刻下の古代魔法師 〜魔法の才能がないので公爵家から追放された俺は、大賢者に弟子入りして最強の【古代魔法】を習得した〜

志鷹 志紀

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37話 いってきます

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 あれから幾日か過ぎ、本日は4月1日。
 そう、入学式の日だ。

「ピリカ、ネクタイを結んでくれ」

「ふふ、わかりました」

 ピリカが制服のネクタイを結んでくれる。
 15歳にもなって、ネクタイも結べないとは……情けないな。
 さすがに毎朝結んでもらう訳にはいかないため、これは早急にマスターしよう。

 顔が近い。昔は意識することは少なかったが、今は思春期故に意識してしまう。
 唇がプルプルだ。シミ一つない肌は、見惚れるほど美しい。
 本当に……美人だな。

「アルカ様、終わりました」

「え、あ、あぁ……。あ、ありがとう」

「似合っていますね。その……カッコいいですよ」

「あ、ありがとう……」

 鏡に映るのは、制服を纏った俺の姿。
 紺色のブレザーに灰色のズボン。そして赤いネクタイ。
 まさにザ・制服といった感じの無難な制服だ。

「ピリカも似合っているよ」

「あ、ありがとうございます……」

 ピリカも制服を纏っている。
 紺色のブレザーに灰色のチェック柄のスカート。
 首元には赤いリボンが見える。

「アルカ、忘れ物はないな?」

「えぇ、大丈夫ですよ」

「着替えはちゃんと持ったか? 歯ブラシは? 文房具は全部そろっているか?」

「もう、子どもじゃないんですから」

「むぅ……じゃが、心配での……」

 5年も一緒に暮らしたんだ。
 老婆心が芽生え、あれこれ心配するのも理解できる。
 実際、師匠は老婆だからな。

「なんじゃ、失礼なこと考えておらんか?」

「べ、別に……」

 マズい、心が読めるのか。
 《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》は伊達じゃないということか。

「しかし、大丈夫か? ピリカよ、アルカのことを頼んだぞ」

「はい! 衣食住、その他もろもろ全て任してください!!」

「……俺、子どもじゃないんだけどな」

「じゃが、飯も作れず掃除も洗濯もできないのじゃから、子どもみたいなものじゃろう?」

「そうですよ。アルカ様の世話は、全てわたしが担います!!」

「……事実だけど、なんだかなぁ」

 こう見えても、浮浪者として1か月以上生き残ったんだ。
 確かに生活力は著しく低いかもしれないが、生命力はゴキブリ並みだぞ。どんな環境であっても、生き残れる自信があるんだぞ。

「しかし……アルカも大きくなったの。ここに来たときは、こんなに小さかったのにの」

 師匠はそう言って、指で小さな丸を作る。
 いや、さすがにそんなに小さくはない。

「ビックリしましたよ! 5年ぶりに出会ったアルカ様が、こんなに大きくなっていて!!」

「デカい男は嫌いか?」

「いえ……嫌いではありません」

「……そうか」

 自分で質問しておいて、恥ずかしくなってきた。
 ピリカも恥ずかしいのか、顔を赤く染めている。
 そうか……嫌じゃないのか。そうか。

「はぁ……イチャつくのはやめてくれんか。砂が出てしまうわい」

「イチャついてなんかないです!!」

「そ、そうですよ!! わ、わたし達は……そ、そういう関係ではありません!!」

 そんなに断言しなくても、いいじゃないか。
 俺もそういう関係ではないことは理解しているが、少し……ショックだ。
 
「はぁ……帰ってきた時に、子どもを数人こさえていそうじゃの」

「そんな不純なことしないです!! 子どもができるんだったら、1人目からきちんと報告しますよ!!」

「あ、アルカ様……そ、それって……」
 
「え……あ……ち、違うんだ!! 今のは言葉のアヤというか、なんというか……」

「はぁ……青春じゃの。羨ましいわい」

 こっちは気まずいんだ。
 ピリカは俺の恩人だから恋愛感情や情欲を抱くことは悪徳なのだが、はたして一緒に過ごしていく中で我慢できるだろうか。
 ……不安で仕方ない。

「しかし、気まぐれで弟子にした男が、こんなに大きくなってワシの元から巣立つとはの。感慨深いの」

「えぇ……あれから5年ですものね」

 月日が流れるのは早いものだ。
 初めて出会った時は、《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》を名乗るヤバいヤツだと思ったことが懐かしい。
 
 そして『鶏の足の上に建つ小屋バーバ・ヤーガ・ハウス』の家に連れてこられて、修行をつけてもらって……今に至るか。
 あの頃がまるで昨日のことのように、鮮明に思い出すことができる。

「立派になったのアルカ。お前は自慢の弟子じゃ」

「ありがとうございます。師匠も俺にとって、最高の師匠です!!」

「ふ、嬉しいことを言ってくれるの」

 師匠は少し背伸びをして、俺の頭を撫でてくれる。
 そうか……178センチの師匠が背伸びをしなければ、頭を撫でることができないほどに俺は大きくなったのか。
 身長が伸びたことはわかっていたが、今初めてソレを実感したかもしれない。
 そうか、197センチだもんな。そりゃあ大きいか。

「アルカ、応援しておるぞ。古代魔法書の続きを見つけて、最高の青春を送ってこい!!」

「はい!!」

「ピリカ、アルカのことを頼んだぞ」

「はい!!」

「よし、それでは──いってらっしゃい!!」

 師匠はそう言って、転移魔法を発動してくれた。
 地面がキラキラと輝き、俺たちは足元から少しずつ消えていく。

「「いってきます!!」」

 俺たちはそう言って──
 ──家を後にした。
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