刻下の古代魔法師 〜魔法の才能がないので公爵家から追放された俺は、大賢者に弟子入りして最強の【古代魔法】を習得した〜

志鷹 志紀

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13話 哀れな弟【カイナ視点】

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「ハッハッハッ!! よくも恐れずに、ノコノコとやってこれたな!!」

 燦々と太陽光が降り注ぐコロッセオ。
 その中心に、2人の男がいた。

 1人はこの俺、カイナ・ル・リレリオン。
 そして2人目は──忌々しい元弟だ。

「暑いな……まだ2月だぞ?」

 そいつは陰気な雰囲気を纏う、木偶の棒。
 5年前、追放された無能な男。
 魔法の才能がなく、身体が弱いゴミムシ。
 見ているだけで虫唾が走る、クソ野郎……アルカだ。

 そしてアルカが登場した途端、総勢1000人の観客が沸いた。
 ちなみにその中に、ザベラはいない。

「うぉおおおおお!! アルカだ!!」

「5年前に死んだって言われていた、無能野郎だろ!?」

「生きていたのかよ!! しかも……なんか、デカくないか?」

「確かに……なんかガッチリしているし、背丈なんかカイナ様よりも大きいぞ!!」

「でも所詮は魔法の使えない、ただの無能だろ? だったら、デカくなっても意味ないだろ」

「確かにな……カイナ様、ボコボコにしてやれ!!」

 男の観客は、軒並みアルカの死を望んでいる。
 血気盛んな連中だ。お望み通りの展開を、見せてやろう。

「カイナ様!! 応援していますわ!!」

「キャーッ!! カイナ様ステキ!!」

「でも……アルカもアリかも……。男のくせに私よりも美人だし……」

「こら!! 浮気よ!! カイナ様ファンクラブの一員なんだから、カイナ様を応援しなさい!!」

「そ、そうよね……。カイナ様!! 頑張って!!」

 ちッ、これだから女は……。
 浮気をするなど、言語道断だ。
 俺のファンクラブ会員なのだから、俺だけを応援しろ!!

「どうだ、1000人の観客の前で死ぬことができて、光栄だろ?」

 総勢1000人の観客は、俺が準備した。
 学校の連中、知り合いの貴族。そしてファンクラブ。
 娯楽に飢えている貴族連中は、こういったイベントに弱いからな。

 1000人の前で、アルカを処刑する。
 そうすりゃ俺の人気はさらに高まり、自己顕示欲を満たせる。
 アルカは俺を満たすために、養分になるんだ!!

「しかし……怖気付かずに来るとは、その根性だけは認めてやろう!!」

「俺が言い出したからな。ドタキャンはしないさ」

「はッ、強がるのも今のうちだ。お前はこれから、凄惨な死を迎えるんだからな!!」

「その言葉、ソックリそのまま返そう」

「……ちッ、腹の立つ男だ!!」

 5年の歳月が経ち、目の前のアルカは以前までのアルカとは別人になったようだ。
 オドオドとした態度は成りを顰め、今では尊大な態度を見せている。
 この俺に口答えをするような、ナマイキな口まで聞きやがる。

「それにしても、あの羊女はいないのか? お前の唯一の味方だろう?」

「ピリカのことを指しているのなら、観客席にいるぞ。お前の愛のない婚約者とは違ってな」

 ザベラは今日、何かのイベントを優先して、この場には来ていない。
 俺がどれだけ強いか披露したかったが、仕方ないことだ。

「テメェは俺が殺してやる!! この『宝剣』でな!!」

 影から取り出したのは、紅い刀身の大剣。
 170センチを優に越える刀身は、振り回すだけで一苦労だ。
 その大きさにふさわしく、かなり重い。鍛えている俺でなければ、振り回すことはできないだろう。

「へぇ……家宝か。俺を本気で殺すつもりなんだな」

「あぁ、テメェはこの『紅蓮剣バスター』で殺してやる!!」

 リレリオン家の家宝、『紅蓮剣バスター』。
 それは今から1000年以上前、俺の先祖が王族より賜った宝剣だ。
 
 一振りすると、大地を砕く。
 二振りすると、大地が燃える。
 三振りすると、世界が燃える。
 四振りすると、世界が終わる。

 そのような逸話を持つ、火属性の宝剣だ。
 親父はアルカを殺すため、この宝剣の使用を許可した。
 明らかにオーバーキルだと思うが、それだけ親父は本気なのだろう。だったら、期待に応えるしかない。

「さぁ、お前も構えろ!!」

「だったら、俺はこれで十分だ」

 アルカが懐から取り出したのは──

「……は?」

「お前如き、フランスパンで十分だ」

 アルカは懐から取り出した、フランスパンを齧りながらそう告げた。

「……テメェ、ふざけているのか?」

「ふざけてなんかいない。おまえみたいなザコ、これで十分だと判断したんだ」

「……そうか、そこまでして死にたいんだな」

 俺の中の何かがキレた。
 アルカはどこまでも凄惨に、殺してやろう。
 謝ったとしても、決して許さない。
 嬲って刻んで燃やして、ブッ殺してやる。

「……殺してやるよ」

「その言葉、ソックリそのまま返すよ」

「……死ねェエエエ!!!!」

 俺たちは同時に駆けた。
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