌なめずりして、いやらしいだみ声を放った。

「ヒヒヒヒヒッ、本当にこりゃあ上玉だぜ、今日はついてる!!」

 シュリの眉間に険しい縦じわが刻まれる。どうやら「上玉」などという下品な言葉をローズに向けたことに、怒り心頭らしい。シュリはローズから3歩ほど前に出ると、手を差し出してクイクイッと挑発するように動かした。

「来い、悪臭漂うゴミどもめ。地獄へ送ってやる」

 シュリはにやっと口の端を歪ませ、静かにそう言った。
 山賊どもは見事にシュリの挑発に乗せられ、リーダーの指図を待たずに「おうりゃぁぁぁぁ!」と雄たけびを上げながら突進してきた。それと同時に、何か光るものがいくつか、山賊めがけて飛んでいく。直後、山賊のうち3人が、わずかな時間差で次々と地面に転がった。その男たちは「ぐあああぁっ!」と叫びながらナイフの刺さった足を抑えてうずくまっている。シャーロットの放った投げナイフが命中したのである。

「やるな、良い腕してるぜ!!」

 ギルバートはシャーロットへの賛辞を口にしながら、襲い掛かってきた山賊の一人の攻撃をかわし、強烈なボディブローを打ち込んだ。ろくな防具も付けていない男は、ギルバートの放った一撃に上体を折ってうめき、続けて繰り出されたギルバートの膝蹴りで地面に倒れ込んだ。

 それと同時に、フィリップもまた山賊の一人と相対していた。錆びた剣をこん棒のように振り回す男の手を一薙ぎし、男が悲鳴を上げている間に剣の柄で後頭部を強打する。男は呻き声と共に地面に倒れた。王子が留学先で鍛えたのは社交術だけではないらしい。

 もちろんシュリも、二人の活躍に負けてはいない。シュリはリーダー格の熊男と向き合っていた。傍目から見れば体格で優っている熊男の方が有利に見える。しかし実際は、始まる前から勝敗が決まっていた。力任せに大きな両刃の剣を振り回し突進してきた男の懐に、シュリは目にも留まらぬ速度で潜り込んだ。そして男の体が前に運ばれる力を利用し、掴んだ腕を起点にして男を投げ飛ばす。男の巨体はしたたかに地面に激突し、シュリは男から奪った剣をそいつの喉仏にあてがった。男が「ヒッ!」と情けない声を上げる。

「仲間に投降するよう言え。そうすれば ”命だけは助けてやる”」

 皮肉をこめてそう言い放ったシュリを見て、熊男は「ぐうぅっ……!」と悔し気に唸った。
 リーダーがいともたやすく敗北したのを見て、残りの山賊たちは逃げ腰になっている。すでに一人、逃げ出した。それを知って熊男は情けない怒声を放った。

「てっ、てめえら、何してやがる、逃げるなぁっ! おっ、俺を、助けに来い!」

 そのとき、シャーロットが突然足元を見て声をあげた。

「ああっ!! マンドラゴルァ、見つけた!!」

(なんですって、マンドラゴルァ?! えつ、今?!)

 ローズが数歩先のシャーロットに目をやると、彼女はしゃがみこんで、もう植物の葉っぱ――ありふれた雑草にしか見えない葉っぱを掴み、引き抜こうとしている。ローズは驚きに目を見開いた。

 ――彼女は、耳あてを付けていない!

 どうやらシャーロットはすっかり、マンドラゴルァの脅威を忘れてしまったらしい。さすがドジっ娘設定――なんて感心している場合ではない。ローズはすぐさま行動に移った。ことは1秒を争う事態だ。

「みんな!今すぐ耳あてを付けなさい!!」

 ローズはありったけの大声でそう叫び。
 首にかけていた自分のイヤーマフを耳に当て。
 シャーロットの元へ走り寄り。
 シャーロットの首にかけてあるイヤーマフを彼女の耳に装着。
 
 上記の動作は数秒の間に実行されたが、ローズの心象風景には、「マトリ○クス」みたいなスローモーションのシーンが展開されていた。
 やがてシャーロットの「うおりゃあああっ!」という乙女らしからぬ気合いの入った声と共に、すぽーんと「マンドラゴルァ」の根っこが引き抜かれる。現われた根っこには不気味で面妖な目鼻口が付いており、それは地獄の鬼のような形相で、吠えた。

「ゴゴゴゴゴゴゴゴ、ゴルァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!!!」
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