57 / 175
二章 入学旅行二日目
2-02a 入学旅行二日目の朝
しおりを挟む
ドンドンと、扉を叩く音がする。
「キリ、起きて! みんなで朝食にしよう! ねえ、返事して!」
覚醒を促され、霧は目を開けた。明晰夢は途切れ、視界にホテルの豪華な部屋が映る。
部屋の外ではリューエストが何度も霧を呼び、心配するあまり泣きそうな気配を漂わせていた。やがてアデルの声が加わり、「リューエスト、他の宿泊客に迷惑だから静かにしなさいよ。フロントに頼んでキリの部屋に入れてもらうから」と、とりなしている。霧は慌てて、声を張り上げた。
「ごめん、みんな! 今、起きたから、すぐ行くから、待ってて!」
部屋の外からホッとする気配が伝わってくる。
霧はベッドに置きっぱなしだった『クク・アキ』の文庫本をバッグにしまいこむと、サッと服を着替えて扉を開けた。その途端、リューエストが情けない声を上げて霧に抱き着いてくる。
「心配したよぉ、キリ! また眠ったまま起きないんじゃないかと……。ううぅ……そんなことになったら僕は……僕は……」
「ごめん、リューエスト」
霧はリューエストが本気で気を揉んでいたことを、彼の気配から感じ取った。よしよしとリューエストの背中をさすりながら、これやっぱり兄じゃなくて弟じゃね?などと思う。
「ほんと妹離れできないお兄さんよねぇ。キリも大変だ」
霧の部屋に入りながらアデルがそう呟き、続けて部屋に入ってきたリリエンヌが扉を閉めながら声をかけてくる。
「キリ、よく眠れまして? ホテルの売店でパンと飲み物を買ってきましたの。みんなで食べませんこと?」
霧は「わぉい、パン大好き!」と嬉しそうに手を叩くと、昨日の夕食と同じメンバーで朝食を食べ始めた。
パンをかじりながらも霧は、先ほど見た明晰夢の内容を忘れないよう、繰り返し頭の中で反芻する。
(煌竜の主、不屈のソイフラージュ……。そう名乗ったよね、あの子? まさかあの小さな女の子が、『竜辞典』の主、遥か昔の辞典魔法士だなんて……。ということは、チェカと一緒に行方不明になってた3冊の『竜辞典』のうち1冊は、どこかに戻ってきてるってことだよね? だって、『竜辞典』の主があたしに話しかけてきたんだから。いったい、何がどうなってるんだろ。イミフ)
心ここにあらず、という風情で霧が考え込んでいると、リューエストが自分の着ているショートケープをめくって、中に着ているTシャツを見せながら言った。
「見て見てキリ、審判妖精柄のTシャツ! 昨日もらったやつ、さっそく着たよ! キリも着てお揃いしようよ!」
霧は目をパチパチさせながら率直な感想をそのまま舌にのせる。
「うわっ……すごい美貌のキラキライケメンがオタクTシャツ着てる……シュールだわ……」
「キリ、起きて! みんなで朝食にしよう! ねえ、返事して!」
覚醒を促され、霧は目を開けた。明晰夢は途切れ、視界にホテルの豪華な部屋が映る。
部屋の外ではリューエストが何度も霧を呼び、心配するあまり泣きそうな気配を漂わせていた。やがてアデルの声が加わり、「リューエスト、他の宿泊客に迷惑だから静かにしなさいよ。フロントに頼んでキリの部屋に入れてもらうから」と、とりなしている。霧は慌てて、声を張り上げた。
「ごめん、みんな! 今、起きたから、すぐ行くから、待ってて!」
部屋の外からホッとする気配が伝わってくる。
霧はベッドに置きっぱなしだった『クク・アキ』の文庫本をバッグにしまいこむと、サッと服を着替えて扉を開けた。その途端、リューエストが情けない声を上げて霧に抱き着いてくる。
「心配したよぉ、キリ! また眠ったまま起きないんじゃないかと……。ううぅ……そんなことになったら僕は……僕は……」
「ごめん、リューエスト」
霧はリューエストが本気で気を揉んでいたことを、彼の気配から感じ取った。よしよしとリューエストの背中をさすりながら、これやっぱり兄じゃなくて弟じゃね?などと思う。
「ほんと妹離れできないお兄さんよねぇ。キリも大変だ」
霧の部屋に入りながらアデルがそう呟き、続けて部屋に入ってきたリリエンヌが扉を閉めながら声をかけてくる。
「キリ、よく眠れまして? ホテルの売店でパンと飲み物を買ってきましたの。みんなで食べませんこと?」
霧は「わぉい、パン大好き!」と嬉しそうに手を叩くと、昨日の夕食と同じメンバーで朝食を食べ始めた。
パンをかじりながらも霧は、先ほど見た明晰夢の内容を忘れないよう、繰り返し頭の中で反芻する。
(煌竜の主、不屈のソイフラージュ……。そう名乗ったよね、あの子? まさかあの小さな女の子が、『竜辞典』の主、遥か昔の辞典魔法士だなんて……。ということは、チェカと一緒に行方不明になってた3冊の『竜辞典』のうち1冊は、どこかに戻ってきてるってことだよね? だって、『竜辞典』の主があたしに話しかけてきたんだから。いったい、何がどうなってるんだろ。イミフ)
心ここにあらず、という風情で霧が考え込んでいると、リューエストが自分の着ているショートケープをめくって、中に着ているTシャツを見せながら言った。
「見て見てキリ、審判妖精柄のTシャツ! 昨日もらったやつ、さっそく着たよ! キリも着てお揃いしようよ!」
霧は目をパチパチさせながら率直な感想をそのまま舌にのせる。
「うわっ……すごい美貌のキラキライケメンがオタクTシャツ着てる……シュールだわ……」
0
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる